第87話 最後の一振りを残し完成

 10年前、ヒルデから剣の受注があった。

「そして1000振りのうち80振りはアダマンタイトを芯材に、ミスリルで覆って打ってくれ。」


 おおう?さらにハードルが上がったぞ?


「そして10振りはヒヒイロカネ製だな。で、9振りがオリハルコンを芯材に、ミスリルで覆って打つがいい。最後は言わずもがな・・・・総オリハルコン製だ。」


 』


 ミスリル製の900振りを打ち終わるのに10年を要してしまった。


 これは俺のレベルアップもだが、素材の確保に手間取ったからだ。


 流石にミスリル製の剣を900振り。

 素材のミスリルは希少金属。

 一度ダンジョンに潜っても数振り分しか手に入らない。


 それにヒヒイロカネだ。

 10振りと言うが、1年にひと振り分しか確保できなかった。

 そもそもこんな希少な金属、注文するなら用意しとけよ!ってなもんだ。


 エイセル親方が基本剣を打つ時は素材は依頼者からの持ち込みしか受け付けなかったのがよくわかる。


 で、オリハルコンだ。

 9振りは心材なので量はそう多くなかったとはいえ、9振りもあれば総オリハルコンソード1振り分は必要。


 これに関しては集めるのに困難を極めた。


 何せ重い。


 金の重さが水の約20倍。

 これより重い金属もあるようだが、普通に扱う金属としては恐らく金が一番重いのだろう。


 だが、オリハルコンはこれとは全くの異次元の金属と言わざるを得ない。


 何せ小指の先ほどの大きさのオリハルコンですら、片手で持つのが困難な重さなのだ。


 有り得んだろうと思うがこれが現実だ。


 剣一振り分を集めるのにダンジョンを何往復した事か。


 俺の収納能力をもってしても9振りの芯材を確保するのに5年かかった。

 重すぎるだろう。


 そう、よくある選定の剣。

 地面に突き刺さっているあれだな。

 あれを抜けるかどうかで見極めるって、これ総オリハルコンソードなら、重量でもってして持ち上がらんだろう。


 そんなえげつない選定だ。


 で、どうやったら家一軒より重い(と思われる)剣を人の力で持ち上げられるのか。


 無理。


 そう言わざるを得ないが、現実にはちゃんと方法があったりするんだよな。


【精霊】


 精霊に剣の重量を【ごにょごにょ】して貰うんだ。

 無論ごにょごにょは企業秘密だ。


 まあ精霊の加護をえれば、剣の重量はあってないようなもんだ。

 選定の剣だろうが簡単に抜ける(はず)。


 で、俺は今最後の剣を打っている。


 鍛冶レベル14をもってして困難な総オリハルコン製の剣。


 俺は寝る暇も惜しんで、排泄の時間を惜しみ1ヶ月もの間飲まず食わず、寝ずに剣に向き合った。


 まあ現実には俺が剣を研いだりしている間に誰かが俺の口の中に水や食い物を突っ込んでくれてたんだが。


 そして色々魔法で綺麗に。

 だがそのせいか俺の顔は髭だらけで見れたもんじゃねえ。

 服も1ヶ月そのままだ。

 浄化のスキルで綺麗にしてもらったようだが・・・・



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る