第71話 新・エイセル工房
俺とセシーリアちゃんは、親方がいると思われる、神聖エイセル工房(と俺が勝手に命名)を前にどうするか悩んだ。
「ケネト様、どうやら親方は新たな工房をおつくりになり、古い工房を撤去したようですね。」
「何で古い建物壊したんだ?更地だったぞ?」
「何か理由があるのかもしれませんが、以前の工房で使用していた炉をこちらに移築したのではないでしょうか?」
なるほど。
極端な話、炉さえあれば後は何とかなる。
と言うか炉だけはどうにもならねえ。
鉄砧や槌は代用がきく。
代用と言ってもそんじょそこらのでは駄目なんだが、緊急事態で応急措置的には間に合わせで何とかなる。
だが本気の鍛冶なら、本気の槌と鉄砧がいる。
金床とも言うが。
だが炉に関してはなあ・・・・高温で素材を熱する必要があるから、持ち運ぶのには無理がある。
できねえ事はねえだろうが・・・・俺の収納とか。
だが鍛冶は腰を据えてやるもんだ(と思っている)。
この新たな工房・・・・
中々に綺麗だから新築か?親方頑張ってるなあ。
いかんいかん。脱線したぞ。
「とにかく一度親方に会っておきたいな。」
「では参りましょうか。」
・・・・
・・・
・・
・
追い出された。
しかも水をかけられた。
魔法で防いだけど。
どうやら丁稚?俺より年上っぽいが。
「ふん!寝言は寝てから言え!何が親方の弟子だ!嘘つくんじゃねえ!てめえなんぞ見た事もねえ!親方の高名はモッテセン王国中にひろまっているからな、てめえみてえのが毎日のようにやってくるんだよ!そんな事に親方の時間を割くわけにはいかねえ!一昨日出直せや!」
そう言って水をぶっかけてきやがった!
そして俺は何ぞこれ?そして何から突っ込めば?
と思っていたが、セシーリアちゃんは違った。
「そこの丁稚、ケネト様に対する狼藉、事と次第によっては許しませんよ。」
「今度は美人のお姉さんか、だが無駄だ。見た目がいいからと言ってあんたらを受け入れるわけねえだろ!」
こいつ・・・・大丈夫なのか?
俺達が何の用で此処にやって来たとか一切確認してねえぞ?
仕方がない。出直すか。
「セシーリアちゃん、出直そう。」
「分かりましたわ。では親方にケネト様とセシーリアが帰ってきた、そうお伝え下さい。」
「・・・・しっし、失せろ。」
親方大丈夫なのか?
結局この日は・・・・久しぶりにセシーリアちゃんに色々教えてもらった。
特に精霊関係。
ずっと気になってたんだよな。
そしてエイセル工房、本日の終了時・・・・
「お前ら、今日は何かあったのか?」
可也の大所帯となったエイセル工房。
重要な仕事以外は弟子に任せているので、実際工房の外で何が起こっているのか親方は感心がない。
だが親方は何か気になったようだ。
「いえ、今日は3件自称弟子とか言うのが来ただけっすが、いつものように追い返しときました。」
「そうか。で、どんな奴だった?」
「3人組の奴と、夫婦みたいのと、まだ若い5人ほどの連中っす
。」
親方はまた沢山来たなと思ったが、ひとつ気になる事があった。珍しいな夫婦が来るなんて?
「珍しいな夫婦が来るとか。どんなんだった?」
「はあ・・・・男は冴えないやつで、疲れ切った顔してたんすけど、女の方がとんでもない別嬪さんだったっすよ。」
「そうか。で、何か言ってたか?」
「はあ・・・・なんか親方に・・・・何だっけ?ああそうす、女の方はせしー何とかって名乗ってたっす。男は・・・・忘れたっす。」
親方はもう10年経つしまさかなあと思ったが・・・・
実際親方には手紙が届けられたのだが、弟子の不始末で親方の手には渡っていない。
「・・・・ケネトと言わなかったか?」
弟子は戸惑った。
そんな名前だった気もするが・・・・いまいち記憶に自信のない弟子。
「違うっすよ。」
「そうか、まあいい。もしまた来たら俺に教えろ。必ずだ。」
「ほーい。」
・・・・
・・・
・・
・
翌日、再びケネトとセシーリアの姿はエイセル工房の前にあった。
今日は別の人間がいるな。そうケネトが思うとそいつと目が合った。
「ここはエイセル工房です。残念ですがエイセル親方は向こう数年は仕事が入っておりますのでお待ち頂く事になります。」
今日は仕事の依頼と思われたようだ。
「昨日エイセル親方に伝言を頼みましたが、伝わったでしょうか?」
セシーリアちゃんがそう丁稚?に質問してるがどうなんだ?たぶん親方に届いてないぞ?
「・・・・ああ、昨日の夫婦で来たという弟子志望の方でしたか。親方が・・・・少々お待ち下さい。」
あれ?
今度は引き下がったぞ。
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