第10話 護衛任務最終日

アルフィーとエイベルが飲みに行って宿に戻ってきたのも知らずに俺はひたすら睡眠を取り、食事で起こされた。


夕食後二人は酔いも手伝って早々に寝てしまった。


11頃に逆に俺は目が冴えて、【サーチ】を5キロ四方に広げてベットで座禅を組んで夜が開けるまでの時間をベットで瞑想するつもりで魔力の流れを意識しながら訓練していた。


夜中の2時少し前に【サーチ】に引っかかる赤の点滅が10人程、間違いなくこの宿〝鏡月亭〝を目指してきている。


50メートル程に近付いてきた時、俺は商人7人が泊まる三部屋を【プロテクション】で囲い、これで中庭や天井裏からも侵入できない様にして、その部屋のある3階の階段の踊り場で待ち構えていた。


賊は宿に入って、ついに階段を登ってくる。


俺は2階3階に【照明(ライティング)】魔法で賊が階段を上がったと同時に

明かりで照らし、【空気刃(エアカッター)】で階段を登ってくる賊を倒して行く。


10人中6人が【エアカッター】の餌食で死に、残りは4人だ。


俺は3階までわざと上がらせて『白兎』を構えて4人が来るのを待った。


4人のうち2人を瞬殺して、あと2人は敢えて殺さず両足、両手を斬り落とし止血して縄で捉えた。


商人の部屋三部屋を叩き起こして賊の死体を3階の廊下に8人と2人を並べた。


商人の人達7人は8人が死んでいて2人が手足を斬られている光景を見て驚いていた。


騒ぎを聞きつけて流石にシンシア達も起きてきて、この惨状を見て驚いている。


商人7人は死んで居る賊の顔を確認して行くと、一人が小さく叫んで、何か呟いた

のを俺はしっかり聞き取っていた。


「ご主人様、この連中の数人は〇〇商会の店員ですよ!きっと私たちが商品を運ぶのを事前に知って襲ったに違い有りません」


「あまり確証が無いのに大きい声で言うものではありません」

どうやら商売敵が襲ってきたようだ。


「生かしていた賊二人を口をわらさせますか?」と商人7人に聞くと我々はどうすることも出来ないのでとりあえず、ここの町の警備兵に引き渡してくれと言うので俺がひとっ走りして警備兵4人ほど連れてきた。


警備兵は8人もの死体を見て驚いていたが荷車に乗せて生きてる二人も一緒に連れて行った。


時間は3時を少し回ったところなので詳しい話は明日という事で俺は朝6時近くまで寝て朝の素振りを5000回して、座禅を組んで魔力の放出を繰り返しして終えた。


食堂に5人の冒険者が集まり、まず俺から昨日の顛末を話すことにした。


「ここから王都まではもうあまり距離もないので襲って来るとしたら昨日の夜中だろうと早めに寝て、逆に皆が寝た12時から【サーチ】をかけていたら10人の賊がこの宿を目指して来るので商人の部屋3部屋をプロテクションをして3階で待ち伏せして10人のうち8にを殺して二人だけ事情を聞き出すために生かして捉えたんです」そう皆に説明する。


また、賊の何人かは商人の人が知っている顔でどこぞの商売敵の手下だと話していたことも伝えた。


「しかしハヤト君、君がいなかったらえらいことになるところだった。助かったよ、本当に、有り難う!」シンシアがお礼を言ってくれた。


「しかし、ハヤトよくお前10人もやつけられたな」とエイベル。


「俺って、以外に強いっすよ!」とおどけた調子で俺が言う。


食堂で朝食を食べ終えて、出発の準備をして商人達を待っていた。


ここから王都までは昼頃には着く感じだ。


「皆んな、あと一踏ん張りもう直ぐで王都だから頑張ろう!」


グランデの街を出てハヤト達の馬車が先頭で進み、俺は【サーチ】をかけながら進んで行く。


果たして、1時間ほどしたら待ち伏せして居る集団が居る。


俺は待ち伏せの連中がいる森の中を【火炎爆烈(ファイアエクスプロージョン)】を放ち全てを消し去ってしまった。


20人程いた待ち伏せの賊は灰になり、森の一部4、5キロ先迄が無くなって焼けた大地だけが赤土を表していた。


商人の馬車の窓から見ていた男の二人が驚いて声をあげていたが気にせず、

俺はアルフィーの横でニコニコして、馬車を進めて行くアルフィーに「早く王都に行きましょう」と檄を飛ばしていた。


「ハヤト君、君と組むときは回復魔法師は必要ないだろうね!」とシンシアが言う。


森を抜けると急に道が広く整備された道に出た。


しばらくその石畳を進むと王都の城壁の門が見える。


流石王都だ!門の高さと頑丈さが半端ではない。


シンシアが何か門の兵士に言うと門が開かれ数人が出てきて敬礼をしてくれた。


王都の城門を通り冒険者ギルドに行く道と商業施設が有る道の別れ目でシンシアが依頼書にサインを貰い商人達と別れ皆でギルドに向った。


シンシアが依頼書達成を伝え金貨5枚を受け取り各自に配った。


エイベルが貰った金貨を俺にポンと投げてよこすが、俺はなんの事か分からず???


エイベルが「模擬戦で負けたから」と言うと「勝つのがわかっていたので賭けにならないから要らない」と俺に返されて苦笑いし、「それじゃ昼飯代を俺が持つから」と言われご馳走になった。


シンシア達は王都からケープに行く仕事をギルドで探し、借りた馬車を返すのもあるので今日は王都に泊まるようだ。


俺はせっかく王都に来たので冒険者ギルドに行こうと再びギルドの扉を開いた。


流石王都のギルドだけあって、ケープよりも大きい。


受付カウンターも広く全員で5人の受付が居る。女性3人に男性が二人だ。


ギルドマスターはここもケントさんだから副ギルドマスターがケントさんの後輩なんだ、と思いながら掲示板を眺めるとAランク対象のクエストでトロール1体の討伐クエストがあった。銀貨50枚だ。


1体を倒すだけで銀貨50枚はおいしい仕事だと思いその依頼書を剥がして受付に出す。


「すみませんこの依頼を受けますのでお願いします」


「王都は初めて?」


「はい、ケープで冒険者登録したばかりでこちらに護衛依頼で来て初めての王都なんです」


「ケープですか!この依頼は少なくともBランク以上の人でないと受けれません。

まして登録したばかりの君では・・・」


「ええ?Bランク?登録して3日で・・・」


「ケープの街で登録したなら間違い無いわね、しかし、君ハヤト君?トロールは巨人で動きの早い手強い相手だから気をつけてね!このお王都から10キロ程東に行った森にいるはずだから、もし倒せれば裏の素材置き場に持って行ってね」


「わかりました、では行って来ます」


「あの子10キロ先にトロールがいて倒しても、10キロを巨人を担いで一人で持って来るのかしら?バカじゃ無い?」と一人ブツブツ言う受付嬢だった。


俺は【地図(マッピング)】と【ブースト】をかけて10キロ先のオークのいる森に2分ほどで着き、【サーチ】をするとハヤトのいる所から10メートルも離れていない右前方にトロールがいるのがわかった。


俺は【シールド】を身にまとい、トロールに近づき【バリア】をかけて閉じ込めいつもの様に空気を抜いた。


体が大きい分バリア範囲も広いため空気が完全になくなるまで結構時間がかかったがやっと動きが止まり、更に余裕を見てしばらく完全に動かないのを確認して【バリア】を外し頸動脈を斬り、血を抜いて傷口を軽く焼いて血止めしてから【次元収納ボックス】に入れた。


帰りは【転移(トランスファー)】で冒険者ギルドの裏に行き素材置き場にトロールの遺体を出して納品書を一緒に出した。


「おお、新顔だな。坊主お前一人でトロールをやったのか?傷がないじゃ無いか!」


「いや、頸動脈を切ってますから、ほらここに!」


「いや〜、それにしても綺麗な死体だな!すごいな坊主の腕前は」


「綺麗なので銀貨10枚サービスしたぞ」


「ありがとうございます」(ここでもサービスしてもらった、素材置き場の人は

皆気前がいいなぁ!)と一人つぶやいて受付に戻った。


先ほどの女性に「はい、トロールの討伐証明書」と言って納品書を出す。


「ええええ?もう帰って来たの?10キロって、往復20キロよ?しかもトロールを

担いでほんの2、30分で出来るわけ無いじゃ無い?」


「しかも素材置き場のチーフがサービスで銀貨10枚も・・・」


「まぁ、いいわ、はいハヤト君、銀貨計60枚よ」


「あの〜、すみませんがこのカードに入金してください」とシルバーカードを渡した。


受付嬢のヘレンはハヤトからシルバーカードを受け取るとそこに銀貨60枚を入れてカードには金貨21枚銀貨900枚のお金が貯まった。


受付の女性は履歴を見て真っ青になった!


4日間の彼の履歴は異常だった!まさか4日間だけでB迄いく冒険者などありえないのだ。


ケープのギルマスは冒険者ギルドを統括するあの方だからおかしなことをするはずが無い。


ヘレンはハヤトにシルバーカードを返して、「ハヤト君銀貨60枚が追加してカー

ドの総計は金貨21枚銀貨900枚になりました。銀貨を金貨に替えて置きますか?」


「そうして貰いますか?」


「それでは金貨30枚になってます」


「ありがとうございます」と、ついつい丁寧語で返事してしまった!


「すみません、王都でリーズナブルな宿を紹介してもらえませんか?」


「そうねぇー、このギルドを出て左に10メートルほど行くと右側に〝寛ぎの広場〝という宿が安くて美味しくていいわよ」


「ありがとうございます」そう言うとハヤトは教わった道を目指して出て行った。


ヘレンは副ギルドマスターのクローディアの部屋をノックしてハヤトの件を伝え

3日でFランクからBランクにしかも討伐履歴が半端じゃ無いと告げた。

しかも登録先がケープの冒険者ギルドだったことも伝えて1階に降りて行った。


クローディアはマジックアイテムの『遠距離通話器』でケープのギルマス、ケントを呼び出した。


「おお、クローディア元気か?珍しいじゃないか何かあったのか?」


「一応確認なのですが、今日、若い冒険者が来て午後からトロールの討伐クエストを受けて数分で仕上げて戻って来たのですが彼がなんと3日前に冒険者になったばかりの少年で・・・」


「クローディア、それ以上言わなくてもいいぞ!ハヤトの事だな。彼の事は何もせずに見守っているだけでいい。王様あたりに気づかれない様に頼む!」


「彼は何者ですか?」


「彼は人外、神様と同じ。本当はSSさえも凌駕する力の持ち主だ。でも安心しろ、好青年で真面目でやさしく子供に見えるが本当はもう少し精神年齢は上だな」


「ケント様は彼のステータスを見られた?」


「ああ見た、一部だがな。今は改竄してAクラスの上位ぐらいに書き換えてるけどおそらく俺が知り得る冒険者で彼のステータスは勇者さえもはるかに超えていると思うぞ」


「ええ?ステータスを書き換えるなんて出来るのですか?」


「ああ、彼なら出来る!彼は死んだ人間も助けることが出来るからな!」


「・・・・、それって神様じゃ無いですか」


「そうだ、だからこの事は俺と君だけの秘密にしておけ!」


「貴族達や王様の綱引きに入れたく無いからな!彼が本気で怒るとこの世界が消えるぞ」


「わかりました、あまり大げさにせず普通に接します」


「俺も頭がいたい、ハヤトのことを考えると」


「明日には帰ってくるのか・・・クローディア来月はそちらに行くよ」


ケントの通話はそれで切れた。


彼が見たステータスとは?急にハヤトの名前がクローディアの頭に大きくクローズアップされて来た。


そんな会話がされていたことも知らず俺はヘレンから教わった〝寛ぎの広場〝を見つけ、入って行く。


「いらっしゃいませ、お泊まりですか?食事ですか?」


「1泊止まりで部屋空いていますか?」


「はい、大丈夫です1泊朝夕食事付きで銀貨1枚です」


「はい、銀貨1枚」


「夕食は5時半から10時半迄でラストオーダーは10時です。朝食も朝5時半から10時半迄でラストオーダーが10時です。飲み物追加は食事の時にその都度承っております。それでは201号室の階段を上がったすぐの部屋です」と言って鍵をくれた。


俺は階段を上がって201号室に入り、のんびりと寛いだ。


シルバーカードのBランクになりカードの貯金額が金貨29枚銀貨99枚になった。


今度ケープの街に戻って落ち着いたらAランク試験でも受けて見ようと思う俺だった。


ベッドで座禅を組んで瞑想し、魔素(マナ)を意識しながら全身にくまなく巡回

させて瞑想を解いた。


夕飯の時間になると思い1階の食堂に行く。


すでに冒険者らしいグループが席についてエールを飲みながら談笑をしていた。


俺は未成年では無いが(この国では15歳以上が成人だそうだ)酒は苦手だ。


もっとも俺は酒をいくら飲んでも酔わないし、二日酔いにはならない。


解毒のスキルが有って、状態異常には絶対にならない。


「お客さん夕食お持ちしていいかしら?」


「はい、お願いします」


5分ほどで夕食が運ばれて来た。


オークの照り焼きと野菜スープに玄米パンがおかわり自由でオークの照り焼きが味が濃く食が進んだ。


食後に紅茶を頼み、追加料金が銅貨20枚だった。


カードには銅貨が全くなかったので次元収納から出した。


久しぶりの紅茶の気がする。


護衛依頼の間は一人であまり美味しい料理を食べると他の人とのバランスがよく無いと思い、『美食の皿』や『万能鍋』を使うのは控えていた。


そのため、コーヒーとか餃子やラーメンなどは食べないで我慢していた。


この宿のお茶も美味しい。


一人で冒険をしながらこの様に旅をするのもいいものだと久しぶりに心が落ち着く。


2階の部屋に上がりこの数日の目まぐるしい日々を思い返しながらベッドで意識を投げ出していた。


俺は意識を投げ出す前に必ず部屋にシールドを施して自分を守ることも忘れずにしていた。


その日は何事もなく夜も更けて行きぐっすりと俺は寝入って目が覚めたのは翌日の早朝だった!

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