第69話 今更ながらどこに向かえばいいんだ?

「ケネト様、いいんですか?」

 王都を出てセシーリアちゃんと二人っきりの旅。

 何がいいのだろう?


「何の事だ?」

「・・・・ヒルデガルド嬢の事ですわ。」

「ヒルデがどうした?あいつは王族だ。今はヘンリク国王の傍に居ないといけねえ。そして俺は親方の所で鍛冶を学ぶ。だから一緒にはいられねえ。それにだ、ヒルデの事だ、何かあればすぐにやってくるだろう?」

 何をどうしたらそうなるのか、ヒルデは俺に気があるらしい。

 だがあいつは年上だ。受け入れられないのだよ。それを言えばセシーリアちゃんもだ。

 しかし今目指しているのはセシーリアちゃんが長年住んでいた街だ。

 元居た場所に戻るだけ。

 そしてヒルデは神出鬼没だからな。振り返れば・・・・まあ今は流石にいないよな。


 そこでふと思った。今更なんだけどさ、親方の居る街の名前知らねえ。

 ついでに言えば何処に行けばいいのか、王都からどれほど距離が離れているのかもわからん。


 まあセシーリアちゃんの案内があればそのうち着くだろう?

 俺は全てセシーリアちゃんに話した。


「ケネト様は自分の意志で王都にやってきた訳ではなかったのですね・・・・ごめんなさい。」


 何でセシーリアちゃんが謝る?

「何でセシーリアちゃんが謝るのか知らねえが、セシーリアちゃんは悪くねえ。それより、親方の所にはどれぐらいで着くんだ?」


 もしかして1ヶ月かかるとか・・・・ないよな?


「馬車で2日ほどで着きますわ。早馬でしたら今日中に着きますよ。」

「急ぐ事もねえし、馬車で行くか。」


「そうですわね。では乗合馬車で行きましょう。」


 流石は王都。乗合馬車もさほど待たずに乗れた。

 10人ほど乗っていたが皆綺麗な服を身にまとっているな。

 王都だからか?


 これが冒険者だと戦闘からの帰りだと臭かったり、血で汚れていたり・・・・


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 本日の移動が終わる。もう暗くなったからな。

「何処かで宿を取りましょう。」

 セシーリアちゃんは今日の泊まる街を知っているのか、迷いなく宿に向かってくれた。


 ただ、問題が・・・・


「宿の部屋が一つしか空いていませんでした・・・・」

「そうか、仕方がねえ。そこでいいぞ。俺は床で寝る。」

「そんな訳にはまいりませんわ!」

「いや、鉱山では地面に寝てたからな。木の床でもありがてえ。」

「ケネト様、ベッドはその、ダブルサイズなので、2人で寝れますわ。私さほど大きくありませんから窮屈させません!」

 俺は見た。セシーリアちゃんの色々を。

 確かに・・・・

 不思議だ。

 服を着ていると確かに小柄だ。細いし。

 だが風呂で見たセシーリアちゃんの・・・・

 いや言うまい。

 女性の神秘(謎)だな。


 結局俺はセシーリアちゃんの腕を振り払えず、一緒に寝る事になった。


 だがここで問題発生。


 気を張っていたのか、セシーリアちゃんはベッドに入るや否やあっという間に寝てしまった・・・・


 だがこれが問題ではない。

 その後だ。


 俺が少しでも離れようとすると泣くんだ。しかも謝りながら。

 仕方がないので俺は一緒に寝た。そしてそっと背中を抱きしめてやる。

 すると安心したのか、天使の寝顔で寝てくれた。

 うぐ!その寝顔反則だぜ!


 結局俺は明るくなる頃になってようやく寝た。

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