第36話 もう一つの提案

 俺はこうか?と腹に手当てると中に吸い込まれる。うおぉ!!!何だこりゃあ?

 で、頭に思い描いていたせいか、手にキットが。

「はい、ありがとうございます。ケネト様はレベル10ですので、1024個、1024キロまでのアイテムが収納できますわ。」


 1024個?多くね?それに1024キロって。


「多いと感じるかもしれませんが、もしダンジョンに潜る事がありますと、とてもではありませんが足りませんわ。もしサイクロプスのような魔物を仕留めた場合、4体ほどで重量オーバーになってしまいますから。」


 そう言われるとそんなもんか。

「ですので提案なのですが、折角1億ゴールドある事ですし、空間魔法を拡充いたしませんか?」


「そんな事をしてどうなる?」


「レベル12まで上げていただくと、4096個、4096キロまで入りますわ。もし10億あれば・・・・8192個、8192キログラム収納可能ですわ。これですと、万が一ドラゴンを仕留めた場合でも丸ごと1頭収納可能な数値です。」


 4096キロってどうなんだ?俺が60キロとして・・・・人間が60人は入るって事か?

「なあこれは生きてるのは入らないんだよな?」


「いえ、入ります。」


「入るのかよ!」


「ただしすぐに死んでしまいますのでご注意を。ただそれを利用しての討伐もできますので。」


 うわ、えげつねえ。

「なあ、もし人間がここに入っちまったらどうなる?生きてる奴が、だが。」


「さあ、私は存じませんが、中で暫く暴れるのではないでしょうか?魔物の場合がそうですし。ただ人の場合生きている間に自ら脱出するかもしれません。」


 もしこれで空間魔法をレベル12にしてしまえばどうなるんだ?


「それと、依頼の受注に影響が出ます。運搬の依頼が受けられます。」


 運搬か。


 あ、後はあれか?荷物が少なく済む?

 じゃあポーションの容れ物。あれ手に入れたら自分でポーション作って売れるんじゃね?そして容れ物を自分で作れたらもっと。ああでももしそんな情報が一般的に知られていたら皆そうしてるか。


「考えるよ。これで終わり?」



「いえ。もう一つありますわ。回復魔法です。レベル11に致しませんかんか?」


「何で?俺そんな魔法を使うような危険な行動しないつもりなんだけど!」


「ケネト様は鍛冶師希望ですね?鍛冶をするにはその前に鉄などの素材を、つまり鉱物を確保する必要がありますが、ミスリルなどの鉱物を確保するのは至難の業。ではどうすれば?自ら採掘して確保するのが一番です。そして採掘するのは常に危険が伴います。先ほどのヘンリク様が採掘師の護衛をしていたのがそうですわ。そして実際サイクロプスに遭遇、命からがら逃げてまいりました。幸いヘンリク様は採掘師の方を脱出させる事を最優先に行動して下さったおかげで犠牲はありませんでいた。」


 なるほどそうか。で、怪我するかもだからより効果のある回復魔法が使えるように?

 ならもっと効果的なポーションを使えばいいんじゃね?


 そう思ったけど駄目らしい。


「短期的に大量のポーションを使用しますと最悪耐性ができてしまい、効き目が悪くなってしまうと報告があります。ですのでもし可能でしたら回復魔法を併用すれば効率的な・・・・」


「ちょっと待て。」


「差し出がましい事を。申し訳ありませんわ。」


「なあ、もしレベルを11にすれば、具体的にどんな感じで回復できるんだ?」


「・・・・成功率は低いですが、切断された四肢が元通りにくっつきます。そしてさらに確率は低いですが、欠損した四肢、あるいは目などが復活します。特に目は一度失明いたしますとレベル11以降の回復魔法でしか治療ができません。」


 俺は感じた。

 これだ!これだと!


「セシーリアちゃん!」


「は、はい!」


「これだよこれ!」


 隣にセシーリアちゃんがいたので思わず抱きしめてしまった。

「は、はい。【うれしい・・・・】」


「レベルを上げれば師匠の目も治るんだな!」


「あ、その、ケネト様の鍛冶の師匠様でしょうか?確かレオ・エイセル親方ですね。その、治るかどうかは分かりませんが、これ以上の悪化を阻止する事は可能かと。それと、レベル11と12の差は成功率が変化するだけですので、レベル11にしておいてですね、毎日と行かないまでも親方とお会いした時に魔力が枯渇するまで唱えれば成功しますわ。」


「素晴らしい助言ありがとう!!!!」


 セシーリアにとって至福の時。

 愛しのケネトに力いっぱい抱きしめられているのだ。

 本人は無意識なようだから、気が付くまでこうして異様・・・・


 俺はこの後自分のしでかした事に気が付くのに暫く時間を要してしまった。


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