7 吉兵衛さん僕、実の母にも会ってみたいんです。

ミルカと海辺うみべで別れた後、吉兵衛のいる寺 滅魔大明神寺めつまだいみょうじんでらへ行った。


吉兵衛きちべえのおっさああああん。」

 

 僕は寺の門を抜けると、大きな声で、吉兵衛を呼んだ。

 

 「なんだ、なんだ、こんな夕暮れときにやかましいガキだね。」

 吉兵衛は面倒めんどうくさそうに、お寺の中から出てきた。

  

 僕は、吉兵衛に昨日の出来事を話そうと思った。

「喧しくて悪かったね。僕、昨日、実の父親、阿僧祇 草野丞あそうぎくさのすけに面会してきたんだ。」

 

 吉兵衛は、ニヤりと、笑い、ほう、と、うなづいた。

 「どうだったんじゃ、実のオヤジは。」

 

どうもなにも最低、最悪のクソオヤジだった。処刑されるのも納得の外道だった。

「最低、最悪のクズオヤジだったよ。想像をはるかに超えた外道げどうだね。」


吉兵衛は、馬鹿笑いして、笑い転げていた。

「にゃははははははは、とんだ災難さいなんだったなあああああ。ゲロみてえに汚ねえクソ、野郎だっただろう。ゲラゲラ。」


 酷いやつだ。

 だけれど、むしろ笑い飛ばされて、心がスッキリとした気がした。


 「最悪最低でしたよ。」

 

 「でも、行って損はなかったでしょ。前よりずっといい、顔してるよ。」

 

 吉兵衛は、わかっていたのかもしれない。

 

 僕が悩んでいること。

 

 いやなことから目を背けてきたこと。

 

何も知らなかった、実の親のことが、気になっていたのだ。

 

 「僕、実は、クソオヤジにあって、どうでもよくなったんです。どうして、今まで、自分の出自にコンプレックスを抱いていたんだろうって、大事なのは、今の自分でした。」

 

 吉兵衛は大きく相槌あいづちを打った。

 「うむ。おぬしも、向き合う覚悟が決まったんじゃな。大事なことだ。」

 

 「実の母にも会って、みたいんです。吉兵衛さん、僕の実の母がどこにいるのか、知りませんか。」

 

 吉兵衛は、少し考えたのち、口を開き始めた。

 

 「おめえの、実の母、雨ケ崎 黒世くろよは、純粋でいい子じゃった。かつては、真っ当に生きておった、大学生じゃった。ある日、おめえの実の父に、犯され、薬物中毒となり、今では、クソビッチ腐れ女に落ちぶれてしまったのじゃ。救いようのない、性奴隷せいどれい薬中やくちゅうへとな。」

 棚の引き出しの中から、写真を持ってくると、僕に手渡した。

 

 「右端みぎはしに写っておるのが、黒世じゃ。よく、悩み相談に、寺に来ておったわい。」

 

 僕の知らない、過去がある。

 

 僕が知らなかった、ことがあるのだ。

 

 綺麗な女だった。

 

 「しかし、まあ、あやつが、今どこで何をしているのかは、わしも特定はできんが、知り合いからの噂によれば、歓楽街かんらくがい雅楽町がらくちょうで、女王になっているとかなんとか、まあ、儂にもよくわからんがな。」

 

 歓楽街の雅楽町。

 

 きいたことはあるが、治安の悪い町だということだけは知っていた。

 

 「碌でなしであることだけは、間違いないさ。なんせ、御前おまえを川に捨てたっきり、遊び惚けているのだからな。」

 

 確かに、僕を捨てて、遊びほうけているのであろうが、一度は会ってみたいと思った。

 

 「でも、会ってみたいんです。」

 

 吉兵衛は僕の言葉をきいて、感心した様子で言った。

 「ふううん。変わったね。」

 

 少し間を開けて、吉兵衛は、言った。

 

 「明後日から土日休みで、学校もねえだろ。今日と明日のうちに、黒世のことについて調べといてやるから、ま、明日はちゃんと学校に行くことだなあ。」

 「ありがとうございます。」

 

 「世話の焼けるガキだ。」

 

 何やかんやと、言っても、吉兵衛はお人好しなのだ。

 

 夜の七時を過ぎていた。

 

 今日は部活は休みだった。

 

 ま、僕は、帰宅部だけど。


 しかし、部活動ってのはいいものだ。

 

 学年によらず、学校の中から、共通のやりたいことをする人が集まって、大会とか、を目指して、活動する。

 

 高めあえるライバルがいる。

 

 けれど、実際問題、レベルはまちまちだ。

 

 教える人間も、大したスポーツ経験のない素人であることもあるし、全国大会常連校はだいたい、決まっている。

 

 予算も不足しているし、やりたいように、やれないこともあるのだ。

 

 部活ってのは誰もが真剣で、一流を目指している人が集まる場所ではない。

 

 ただ、世の中、勉強だけですべてが決まるわけではないのだ。


 部活は、勉強以外で、生徒が、結果を出せる場所なのだ。


 スポーツの成績で、褒められたり、できるし、美術や、音楽で賞を取れば、別の分野で活躍できる機会が与えられているのだ。

 

 二日後。

 

 今日は、土曜日、学校は休みだ。

 

 千代さんには、友達の家に遊びに行くと言ってあるが、実の母、黒世に会いにいくのだ。一体、どんな人なのだろうか。

 

 吉兵衛のいる、滅魔大明神寺に出かけた。

 

 「吉兵衛さん。きました。賀籠六かごろく 創戦そうせんです。」

 

 ひょっと、寺の中から、体を出して、吉兵衛が出てきた。

 「おう、創戦 待っておったぞ。」

 

 吉兵衛は、僕を寺の中に手招きした。

 「ちょっと中へ入ってこい、黒世のことがわかったぞえ。」

 

 寺の中に入ると、吉兵衛が、リビングテーブルのある椅子に座り、パソコンをカタカタと叩いていた。

 「知り合いの歓楽街の友人が、黒世が今、どこで何をしているのか、知っておる奴がおったのじゃ。みてみい。今の黒世の、画像と動画じゃ。」

 

 艶やかな、黒と赤色の着物に身を包んだ、女王が、いた。

 

なんとも、この世のものとは思われないほどの、美麗びれいで、鋭い、高貴な女王に思われた。

 

 「本当に、実の母なのですか。現実離れしていて、浮世離れにしか思われませんが。」

 

 率直な感想を述べた。

 

 「無理もなかろう。儂も最初は驚いたが、間違いないのじゃ、目元のほくろの位置、目の形、鼻の形、口の形、身長、儂の知っている、黒世に間違いないのじゃ、むしろ、若返ってみえるが、見紛いようがないのじゃ。」

 

 吉兵衛は、黒世の写真も持ってくるといった。

 「ほれ、比較してみればわかる。」

 

 確かに、そっくりだ。

 

 「歓楽街は危険な場所じゃ、子供が一人で、行っていい場所ではないわい。儂の知り合いの男が歓楽街の入口の、大魔人門だいまじんもんで、待っておるから、やつに案内してもらうのじゃぞ。」

 

 至れり尽くせりであった。

 

 吉兵衛は私の為に、手配してくれていたのだ。

 

 「ありがとうございます。」

 僕は、礼をした。

 

 吉兵衛は、少し、頭がおかしくて、いかれているところがあるが、困っている人を放ってはおけない質なのだ。

 

 「もっと、頭を下げて、感謝するんだな。御前みたいな、ひよっこに、俺がここまでしてやっているんだ。」

 

 「言い方が悪いですよ。素直になったらどうですか。」

 

 「ガキが、俺に舐めた口きくんじゃあねえよ。」

 

 しばらくして、吉兵衛は口を開いた。

 

 「ま、御前が、実の両親と向き合いはじめてくれてよかった。おめえ、成りたいものとか、将来の展望とか、ねえのか。」

 

 私には、まだ、夢もなければ、目標もない。

 

 「まだ、わからないんだ。ちゃんと高校に入って、大学に進学するまではいいとしても、先はわからないんだ。」

 

 吉兵衛は、うなづいていった。

 「そりゃ、そうだ。ま、やれることをやってりゃ、そのうち見つかるさ。」

 

 「はい。じゃ、僕、行ってきますね。」

 

 「いってらっしゃい。」

 

 現実の世界は漫画や、アニメの世界とは違う。

 

 悪は、法律と、政府によって、除外される。

 

 世界を救うだなんて大それたこともできない。

 

 僕は、いったい、何になりたいのだろうか。

 

 わからない。

 

 いつか、答えがみつかればいいな。





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クソビッチ・・・異性との交際において、だらしのない女の事。


美麗・・・美しく、あでやかなさま。


高貴・・・身分、家柄などが、高くたっといこと。



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どうも、黒珠 霊歌/くろたまれいか(/・ω・)/です。


読んでくださりありがとうございます。(*- -)(*_ _)ペコリ


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