第79話 俺の工房の名前が決まってねえ!

 俺の名はケネト・ラーム。


 しがない鍛冶師(のつもり)さ。


 折角俺の工房が手に入ったというのに、未だ鍛冶をしていない。

 それは何故か。


「何で素材の確保からしねえといけねえ!1000振りとかの注文なら素材ぐらい用意しろよ!数が多すぎるんだよ!」

 俺はヒルデと顔を合わすたびにこうして喧嘩になってしまう。

「何だケネト、またできないと言って諦めるのか?ケネトはそんな小さな男だったのか?」


「何を言う!何で俺がこんな無茶ぶりを受けねえといけないんだ!」

 するとどうだろう、今まで突っかかってきていたヒルデが急に大人しくなった。

「ダ・・・・駄目なのか?」

 なんかおかしい。

「駄目とかそう言うんじゃねえ!」

「ケネトが受けてくれないと、我が困るのだ・・・・ケネト、受けてくれるな?」

「何でヒルデが困るんだよ!」

 駄目なのか・・・・仕方がない、そこらの連中に頼むか・・・・身体を対価に。」


 おい何か今物凄く物騒な事を言ったぞ?

「ちょっと待て!なんだよその対価は!」

「我を娶りたいと望む殿方は多い。それだけだ。」

 いやなんかおかしい。

 何で国の為の武器にこいつが犠牲にならんと駄目なんだ!

「くっ!今回だけだからな!」

「そうか、それはありがたい。我も女だ。好きな殿方に抱かれたいと思うのは当然だとは思わんか?」

「うん?何でそれを俺に聞く?だが・・・・」


 ここまで来て俺は今更ながら今回の1000振りの対価、つまり代金だな。これがどうなっているのか知らない事実に気が付いた。


「ちょっと待てヒルデ、今回の武器1000振りの対価ってなんだ?」

「そんなの決まっておろう。我がケネトの元へ降嫁する事に決まっておろう。既にケネトは依頼を受けた。まあそういう訳だ頼んだぞ。」

「ちょっと待て!なんだそれは!!聞いてねえぞ!」

「もう言った。」


 うわ、あいつそれを言って逃げやがった!


 降嫁ってなんだ?


 結局分かっていないケネトだった。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・



 依頼を受けちまったもんは仕方ねえ。だが何をするにしても素材がないと話にならん。

 仮に剣一振り鉄を10キロ使うとしてだな、1000振りだと10,000キロか。

 俺のスキルで対処できないじゃないか!


 仕方がない、こまめにダンジョンで採掘しておくか。


 するとさっきまでいなかったセシーリアちゃんがやってきた。

「ではまいりましょうかケネト様。」

「なあ、念のために確認するが、何処へ行くんだ?」

「ダンジョンに決まっていますわ。さあケネト様の準備は終わっておりますから、今すぐ出発しましょう!」


 ・・・・俺は女と言うのを到底理解出きんなあと、そう思った今日この頃。

 俺はまたもやダンジョンに向かうのだった。


あ!忘れてたぞ!俺の工房の名前が決まってねえ!

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