第3話 近くの町ケープへ
田舎の博物館の学芸委員だった紅隼人は夏休みを利用して好きな神話の故郷を訪ねて行く最中に因幡の白兎に化けた神様が横切ったために崖から落ちて車は大破し、彼は死んでしまった。
神様によって転生させられたのが剣と魔法がある異世界だった。
気が付いた所から一番近い街に向かって歩き始めて10分ほどしたら道が出てきて、その道を南に20分ほど行くと壁に囲まれた街の門が見えた。
言葉が通じるのか不安だったが取り敢えず日本語しかできない俺は衛兵に日本語で話しかけた。
「すみません、ど田舎から来たのですがこの町に入りたいのですが」
俺は門にいる兵隊に挨拶すると、
「坊主、冒険者カードとか、無いのか?無ければ銀貨1枚だ!ただし、その前に犯罪履歴を調べるからこの魔道具の石に手を添えてくれ」
おお、通じた!これも神様が言うサービススキルだろうか!
石に手を添えたハヤト、石は一瞬光ったが再び何も無かったかのように元に戻った。
「犯罪歴は無いな、それじゃ銀貨1枚だ」
ハヤトは衛兵に見られない様に【次元収納ボックス】から銀貨1枚を取り出して、衛兵に渡した。
「坊主、冒険者ギルドに行ってカードを作ってもらえ!そうしたらいつでもどこでも門は通れるぞ」
「そうします、何処に有りますか?」
「この道を真っ直ぐ行くと左側に看板が見えて来るから直ぐに解るぞ!」と衛兵が教えてくれた。
俺は教えて貰ったように門から入った道をキョロキョロ左右を見ながら歩く事5分程、衛兵が言うように左側に盾と剣を描いた看板が見えて来た。
(ああ、あれが冒険者ギルドだな?)俺は前世の本の知識からすぐに理解できた。
俺は冒険者ギルドと確認して、歩いて行く。
冒険者ギルドは中々の風格のある建物で下がレンガの様な石で組まれており二階以上が木造の三階建の建物だ。
扉を開けると昼を少し過ぎた時間ということもあって、受付はすいており、右側の
食堂には冒険者らしい人達が座って食事をしたり酒を飲んだりしながら談笑している。
キョロキョロしていると受付の女の子から声が掛かった!
「初めてでしょうか?冒険者登録ですか?クエストでしょうか?」
「冒険者に登録したいのですが・・・」
「それでしたら先ずこの書類に名前等を記入してこちらにお持ちください」
俺が日本語で書いて行くと何やらこの世界の文字に変換され書きなおされて行く。
俺は生年月日がわからないので16歳ということにして適当に書いた。
月日は覚えやすく7月7日七夕の日にした。
「あとカード発行手数料として銀貨1枚を頂きますが宜しいですか?」
「はい、わかりました。銀貨1枚ですね」
俺はギルドのお姉さんに銀貨1枚を渡した。
書類の読み書きはなぜか読めるし、日本語で書いたら変換されて、これも神様のサービススキルの様だ。
俺は職種を魔法剣士とした。
一応神様からは魔力とスキルは貰えていたので魔法は使えるはずだが未だ使ったことが無いので分からない。
「それでは魔法特性を見ますのでこの水晶に手を触れてください」
俺は恐る恐る水晶に触れると、水晶が光り始め最初に赤く、次に緑に次に水色
そして、次に茶色に変化して、しだいに黒くなって最後は無色透明になり水晶が割れてしまった。
「ええええ、全魔法特性を持っていらっしゃるの?無属性魔法まで!」
「それにしても割れることなどない水晶が割れてしまったわ」
「取り敢えず此のカードに一滴血を滴らして下さい、ハヤト・クレナイさんの名前が浮き出てきますから」
ハヤトは言われた通りに一滴血を垂らすと名前と生年月日が浮き上がり冒険者カードが出来上がった。
当然初心者カードなのでFランクのアイアンカードだ。
カードを見て見ると・・・
【名前】ハヤト・クレナイ
【種族】人間族
【年齢】16歳
【職業】魔法剣士(パラディン)
【レベル】1
【ランク】F
【所属】ブルネリア王国ケープ支部
ちなみにFランクからEランクは初心者ということでアイアンカード。
DランクからCランクはブロンズカード、上級と言われるBランクはシルバーカードでAランクはゴールドカードだと説明をうけた。
最高ランク冒険者のSランクはプラチナカードとなっているらしい。
カードを受け取り、受付嬢から冒険者ギルドの決まりごとの説明を大雑把に聞いて宿を探そうと思い、受付嬢に聞いてみた。
「このケープの町は初めてなので何処か食事が美味くて、安い宿を教えて下さい」
「それなら、ギルドを出て左に前の道を行くと70メートル先の右側に"せせらぎ亭"という宿があるわ」
「ありがとうございます!」
俺は受付嬢にお礼を言って、言われた通りに左に出て少し歩くと"せせらぎ亭"と書かれた看板を見つけ入って行った。
「いらっしゃい!食事ですか、泊まりですか?」可愛い14、5歳の猫娘が出て来て聞いてくる。
「泊まりです、一泊食事付きでお幾らですか?」
「はい、朝晩の食事付きで1泊銅貨80枚で前払いですが・・・」
「それじゃ、一月分空いてますか?」
「一部屋ですね? 大丈夫ですよ」
「それじゃ銀貨24枚ですね?」
俺は【次元収納ボックス】を見えないようにしながら銀貨24枚を出した。
「朝は5時半から10時までで、ラストオーダーが9時半です。夜は同じく5時半から10時までで、ラストオーダーは9時半です」
「1ヶ月お世話になります、ハヤトです。冒険者をこれからするものです」
「私の名前はミーシャよ、ここは母と父と私でやっているの!よろしくね!ニャン、ニャン」
「それじゃ、2階の一番奥の205号室です、はい、これが鍵。夕食まで未だ時間がだいぶあるのでごゆっくりしていて下さい」
「ありがとう!お昼を食べてないので近くの屋台で何か買って来ます」
「うちでも軽食ならできますよ、サンドイッチとかはどうでしうか?」
「あっ、それなら出るの面倒だからそのサンドイッチに果実ジュースください」
「銅貨10枚です」
「はい」と言ってハヤトは銅貨10枚を渡した。
どうやらお金の単位は大銅貨、銅貨、銀貨、金貨、白金、光金貨の順で大銅貨が1円、銅貨が約100円、銀貨が約1万円、金貨が約百万円、白金が一億円という感じらしい。
食堂でのんびり待っているとすぐにミーシャがサンドイッチとジュースを持って来てくれて俺はこの世界に来て初めて口に食べ物を入れた。
パンは俺の食べていた食パンにほぼ近い麦パンのようだ。ジュースはオレンジを凄く甘くした濃厚ジュースだった。
銅貨10枚にしては量も質も最高だ!
サンドイッチも何かの肉の照り焼きと卵に野菜がついて、お腹いっぱいになる。
食べ終えて、俺は2階205号室に上がった。
部屋はそこそこの広さが有り、シャワー付きでベッドもふわふわで気持ちがいい!
俺は靴を脱いでベットに横になり、先ず神様ヘラからの恩恵のステータスやスキルを見ることにした。
俺は異世界ファンタジーの本を好きで読んでいたこともあり、「ステータス、オープン」と心の中で叫んでみる。
すると思った通り、目の前に半透明の盤が現れてステータスが記されていた。
【名前】 ハヤト・クレナイ :転生者 神の加護 神の使徒 剣聖 拳聖
【年齢】 16歳
<体力>無限
<知力>賢者
<魔力>無限
<能力>無限
<レベル>1
【魔法】
火魔法:レベル10
水魔法:レベル10
土魔法:レベル10
風魔法:レベル10
光魔法:レベル10
闇魔法:レベル10
無属性魔法:レベル10
亜空間魔法:レベル10
次元魔法:レベル10
生活魔法:レベル10
【スキル】剣術スキルSSS・体術スキルSSS・魔法スキルSSS
【次元収納ボックス(容量無限)】金貨50枚・銀貨100枚・銅貨100枚・大銅貨500枚・着替え5着と靴5足・神刀 白兎・バスターソード・異世界地図・美食の皿・万能鍋・様々な本数冊
【加護】 オリンポスの全神からの加護
ゼウス(創造神)の加護・神々の王
へラ(守護神)の加護・ゼウスの妻
アテナ(技能神)の加護・知恵を司る
アポロン(光明神)の加護・予言を司る
アフロディーテ(愛美神)の加護・美を司る
アレス(武神)の加護・戦禍を司る
アルテミス(豊穣神)の加護・狩猟を司る
デメテル(大地神)の加護・農耕を司る
ヘパイストス(鍛治神)の加護・炎を司る
ヘルメス(伝令神)の加護・旅の安全を司る
ポセイドン(海洋神)の加護・海を司る
ヘスティア(家庭神)の加護・家事を司る
ディオニュソス(酩酊神)の加護・酒を司る
バデス(生命神)の加護・冥界を司る
ペルセポネ(季節神)の加護・四季を司る
〝すごいステータスだ!それにしても少々加護が多すぎないか?レベルが1はしょうがないよな、転生したばかりだから。これからレベル上げすればいいことだ。
スキルで限界突破スキルって有るけど、レベル10が最高じゃないのかな?〝
(しかし、神の加護はわかるけど、何故にオリンポス?俺は日本神話が専門の学芸委員なのに、日本の神話の神ではないようだがここは軽くスルーしておこう)
〝神の使徒?神様から何かことづかったかな?あぁ、『ゴミ掃除』とか頼まれたっけ!それで神の使徒???まぁ、おいおい解ってくるだろう!〝
次に【次元収納ボックス】の中身を少しだけ調べてみる。
(お金は金貨50枚・銀貨76枚・銅貨90枚・大銅貨500枚・着替え5着と靴5足・神刀 白兎・異世界地図・銅貨と銀貨は使ったから少し減ってるな、それにしてもヘラ神様有難うございます。でももらいすぎだよ!)
武器を見るとヒヒイロカネ製の日本刀で、『白兎』と銘が打ってある。
俺が日本人だったので日本刀なのかな?俺は剣道は昔から強く全国でも名を馳せたほどだからな
【次元収納ボックス】から取り出して構えて見る。
まるでハヤトのために打ち直した様な刀で、手に馴染み重心のバランスといいハヤト好みの刀になっていた。
そしてこの刀の最大の特徴は"魔剣"で、この刀で切れない物は無く、しかも、相手のスキルや魔力を奪い取り、相手の剣が魔剣であればその魔力さえも奪い取ってこの刀に付与される。
これはとんでもない刀だ!
何度か素振りをして自分の為に神様がくれたのだと確信した。
あとはバスターソードといわれている身長と同じくらいの大型の剣だ。
アダマンタイト製と出ていた。
硬度がとてつもなく硬い。鋼鉄も砕けると出てる。
なぜ製品の鉱石がわかったかというと、刀をとるたびにその特徴などがステータスボードの様に現れてきた。
どうやら自然に【鑑定(アプレイザル)】スキルが発動している様だ。
(すごい剣だなぁ!)
ハヤトは驚いているが内心日本刀を使うだろうと己自身思っていた。
ただ俺はゲイマーをしている時はいつもバスターソードを振り回して、バーサーカーとして活躍していたのでバスターソードには親しみを持っている。
洋服は冒険者風の黒いコートの様な長い上着がある。
耐熱、耐打撃、耐斬撃、耐寒、耐湿、耐物性のコートとなっている。
早速取り出して冒険者ギルドに行くときはこれを着て行くことに決めた。
ズボンは俺のウエストに合わせた綿パン的な動きやすいズボンで、色違いのものが3枚ほどある。
シャツも半袖、長袖3、4着ずつ入っている。
あとは下着の半袖、長袖、が5枚とパンツがトランクスで5枚有った!
(神様ありがとう!)
食べる方では、何だか大きなお皿と鍋が入っている。
名前は『美食の皿』『万能鍋』、魔力をお皿に向かって放ちつつ食べたいものを念じるとその食べ物が出てくる。
また鍋に向かって食べたい鍋系のものを念じるとそのものが鍋の中に出てくる。
(へぇ〜、この異世界で餃子が食べれるのかな?)と思い、魔法のお皿に向かって魔力を放つと言っても、魔力を放つ方法がわからず念じてやってみる。
ファンタジーの本を読んでいた経験がここで生かされる。
魔力の元になるマナを体内で感じるところから始まり、それを自由に体内を巡らし
手のひらに少し集めてお皿に向ける。
するといきなりお皿の上に餃子が10個、温かい餃子が現れた。
だが酢醤油がない。
瓶に入っているお酢を想像して念じると、皿の上に瓶に入ったお酢が現れ、同様に
醤油を想像して念じると瓶に醤油が入って皿の上に現れた。
早速小皿を宿から借りて来て、醤油とお酢を入れ餃子をいただいてみる。
味も抜群!最高の餃子だ!
コレで『美食の皿』と『万能鍋』があればパンやスープ系も冒険旅行に出ても食べれると安心した。
さらに中を見ると、暇つぶしに読めというのか、数冊の本が入っていた。
『魔法全書<初級>』『魔法全書<中級>』『魔法全書<上級>』『魔法全書<神
級>』『無属性魔法全集』『精霊術の全て』『賢者の本』等々。
『無属性魔法全集』は凄い厚さだ。その中を覗くと『回復(ヒール)』魔法とか『浄化(クリーン)』魔法とか『転移する(トランスファー)』魔法など沢山
あるのでまるで百科事典並みの厚さだ。
『賢者の本』とあるが羊革紙で出来ていて、何も書いていないが、ステータスボード風の解説を読んでみる。
解らない事、知りたい事、悩み事等を此の白紙の羊皮紙に記すと、的確な回答が出て、解決してくれる。
(おお、すげぇー便利だ、今後此の世界の解らない事をこの『賢者の本』に相談できる)と喜んだ。
とりあえず次元ストレージの中身は全部見たが、なんとか項目別に整理できないかと
思った瞬間、次元ストレージの中が項目別に並べ替えられて、二重『武器』、『食べ物系』、『地図・本』等項目別に並べ替えられて表示された。
随分ストレージの中身が見えやすくなり、瞬時に取り出すのにとても便利になった。
そういえばこの町はケープという町でこの国はブルネリア王国だということは冒険者カードを見て分かったが、ブルネリア国とはどんな国か全く分からない。
この辺りのことは『賢者の本』に頼らず図書館などで調べて見ようと思った。
図書館の場所を階下に降りていきミーシャに聞いてみる。
「ミーシャ、この辺に図書館て有るの?」
「図書館ならうちの宿を出て斜めお向かいが図書館だニャン!」
"せせらぎ亭”ばかり気にして全く気がつかなかった俺は、見ると向かえに大きな
4階建ての建物に〝ケープ図書館〝と出ている。
早速入って、受付にこの図書館のシステムを聞く。
館内で読むには特に何もいらないが、持って帰って借り出す場合は事前に図書カードの作成をしてそれに記録しないと持ち出せないという事だった。
持ち出しすることも有るだろうと、図書カードを作って貰う。
カード作成は無料だった!
このカードは国内であればどこの町の図書館でも使えると聞かされた。
1階が事務関係のフロアーで2階から上が蔵書のフロアーになっている。
2階はこの国の歴史、地理、周辺諸国関係の本、3階が魔法関係と魔物の本、4階が錬金術と剣術関係の本が置かれていた。
早速2階に行き、この国についての本を読んでみる。
ブルネリア王国:ルーラル大陸の中で二番目に大きな国土。
王都は国王ベンジャミン・スミロフ・ブルネリアの住居が有るジュネべ、人口は凡そ100万人。
隣接する国:ベルガル王国・ヒルメル帝国・オルバル帝国(大陸一の大きさを誇る大国)
王都ジュネべの人口:100万人
第二の都市ケープ:人口80万人
第三の都市グランデ:人口70万人
第四の都市ルーベン:人口50万人弱
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第十番目くらいまでの人口が凡そ出ていた。
筆頭貴族は国王の弟:ブレット・スミロフ・ブルネリア公爵
公爵:ダニエル・シモン・グロース
侯爵:ギルバート・バンクス・ケープ
侯爵:エドガー・アシュビー・グランデ
侯爵:ハーマン・ブレナン・ルーベン
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公爵が二人、侯爵が三人、辺境伯二人、伯爵が五人、あとは子爵と男爵が結構いる。
このケープの町はギルバート侯爵が治める都市だと分かった。
あとは歴史的なことを読んで周辺国との関係とかを読み込んでいった。
まだ時間があるので3階に上がり魔物の本を読むことにした。
俺は魔物は異世界シリーズの本を読んだ程度の知識しかなく、ゴブリンやオーク程度はしっているが、未だそれさえも本物を見ていないのだ。
魔物図鑑のような本を読んでいくと、俺が知っている魔物、マナバイソンとか
ホーンラビットとかファングボアなどが絵とともに出て来て特徴、弱点、解体の方法とかが載っている。
珍しいところでは、火山地帯にいるキマイラとかアウルベアとかグロテスクなマンティコアなどが初めて見る魔物だ。
其の他にバジリスクという魔物は石化の魔眼を持っており、睨まれて目があうと石になり死んでしまう。
また森にいるサウンドラーという魔物は大型で鳴き声が人間の脳を刺激して幻覚、幻聴を起こす低周波音を出し、特に魔法師、剣士はこの鳴き声を聞くと体が思うように動けずサウンドラーの餌食になると書かれていてランクもBランク魔物だ。
其の中でもやはりドラゴンが一番ランクが高く其のドラゴンの中でもエンシェント
ドラゴンはランク10にも達している。
魔物図鑑を読み終え魔法書物を読んでみようと、手にとってパラパラ見たが神様が
入れてくれていた本の方がわかりやすく、一応上級までは神様から頂いた本でマスターしていたので時間がある時に、別の角度から読んでみようととりあえず図書館を後にして宿に戻った。
少しずつ気長に覚えていこうと思いながら俺は宿のベッドでうたた寝した。
そして、そろそろ夕食の時間だと思い、素早くシャワーを浴びて着替えて食堂に降りていった。
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