第11話 王都からの帰り
俺は朝早く起きて〝寛ぎの広場〝の庭でバスターソードを5000回素振りをし
その後示現流紅の型を『白兎』でなぞり、そのあとは体術をの型、琉球柔術紅流の
型を静かに時に激しく時にゆっくり太極拳の様に動く手足。
汗びっしょりになり、部屋に入ってシャワーを浴びて着替え、1階に行き朝食を頼んだ。
朝食は野菜サンドにオークの照り焼きが付いてジャガイモと人参をバターで炒めたスープで、昔日本にいた頃に飲んだスープに似ていて美味しかった。
チェックアウトの時に「また時々お世話になります、ハヤトと申します以後宜しくです」というと、「自己紹介が遅くなりすみません、両親と一緒にこの宿をやっているディアナと申します。王都にいらした時には是非またご利用くださいね」
と言って俺を送り出してくれた。
ギルドに寄ってクエストでも受けながら帰ろうと、のんびり道を歩いて居ると馬車がハヤトの横を通って行くので端に寄ってやり過ごそうと馬車を見ると、奴隷商人の馬車なのだろうか荷台には一人のエルフの女性と二人の獣人の男性の奴隷が載せられて運ばれて行く。
俺は何気なく気になって奴隷達を見た。
エルフの女性と目が合って、咄嗟に【鑑定】すると『全精霊の加護』、『精霊術のスキルレベル1000』、『弓術レベル100』と見えた。
俺は何故か彼女を解放してあげなければという衝動に駆られ馬車が入って行く奴隷商の店まで馬車を追いかけていた。
奴隷達は店の中に奴隷商人に連れて行かれ入って行った。
俺もその後に続いて入って行く。
俺を認めた別の奴隷商人が「お客様、奴隷をお求めでしょうか?」と聞いてきた。
「ええ、実は今連れてこられた奴隷の中のエルフの女性を家のメイドとして購入したいのですが・・・」
「ああ、今日仕入れたエルフの女性ですね?しかし彼女は片手が肘から欠損していて商品としてもあまりお勧め出来ませんが」
「いや、片手が使えれば良いんだ。その分少し値を引いてくれると嬉しいが、どうだろうか?」
「私どもとしたら願ったりなのですが、本当に彼女で宜しいですか?」
「ああ、構わない。幾らで契約してくれるかな?」
「それでしたらとびきりお安くして金貨8枚で如何でしょう!」
「それで結構だ、それじゃ契約してくれるかな」
「ちなみに冒険者カード内のお金で可能なの?」
「勿論大丈夫ですよ」
「それじゃカード払いで!」と言って俺は冒険者カードを出した。
暫くして彼女を奴隷商が連れてきてハヤトからお金を受け取ると、首に架かっているリングの魔法陣を書き換えて彼女の洋服も先程の荷台の中のボロとは違う洋服に着がえさせて俺に差し出された。
契約を無事終えて、奴隷商が「お前は今からハヤト様がご主人様になったから、末永く可愛がって貰いなさい」
ハヤトは彼女に頷いて奴隷商人の店を後にした。
ハヤトと奴隷の女性は城門迄歩いて行き、ハヤトが衛兵に冒険者カードを見せて城門を出て、暫く歩いて街道から少し外れて人通りが無くなった所で彼女と向かい合った。
「怖がらないで下さい。俺は冒険者をしているハヤトと言います。君の名前は?」
「私はセリーヌです。ご主人様」
「ご主人様なんて言わないでハヤトでいいよ」
「とんでもない、片腕しかし無い私を買って頂いたご主人様ですから!」
「セリーヌ、良く聞いて欲しいのだけど私は君を相棒として雇う為に購入したいのですが、ただ君が嫌だと思うならそれはしょうがないので自由にしてあげるので故郷に帰るなりして構わない。でもその前に君のその腕を元に戻そうね!」
そう言って俺はセリーヌの欠損した腕に手を当てて【エクストラハイヒール】と念じるとみるみる彼女の肘から先が再生されて再び彼女の手は元に戻った。
彼女は驚いてぐるぐる腕を回したり指を動かしたりして、涙を流し始めた。
次に奴隷の印の首輪にハヤトは手を添えて【エリミネーション】と消去魔法を念じて首輪を消し去った。
「セリーヌ、これで君は自由だ!俺の事が嫌だったら故郷に帰るなりほかの街に行くなりしていいよ!勿論幾ばくかのお金も渡そう」
「でももし君さえ良ければ俺の相棒として一緒に冒険の旅に出ないか?」
「ご主人様、私で宜しければ何処まででもお供致します」
「だからセリーヌ、君はもう奴隷では無いのだからご主人様でなくハヤトでいいって!」
「それは出来ません。どうしてもとご主人様がおっしゃるなら、以後ハヤト様とお呼びします」
「う〜ん、まぁいいか!ところでセリーヌはお幾つ?俺は16歳だけど」
「あら、女性に歳をお聞きになるのですか?本の少し私の方がお姉さんですわ!」
「あっ、それじゃこれからセリーヌ姉さんと呼ぼうかな?」
「駄目です!セリーヌとお呼び下さい」
二人はそこで初めて笑いあった。
「セリーヌ、実は悪いとは思ったけど君の事【鑑定(アプレイザル)】したんだ。【全精霊の加護】とか【スキル】とか、だから僕も自分の【ステータス】を君に見せるよ」
「道で目が合った時に何となく分かりました。ハヤト様のステータスもだいたいは分かります」
「セリーヌは【鑑定】のスキルもあったの?」
「だって私は全精霊の加護を持って生まれてきたのですよ!スキルとかでは無く本能的に分かってしまいますわ!」
「そうなんだ・・・、でも一応細かく見せるよ」
『トゥルーステータス』と言ってハヤトはセリーヌに全てを見せた。
「ハヤト様は矢張り神様だったのですね!信じられないステータスです」
「どこ見てるの、神様なんかじゃないよ。歳も本当だと27歳だったけど転生する時少し若くなったみたい!未だこの世界に来て数日なのでセリーヌに色々教わりたいのもあって是非相棒として一緒に冒険したかったんだ」
「私はハヤト様と出会えて本当に良かったです」
「そう言って貰えると俺も嬉しいよ!」
「セリーヌ、王都に戻るより僕が最初に訪れたケープの街に行って食事をしたら冒険者登録をしようよ。【転移】で行くから僕の手を握ってくれる?」
俺達は一瞬でケープの城門近くに【転移】して衛兵にセリーヌの入門の銀貨1枚を渡して、ギルド近くのダニーの店に行った。
「おお、久しぶりじゃねえか、ハヤト。今日はデートかい、偉いべっぴんさんをつれて」
「クエストで王都に行ってたもんで、やっと帰って来ました。いつもの定食を二つお願いします」
「はいよ!すぐに持ってくるぜ」
数分後に定食が出てきた。
(早い!)
セリーヌはお腹が空いていた様で黙々と定食を口に運んで、あっという間に完食した。
「セリーヌ、もっと食べるかい?」
「失礼しました!何年ぶりかにまともな食事を頂いたもので・・・」
「野菜サンドなら有るよ!」
「いえ、大丈夫です。申し訳有りません」
「謝る必要なんか無いよ、幾らでも食べて」
「もうお腹いっぱいになりましたから」
「それじゃ、次は洋服屋さんで君の洋服を何着か買おう」
セリーヌがいいと言うのを強引に連れて行き4着程下着も含めて購入した。
銀貨2枚なのでカード払いにした。
「さあ、今度はいよいよ冒険者登録だよ、すぐそこだから早く行こうよ」
冒険者ギルドは昼過ぎで受付も比較的空いており、キャロルさんが居たので彼女にお願いした。
「それで、ハヤト様パーティ名は如何しますか?」
「キャロルさん、それって名前を付けないと駄目なの?」
「パーティを組むのでしたら付けて頂きたいです!」
「セリーヌ、僕が考えたチーム名は『熱き絆』って言うのだけどどうかな?」
(ちょっと、クサイ気がするが・・・)
「ハヤト様と私の二人の絆ですね?とてもいいですわ」
「それじゃ、キャロルさん『熱き絆』で登録をお願いします」
「畏まりました、お二人のカードを今一度お貸しください」
キャロルはハヤトとセリーヌのカードを持ってカウンターの端に行き何やら処理をして戻って来た。
「ハヤト様セリーヌ様、これで全て手続きは終了です。今後のご活躍を期待しております」
ハヤト達はカードを受け取りギルドを後にした。
「セリーヌ次に武器だけど、ダガーと弓を見て購入しようよ!」
二人は武器屋をざっと見て回り3軒目で俺が【鑑定】した弓は魔力を注ぐと自然に弓矢が添えられ際限なく矢が出てくるマジックアイテムの弓が埃にまみれて置かれていたのを発見して、金貨5枚でダガーと一緒に購入しした。
マジックアイテムの弓の名前は『連射の弓』と【鑑定(アプレイザル)】に出ている。
「セリーヌ、色々あって疲れただろうから少し早いけど宿を取って休憩しない?」
ハヤトはそう言って定宿にしているミーシャの"せせらぎ亭"に向かった。
「ミーシャ、帰って来たよ!またお世話になります。部屋、二部屋」と言いかけたらセリーヌが「一部屋ダブルの部屋有りますか?」とハヤトの言葉を遮ってミーシャに聞いた。
「ハヤトさんがいつも借りている部屋が広くダブルですので、空いてますニャン。何日宿泊しますか?」
「とりあえずは10日程お願いします」とセリーヌが仕切って、仕方なくハヤトは10泊分を冒険者カードで払って205号室に上がった。
「セリーヌ、僕と一緒の部屋はまずいっしょ!」
「私と一緒では嫌ですか?」
(嬉しいけど)いやいや
「嫌じゃないけど・・・」
「私はハヤト様の為に生きると誓ったの。私の為にこれ以上余計な出費はいけません!」
「お金の心配は要らないよ、神様から沢山頂いて居るからね」
「そういうことだけでは無いのです。早く以前の私に戻ってハヤト様とご一緒に冒険の旅を歩むためにもハヤト様に甘えてばかりではダメなんです」
「分かった!これからもよろしくね」
「先ずはシャワーを浴びて着替えたら?」
「はい、それでは失礼してお先にさせて頂きます」
俺はベッドの上で座禅を組み、瞑想を初めて朝できなかった日課の訓練をした。
暫くするとセリーヌが出てきたので俺は急いでシャワーを浴びに向かった。
疲れていたのだろう、セリーヌはベッドに横になり寝息をたてて寝込んでいる。
俺は『美食の皿』でアメリカンコーヒーを出してゆっくり飲んでいた。
どの位経っただろうか?セリーヌがいつの間にか起きて「私にもその飲み物を頂けませんか?」と言ってきた。
「ああ、いいけどこの世界の飲み物ではないから慣れてないと美味しいかどうだろう・・・?」
「すごくいい香りで美味しいですわ!口の中がさっぱりして疲れが取れます」
「これはコーヒーと言う飲み物でパンなどを食べるときに飲むことが多いよ」
「そうだ、コーヒーを全部飲まないでちょっと待って!今、僕の世界のお菓子を出して上げるから」
ハヤトは『美食の皿』を取り出してショートケーキを念じて出した。
小皿にフォークと一緒に出して、
「このお菓子をたべて見て、紅茶やコーヒーと合うと思うよ」
セリーヌは見たこともないショートケーキを恐る恐るフォークで一口たべてみる。
びっくりした顔からニコッとして幸せそうなうっとりした顔になり最後はデレ〜
とした顔になって、「ものすごく美味しい!信じられない美味しさです」
「他にも美味しいものがあるから少しづつ出して行くね!」
「ところでセリーヌ、貴女は精霊術は使えるの?」
「勿論使えます。エルフは基本一つ以上は使えますが火、水、風、土の4種類を使いこなす人は極々稀です」
「奴隷になって首輪が全ての魔法式や精霊術を阻害する術式が施されていて逃げることも出来なかったのです」
「それなら魔法で言う【飛翔(フライング)】は風の精霊術で飛べるのでは?」
「はい、空を飛ぶことは私にとっては然程難しくは無いです」
「身を守る【シールド】とか【プロテクション】や【バリア】は難しいよね!」
「精霊術には有りませんが、相手の【ファイアボール】などは風の精霊術や土の精霊術で防げますよ、弓矢とか短剣なども防げます」
「二人でコンビを組むのだから一歩一歩着実に実力を上げていけば良いね!あまり目立たない程度に」
「ハヤトさまの真のステータスでは目立つなと言うのが無理があると思います」
「そう言うセリーヌも元々はAランクの冒険者じゃないの?」
「かつてはそうでしたが今はFランクから少しづつ肩慣らしから始めますよ」
そんな会話をしていたら夕食の時間になり、二人は1階の食堂に降りて行くのだった。
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