第36話 晩餐会

王宮での王族派の晩餐会に呼ばれたハヤトとセリーヌは晩餐会用の洋服に着替えて

お呼びが来るまで待っていた。


ハヤトは慣れない洋服に落ち着かない様子だが、流石セリーヌは王女様、衣装も

板についてどこに出しても可笑しくないお姫様になっていた。


ドリスとアレンはもともとメイド服と執事服でハヤト達の側に居るので問題はない。


キラービー3匹は天井に張り付いて分からないよう悪意有る者のサーチをしてくれている。


銀龍はアレンの肩に目立たぬように泊まっている。


冒険者ギルドのケントが明日来ると言っていたが、副ギルドマスターのクローディアを伴って二人共正装で現れた。


ギルバート侯爵家、ブレット公爵家、王家のベンジャミン一家それと各騎士団長が正装して夫々の主君の側に寄り添っている。


グランデ領を治めるエドガー侯爵一家も王族派のようだ。


その他ドロン辺境伯、シュバイツ辺境伯とさすが国境付近を守っている貴族は信頼する王族派なのだろう。


伯爵も5人いるうち3人が来ていた。


ロベロ伯爵、フレッド伯爵、ジェイク伯爵がどうやら王族派のようだ。


晩餐会の開始に先立ち、王様から冒険者Sランクのハヤト、セリーヌ夫妻の紹介が

あり、彼らが古代人が遺してくれた『空飛ぶ船』『製塩方法』『快速魔動鉄道車』の作り方を発見し、『空飛ぶ船』を見事に作り上げ本日王都を試験航行した事を参加した王族派の面々に伝えた。


「尚、明日選抜した騎士団に操縦方法を教育するために10時から中庭より飛び立ち2時間近く王都近辺の空を飛行するので、試乗したい者は後ほど宰相に言ってくれぬか。空からの眺めは特別じゃぞ!」と説明して晩餐会を開始した。


冒険者ギルドのケントとクローディアが真っ先にハヤトとセリーヌのところに近づいて来て、声をかけて来る。


「ハヤト、まさか数日のうちにダンジョンを幾つも制覇して古代人の文字さえも解読して一気に有名人になるとは思いもしなかったぞ!」とケントは肩を叩いて喜んでくれている。


副ギルドマスターのクローディアは皇女セリーヌに遠慮がちに「皇女様、今だに信じられません。”滅亡の弓”の2つ名を持つ皇女様は自分より強いひととしかパーティーを組まないとおっしゃっていたのに・・・」


「あら、クローディア貴女はまだ旦那様の本当の力を知らないからよ」


「ハヤトさんはそれ程までの力を秘めていると?」


「この世界が滅亡寸前になる時が来たら分かるわ、彼しかこの世界を救えないもの」


「それ程の人物ですか?」


「クローディアもそのうち分かるわよ」


「それに彼は貴女とそれ程年も変わらないわ、私よりは2歳程若いけどね、うふふふふ!」と笑って答えた。


クローディアは謎めいた会話ばかりで却ってハヤトという人物がわからなくなってしまった。


そこにギルバート侯爵様に王族派の貴族達を次から次へと紹介されて気疲れしきったハヤトがセリーヌのところにやって来た。


「セリーヌ、私は人の名前を覚えるのが苦手なのに、侯爵様が貴族さん達を順番に紹介するので気を使い過ぎて疲れてしまったよ」


と言って自分に【ヒール】を掛けて疲れを癒している。


「旦那様、あちらで少し食べ物でもいただきましょう!」とセリーヌが部屋のサイドに置かれた食べ物の方にハヤトを誘うのだった。


入れ替わりケントがクローディアのところに来て「クローディア、楽しんでいるか?」と食べ物を口に頬張りながら寄って来た。


「ギルマス、ハヤト君は本当に古代語を読み解いて『空飛ぶ船』を作り上げたのですか?」


「ああ、巨大な船だったなぁ!馬車の数十倍のスピードで王都からケープまでおそらく1時間半程度で着くスピードだろうな、流通革命になるぞ」とケント。


「恐らくハヤトはこの世界の人間ではなく”勇者”か”神の使徒”としてこの世に神が遣わされた人間なのだろう。古代人の意思を聞いたハヤトが言うには魔界から黒龍の何倍も強い魔界龍と言うものが昔現れてこの世界を蹂躙して古代文明が滅びたそうだ。再び魔界龍が出現するときには彼と彼のゴーレムが立ち向かわないとこの世界が滅びると予言で言われているみたいだぞ!」


「ギルマスはその言葉を信じるのですか?」


「信じるも何も、ロゴニーでのスタンピードの際に数十万の魔物を【インフェルノ】と言う神級魔法を放ち一瞬で灰にしたと聞けばなぁ・・・」


「彼からはそんな魔力を感じられないのですが!」とクローディア。


「はははは、彼の魔力は俺が見たら無限だぞ!」


「恐らくあまりに馬鹿げたほどの魔力なので、逆にクローディアには感じられないのだろ?彼は【隠蔽】と【プロテクション】掛けているが俺から見たらじゃじゃ漏れ状態だけどな」とケントが語った。


「明日、お前も『空飛ぶ船』に乗って空の王都を眺めればハヤトの人外の程が分かるよ」とケント。


セリーヌとハヤトに寄り添うようにドリスとアレンがぴったりと護衛しているがハヤトもセリーヌも常に人が見えない【シールド】で身を守っているので大丈夫だ。


王様の娘エミリーと公爵様の娘クラウディアそれと侯爵様の娘クリス三人が揃ってハヤト達のところに寄って来て、


「今度ケープの街に行った際、是非ハヤトご夫妻のご自宅にお邪魔させて頂いて宜しいですか?」


「色々古代人の話とか古代都市の話をゆっくりお聞きしたいの・・・」とエミリーが代表して頼んで来た。


「構いませんよ、この後王様に『遠距離通話器』をお渡しして何か有事の際は直ぐに連絡できるようにしますので、それを使ってご都合の良いときに三人で遊びにいらしてください」


「「「『遠距離通話器』ってとても高価なマジックアイテムですよね」」」と三人がハモってきた。


「いやぁ〜、ダンジョン制覇した時のお宝です」後ほど王様に渡しておきますね。


そんな話をしていたら宰相のブレンディーが「そろそろ晩餐会をおひらきとします。皆様明日の試験飛行を希望するものは私の方に申し込んで下さい」と声が聞こえて来たので三人もハヤト達から離れてご両親の元に戻って行った。


「セリーヌ、一緒に王様ご夫妻の所に行ってくれる?『遠距離通話器』を渡してくるから」


「ええ、ご一緒しますわ」


そう言って、二人は王様ご夫妻がいる所に行き、


「王様、今後有事の時など私が微力ながらこの国のために動けるなら動きますので『遠距離通話器』を渡しておきます。どんなに離れていても連絡が取れて私は瞬時に王様の元に駆けつけますから!」


「ハヤト殿は【転移】が出来るのか?」


「はい、内緒にお願いしますが・・・」


「この国で出来る人間は『マジックアイテム』を使用するのも含めまだ存在は知られていないのだが、正に”神の使徒”だな。ありがたく頂こう」


晩餐会も無事に終わって、ハヤトとセリーヌは王宮の与えられた部屋に戻って明日の試験走行があるので早めに寝ることにした。


一方明日の『空飛ぶ船』の王都試験飛行には王族派の全ての貴族とその家族が参加することになった。


またギルバート侯爵の騎士団長ジェームス、公爵様の騎士団長ジム・オラサバル、王様のところの騎士団長ハロルド、三人は操縦訓練のチーフとしてのり、侯爵のところの騎士団三人、公爵様のところの騎士団二人、王様のところの騎士団が五人が

ハヤトから教育を受けることになった。


翌朝、王宮の執事が朝食の準備ができたと伝えに来てセリーヌと二人で食堂に行くとギルバート侯爵夫妻に娘さんのクリスさんもいた。


「ハヤト殿、今日も我らも又乗らしてもらうので宜しくな!」と侯爵。


「侯爵様、王様ににもお渡ししたのですが『遠距離通話器』をお渡しします。何か

緊急で私と連絡を取りたい時はこれをお使い下さい。我ら夫婦は冒険者として世界を旅する身でケープにいない時が多いと思いますが、これで連絡いただければ瞬時に侯爵様の所に【転移】して来ますから」


「おお、かたじけないケント君がハヤト殿に渡したので連絡はいつでも取れると申しておったが、ギルドまで行くのが時間もかかるから、これがあればお主と直ぐに連絡取れて助かるな」


ギルバート侯爵様家族と食事を終えてセリーヌとハヤトはドリス達に念話で中庭にくるように伝えた。


『空飛ぶ船』に上がって、タラップを下ろして皆が上がれるようにし、人数が多いので個室に入れてあるランク3の魔石をドリス達に確認してもらい、操舵室の魔石

もランク6を予備に2個左右に入れて準備万端で貴族達を待った。


王様ご一家と公爵様ご一家は個室一室に入って貰いあとは其々侯爵がご一家が二部屋に分かれて十部屋に各貴族達が分散して入った。


操縦訓練は午前中は騎士団長から始めてギルバート侯爵の騎士団と公爵様の騎士団が習い、午後からは王様の騎士団が習うことになった。


ケントとクローディアも甲板上に姿を見せていた。


操舵室に騎士団長が勢ぞろいしてハヤトの説明を聞く。


「まず、はじめに右のこのレバーは上下に動き高さを調整するレバーです。ではゆっくりレバーを上に上げて行きます。ほら、少しずつ船が上昇して行きますね?」


「おお、本当だ!船が地上から浮いて、おお、50メートルほど上がったぞ!」騎士団長三人が興奮して叫ぶ。


「さらにレバーをゆっくり上げて行きます。300メートルほど上がりました、次にこの左のレバーは前後に動くレバーでこの赤い線が起点です。赤線より後ろにレバーを引くと船はバックし、前にスライドすると前進します。それでは前進しますよ」

とハヤトがゆっくりレバーを前にスライドすると300メートルのところから水平移動を開始しする。

一方セリーヌが甲板で下を眺めていた貴族やケント達に更に上昇してスピードを上げて行くので個室に入って下さい、空気が薄くなり寒くてここに立ってられなくなります」と伝えてケント達も貴族も皆甲板の階段を降りて各個室に入った。


個室にはハヤトが図面上には無かった外を眺められる窓を各個室に付けて耐圧ガラスをはめ込んで作り込んでいた。


個室に入った貴族達やクローディアは王都の街を上空から見られて皆興奮気味だ。


『空飛ぶ船』はどんどんスピードを上げ上空800メートルを時速600キロというこの世界では考えられないとてつもないスピードであっという間にブルネリア王国を超えて、オルバル帝国上空まで行き、ゆっくりと方向転換をして再びブルネリア王国に向きを変えて走行し、あっと言うまに王都を超えケープの街をこえ海に出た。


ここでハプニングというかワイバーンが1匹船に向かって来たがドリスが前方のレーザー砲で瞬殺した。


操舵室ではハヤトが皆に「今のように空からの魔物は前後についているレーザー砲という兵器でドラゴンも瞬殺でき操舵室から砲台までは甲板下の通路で結ばれておりますので航行時は前後に騎士団のお一人ずつを配置して交代勤務して魔物が来た時に備えれば問題ないです」


一通り皆がレバーを引いたり下ろしたりして試験走行をしてハンドルも右に回したりゆっくり左に回したりして午前中の試験走行を終え王都の中庭にゆっくりと下降して止まった。


貴族達は興奮が冷めやらないのか口々に”凄いものだ、ワイバーンも瞬殺する武器もついていて、これだけの速度で人と物の交流が出来れば本当に流通革命が起きるな”と話し合っていた。


「クローディア、どうだ?ハヤトへの認識が変わったのではないか?」とケントが笑いながらクローディアに聞いてきた。


「ワイバーンが来た時には流石にどうするのかと思いましたが、あの武器は何なんでしょうか?」


「あれはハヤトが独自に作った『レーザー砲』というものらしいぞ、俺も難しくてわからんが何でも光は電磁波とかいうものでその特性を生かして作った兵器らしい。彼はメイドや執事のゴーレムにもそれを付けてやり、ドラゴンも簡単に倒しているからな」とケント。


「目の前であんなものを見せられて、『空飛ぶ船』の驚くべき速度を体感してそれが全て彼のなせる技だと聞かされると彼はまさにSSSクラスさえも凌駕する人外ですわね」とクローディアがいう。


一方貴族達は自分達が王族派の貴族で良かったと内心皆が思っていた。


『空飛ぶ船』とあのレーザー砲があれば天下無敵だと内心思っているのだろう。


ハヤトは具(ツブサ)にその反応を感知したが、王様やギルバート侯爵様が平和利用にしか使わないと約束してくれたことを信頼して午後の試運転も引き受けることにしていた。


昼食を挟んで再び試験飛行に入った『空飛ぶ船』。


今度は王様の騎士団5名を同じように操舵室で教えて2時間ほどして全ての試験走行を終えた。


ハヤトは王様、宰相殿、ブレット公爵、ギルバート侯爵、エドガー侯爵と打ち合わせをし、皆に各主要都市に船が止まるドックの建設をしてくれと頼んだ。


その図面を五人に渡し、説明をしながらもし”『快速魔動鉄道車』がうまく走り出せばその車が止まる”駅車”というものを作ったり鉄のレールを敷設したりする事が必要になるのでその辺も考えておいて下さいと”伝えた


王様には塩田を作って塩をお持ちすることを約束して王都を離れ『万能乗用車』でハヤトの自宅に空を飛んで帰宅した。


やっと自宅に戻ったハヤトはセリーヌに「明日侯爵様の領地の海岸地区に塩田を作るのでセリーヌ、『精霊術』で手伝ってね」と伝えて晩御飯を準備し始めようとしたらドリスが「ご主人様、そろそろ私がお二人の食事を用意しますのでソファーでくつろいでお待ちください」と言ってくれた。


ドリスが作った夕食はマナバイソンのステーキに野菜サラダのイタリアン風ドレッシングをかけて、野菜コンソメスープとガーリックバターライスだ。


よく観察して学習しているせいか文句無しの出来栄えだ。


セリーヌも美味しいと言って食べている。


食後しばらくしてセリーヌと二人でソファーに座っているとドリスが紅茶とケーキを出してくれた。


明日は皆でケープの南方の海岸線に行き塩田ともう一つイオン交換樹脂の機械で製塩する方式の工場を作ることにしている。


「セリーヌ、塩田の作り方を説明するね!​​​​海から海水を貯水池に入れて今度はその貯水池の塩水を蒸発池にいれ、水分を太陽光で蒸発させて塩の結晶を取るのが大まかな道筋だよ」


「最初はまず貯水池に引き込むために海から貯水池まで水路を作って、貯水池に

入れる所までやりましょう。僕が海水の通路を作ります」とハヤト。


「あとはセリーヌが精霊術でプールを掘って貯水池を作ってくれる?」


「分かりました、旦那様の言われる通りにやれば何とかなるわ!」


明日のことを話しながら二人はベッドで手を繋ぎ寝てしまった。


翌朝いつもの通りハヤトとセリーヌは朝練をして、ドリスが朝食を用意してくれている。


ドリスの作った朝食もハヤトの朝食を見よう見まねにしては完璧だ。


朝食を終えてそうそう『万能乗用車』に乗ってケープの南、ケインズという海沿いの小さな街にやって来た。


ハヤトは漁港から離れた場所の海岸線に塩田の設置場所を決めて、セリーヌと手分けして作り込んで行く。


海岸からハヤトが作った水路を海水が勢いよくセリーヌの作ってくれたプールに流れ込み、太陽で水分を蒸発させて最後の結晶池まで流し込むのは明日以降だ。


未だ蒸発池の方には水路を塞いで海水を流し込んではいない。


明日は蒸発池に塩分濃度の高い海水を引き入れ、更に蒸発させて結晶池まで流し込む。


明日は日本で作られるイオン交換樹脂膜の陽イオン膜と陰イオン膜を昨日自宅で『マジックアイテム創造ボール』によって作り出していたものを【次元収納ボックス】に入れてあり、”天日塩方式”と”イオン交換膜方式”の二本立てでいく。


「セリーヌそれではこちら側でイオン交換膜の貯水槽を作るよ」


ハヤトは『土魔法』で貯水槽を作り、その横に同程度のプールを作る。


プールの両端に電極として金属板を『マジックアイテム創造ボール』で作り出した2枚を差し込む。


更にイオン交換膜の陽イオンと陰イオンの交換膜を交互に入れていく。


ハヤトは魔石を利用して電気と同じ原理で電流を起こし、陽イオン膜にマイナスイオンが、陰イオン膜にプラスイオンが集まり濃い塩水と薄い塩水が出来濃い塩水を立釜に入れる。


立釜の塩水が魔石で熱せられ更に濃くなり立釜の下部に塩の結晶ができる。


イオン交換膜の方はすでに初日の段階で夕方までには塩の結晶がかなり出来た。


塩田の方は太陽光頼みなので少し遅れ気味なので【加速魔法】を掛けて蒸発を促進させていたところ、ケインズの住民たちがよそ者夫婦が来て、何をやっているのと”街の長”を連れてやって来た。


ハヤトはこんな事もあろうかと事前にギルバート公爵から塩田製作の書面を作って

貰っていたので”街の長”の人に見せて説明し、近々侯爵様もこちらに見えられる旨

話しをして納得して貰った。


ケインズでの作業を夕方まで行い、塩田とイオン交換樹脂製塩工場を【バリア】で立ち入られないようにして、ケープの街に『万能乗用車』を走らせて帰宅した。


きょうは夕食に新しいメニューとしてドリスに水炊きを教え込んだ。


『万能鍋』に水を入れて、硬めのニンジンや大根、椎茸などを入れて後半に白菜や豆腐、牡蠣や貝類の漁獲類を入れて煮込んだら、ポン酢で食べる。


簡単だがこれがまた美味しい。


出汁が効いて最後にご飯を鍋に入れてお粥でしめる。


元々『万能鍋』で作っているので失敗はないのだが、セリーヌも体が温まり美味しいとお粥も2杯食べた。


翌日もドリスの朝食を食べて皆でケインズまで午前中の8時ごろに行き、作業を始める。


塩田の方も蒸発池の海水はずいぶん塩分濃度も濃くなりハヤトは急ぐために魔法で更に水分の蒸発をを促し、目標の500キロまで塩を作り込んだ。


イオン交換樹脂膜の方は順調で既に500キロの塩の結晶が立釜の底に溜まったので袋詰めして、赤帯で口を塞いだ。


夕方までに塩田の方の塩の結晶も500キロ迄作り出して袋詰めして白帯で口を塞いだ。


結晶が出来上がる午前中から夕方にかけて、ハヤトは『快速魔動鉄道車』の車両を3台、図面に起こして『マジックアイテム創造ボール』で作り出し、そのあとレールを50メートルの長さを1スパンとして600本のレールを『マジックリング 創造ボール』で作り出して【次元収納ボックス】に入れた。


レールには鉄製レール上にランク3クラスの魔石粉を10メートルおきに塗布して作り込み、日本の鉄道でいう枕木は木製ではなく新幹線のようにセメントで作り込むようにして製作した。


レールと車両3台を昼近くまで掛かって作り出し、セリーヌと二人で製塩の方を見ている間ドリスとアレンにケインズからケープの城門前までにレールの敷設を頼んだ。


1スパンの鉄製のレールは人間ではとても一人や二人で持てないが、ドリスとアレンにとっては容易い作業で塩田のそばの敷地に出した600本の鉄製レールをケープまで夕方前には敷設完了してくれた。


ケインズを起点に『快速魔動鉄道車』3両を連結してレールの上に乗せて車輪とレールがきっちり外れないようにドリスに頼んで車両を乗せて貰った。


袋詰めを終えた1トンの袋を持って帰りは『快速魔動鉄道車』3両編成を動かしてケープの入り口近く迄来て、『遠距離通話器』でギルバート伯爵様を城門の外まで来てもらうように連絡した。


ギルバート侯爵が慌てて城門の外迄出て来て『快速魔動鉄道車』が3台軌道に乗っているのを見て驚いていいる。


「ハヤト殿、これが例の『快速魔動鉄道車』か?ケインズから此処までレールとやらも敷設して来たのかな?」


「ええ、一応実験的に動くかどうかも含めて試運転を兼ねてきました。問題ないので城門の中のどこを起点にすれば宜しいですか?一応塩も1トン運んで来たので

それを王都まで今後運搬する予定を考えてギルドの前か侯爵様の宮廷の近くに駅を作れば良いのかと思いまして・・・」


「そうじゃな、それなら貴族街と商業地のちょうど境目までレールとやらを敷設してもらえぬか?」


「わかりました、ドリスあと10本残っているやつを貴族街と商業地との境迄敷設してくれる」


「ご主人様お安いご用です」と言ってあっという間に10本の重たいレールを敷設して貴族街の端まで作り込んだ。


『快速魔動鉄道車』をそこまで走らせてハヤトは1トンの塩の袋を侯爵様に見せて取り敢えずは【次元収納ボックス】にいれた。


「侯爵様、少しお時間をいただければケインズの塩田工場迄この『快速魔動鉄道車』の試乗も含めて往復し見ませんか?」


「おお、そうしよう!」


セリーヌとハヤト、ドリスにアレンも乗せて、侯爵様を座席に乗せて時速50キロで走ってケインズの街まで数分で乗り付けた。


ケインズの”街の長”も呼んで侯爵様から説明してもらい”街の長”と共に侯爵様が塩田とイオン交換樹脂製法の両方の工場を見て声が出ないほど驚いている。


「ハヤト殿とセリーヌ殿で2日で此処まで作り込んだのか?人間業ではないな!」


「いや、ドリスとアレンが鉄道の敷設を私たちが塩の作業をやっている間にケープまで作ってくれたので早くできたのです」


「明日にでも塩を王都に持ち込めますので侯爵様と王様とで打ち合わせをしてくだ

さい。もし可能なら王様達をケープに来ていただいて『快速魔動鉄道車』の乗りごごちも見て貰ってこれをこの国の乗り物として使うのかお決めください」


「そうだな、塩を見てもらうのと『快速魔動鉄道車』を見てもらうのであればケープに来ていただくのが手っ取り早いな。ケープに戻ってそうそう連絡を取ろう」


「侯爵様、この『快速魔道鉄道車』のレールに塗布されているランク3クラスの魔石は鉄道車の走る回数にも依りますが凡そ半年で魔石粉が消耗しますので1回は塗布し直す作業が有ります。そのため、鉄道車を運転するものと、メンテナンスをするものを募集しないといけません。その辺も考慮してこの鉄道車を今後の交通手段の要として敷設するかご検討下さい」そう言って、侯爵に問題を投げかけた。


ギルバート侯爵とハヤト一家は再び『快速魔動鉄道車』でケープに戻り、騎士団4名が『快速魔動鉄道車』を終夜見張ることになった。


ハヤトは一応鉄道を敷設した部分を全て【結界(バリア)】で守り、車両も【結界】で保護した。


『遠距離通話』でハヤトが王様と連絡を取って、すぐにギルバート侯爵に変わり侯侯爵様と王様が打ち合わせをして、『空飛ぶ船』で明日王様達を迎えに行きケープに来てもらうことになった。


ハヤトはこれで今日の作業は全部終えたので自宅に四人で戻って夕食を食べてのんびりリビングでお茶とケーキで体を休めた。


「セリーヌ、きょは色々忙しく動いて貰ってありがとう!お陰で2日間で『製塩』と『快速魔動鉄道車』の件を片付けられて、あとは四人で冒険の旅にゆっくり出れるね」


「旦那様はそれがあって、この短期間で片付けたかったのですね?」


「そうなんだ、『製塩』と『快速魔動鉄道車』の件を言い出した以上この国に早いところ古代人の残してくれた遺産を生かして活用してもらい、さっさとセリーヌと二人きりで冒険者の旅をしたかったからね!」

「それでは、明日はうまくいくと良いですね!それが終われば色々な街を四人で旅をしながら冒険者として成長しないと・・・」


その後二人でお風呂に入ってベッドで愛し合ってセリーヌは喜びの中、体を震わせながら意識を手放した。

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