第51話 オリハルコン
現在73層。敵はいない。
「どうだケネト、ダンジョンもいいだろう?」
ヘンリクか?ヘンリクが俺を誘ったのか?
「そう言われてもな・・・・」
「何だケネト、ダンジョンだぞダンジョン。ああそうそう、もう少しだけ進んでおこうか?この先には貴重な鉱物があってだな・・・・」
この後おっちゃんの熱い語りは続いたが、俺は・・・・
【ここ見て?】
お?心の声が何か言っているぞ?
「なあおっちゃん、これなんだ?」
壁にうっすらと見える何かなんだが分からん。少し色が違うんだよな。
指摘されなければ気が付かなかったぞ。
「話を遮るとはいい度胸・・・・ってああ!け、ケネト!どうやって気付けたんだ?」
おっちゃやんの目の色が変わった。
セシーリアちゃんもおっちゃんの態度が急変したのに驚いたのか、
「ロセアン様如何なさいましたか?」
「セシーリア、これなんだがな・・・・」
「何か違いますね?」
おっちゃんとセシーリアちゃんが俺の指摘した場所をじっと見ている。何だ?
「オリハルコンだ・・・・」
あれ?オリハルコンはダンジョンの90層以降じゃないと採掘できないんじゃ?
「なあおっちゃん、俺の記憶違いじゃなければオリハルコンって90層以降じゃないと採掘できないんじゃなかったっけ?」
「それは別のダンジョンだ。このダンジョンは74層までしか攻略の報告は無いが、オリハルコンのような素材を採掘できるダンジョンは100層まで攻略が終わっている。いや、攻略とはおかしいな。あのダンジョンは魔物が一切出ないからな、罠さえ気を付ければぶっちゃけ誰でも辿り着く。だが時間がかかり過ぎる上に、色々な制限があってな、貴重な鉱物の採掘もさほどできねえんだよ。」
新たな事実!
何たる事だ。
暇そうにしているヒルダに聞いてみよう。
おっちゃんとセシーリアちゃんは目の前の素材?に御執心のようだしな。
「なあ、魔物が出ないダンジョンってあるのか?」
「あるな。10層までのダンジョンもある。だが今まで発見されたダンジョンの最深層は100層だ。例外はない。だからこのダンジョンも100層までと思われている。」
それも初めて聞くぞ?
ちょっと前は別の事言ってたじゃないか!
「なあ、ダンジョンて何なんだ?」
「私に聞くな。それよりケネト、私とその、もっと『掘るぞ!』」
「うわ!なんだよおっちゃん!あ、なんだった?」
「いや、後でいい・・・・」
ヒルデの奴、何を言いかけたんだ?分からん。
それよりおっちゃんが暴走している。
「掘るってどうすんぢょ?」
うげ!なんだ?俺の言葉を遮るのは・・・セシーリアちゃんか。
「さあケネト様、魔法でやっちゃいますわ!」
俺とした事が、セシーリアちゃんが無意識にだろうが俺の腕を取ってくるからその感触に思わず気が動転しちまったぜ!
「なあ魔法ってどうするんだ?」
「土魔法ですわ。土魔法で目的の鉱物の周囲を全て除去してしまえば、目的の鉱物だけその場に取り残されますから、後は拾うだけですわ。」
「成程それは・・・・簡単なのか?」
「予め周囲を鑑定してしまえば後は簡単ですわ。」
そうなのか?俺はよくわからんが違いのある場所を触ったんだが、
【セシーリア嬢の手を取り、そこで魔力を流す!】
はへ?
「セシーリアちゃん、手を出してくれ。」
「は、はい・・・・」
俺はセシーリアちゃんの小さな手を握ろうとしたら、セシーリアちゃんが指を絡ませてきやがった!
まあいいか。
「ま、魔力を流すぞ?」
「ケネト様は採掘がお出来に?」
「確かレベル10だが関係ないぞ?土魔法だろ?」
「ええ、そうですが、どうしてお分かりに?」
「心に従がったまで!」
「ケネト様素敵!」
【そのままセシーリア嬢の心も獲得とかスケコマシですね。それは置いておいて今度はもう一人のお嬢さんに抱き着いてもらいなさい。】
もう一人って・・・・ヴィオラさんじゃないよな?ヒルデだよな・・・・
「ヒルデ、俺の背に張り付いてくれ。」
「うん?何故だ?」
「俺の心がそう言っているんだ!」
「そ、そうか?それならば・・・・抱きっ!」
「あ、ずるいですわ!私も負けられません!」
・・・・採掘しているはずなんだが何で2人は抱き着いてくるんだ?あ?だが何だか魔力の流れがよくなったぞ?
【本当は結ばれた方がいいのですが、衆目がありますからね。】
・・・・何と結ばれるんだ?
【集中集中。もうすぐ完了ですわ。】
お、心の声の指摘通りに終わったぞ?
で・・・・あれ?何だか2人の抱き着く力が尋常じゃないぞ?
「ケ、ケネト様これは・・・・気持ちイイですわ・・・・」
「立ってられない・・・・こんな所で駄目え!」
??2人は急に力が抜けたようにその場に座り込んだぞ?
まあいい。
お、これがオリハルコンか?俺は早速地面に取り残された色の違う鉱物を拾い上げる。
「これがオリハルコン?何だか妙に軽いんだが、おっちゃんどうなんだ?」
「あ?どういう事だ?その大きさであれば持ち上げる事なんてできないはずだぞ?」
「だが俺はこうして持っているんだが?」
「・・・・ケネト、床に置いてみろ。」
俺はおっちゃんの指摘に従い床に置いてみる。
あ、手が滑った。落とした。
そして落下の衝撃?すごい音と共に地面が揺れた。
「うわ!おいケネトどうした?」
「またおまえか!いい加減にしろ!」
ヘンリクとヴィオラさんの2人は周囲を探索していたらしい。
「これがオリハルコン?ずいぶん大きな塊だな・・・・って動かん!」
「どうしたヘンリク?」
「ああ、ロセアンさん。これびくともしない。」
「これが本物のオリハルコンならそうだろうが、さっきケネトは軽々と持ち上げて・・・・って確かに動かん!」
いや色々おかしいだろう?
「そんな事ないだろう?ほらこうして・・・・」
片手で簡単に持ち上がる。
握りこぶし2つ分ぐらいの大きさ。
これって細長くすれば剣の芯材として使えるんじゃ?
ミスリルでサンドすればいいとこどりの剣ができる!
いや待て本体がミスリルで、オリハルコンでコーティングなんてのはどうなんだ?
極限まで薄くしたオリハルコン・・・・夢があるぜ!
ミスリルとオリハルコンを組み合わせたのが伝説の聖剣という話も聞く。尤も本物の聖剣を誰も目にした事がないって話だから色々盛った話なんだろうがな。
【カバンにお仕舞いなさいな。】
忘れてたぜ!
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