第50話 70層が目標らしい
その後色々問題はあったが、ダンジョンの攻略は思いのほか順調に進み、50層以降は1日1層のペースで進んでいった。
「ケネト、お前には何かが憑いているのか?」
唐突に今回のリーダー、ヘンリクがそんな事を俺に聞いてくるが、
「俺もわからん。だが何か知らんが時々声みたいなのが聞こえるな。」
するとそれに反応したのがおっちゃんだ。
「何?ケネトよ、声とは何だ?」
「あ?声って言ってもなあ、心の声だぞきっと。」
「心の声って・・・・そういやあケネトの投擲した剣とか、有り得ねえ軌跡を描いてたしなあ。それに勝手に戻る?あの剣にはそんな機能はないだろう?」
「これはやはり精霊が憑いているとしか考えられないな。」
ヘンリクとおっちゃんが好き勝手俺の事を言っている。
「なあ、どうでもいいが何で憑いているんだ?」
「・・・・」
「・・・・」
だんまりかよ。
「それよりもうすぐ70層だが、70層が一応の目安って以前聞いた気がするんだが、70層クリアしたらどうするんだ?」
話題を強引に変えやがった。
因みに今は65層を攻略し、休憩所で休んでいる。
何故か60層以降は男女別の温泉が完備されているという謎仕様だ。
そして今、3人は裸の付き合いだ。
無論健全な。
しかし70層とか凄いんだが、何層まであるんだ?
「なあ、ここって何層まであるんだ?」
「何だケネト、そんな事も知らないのか?」
「ああダンジョンは初めてだし、今まで関わる機会もなかったしな。」
「100層と言われている。」
「言われている?」
「ああ、過去に75層まで行った奴らがいるらしいが、ボス部屋に行く前に引き返したらしいからな。それ以降の情報はない。」
「・・・・じゃあ何で100層ってわかるんだ?」
「他のダンジョンを参考にした推測だな。そしてダンジョンの地理的要因と、魔素の関連もあって恐らく100層で間違いはない。」
よくわからんがそう言うものらしい。
・・・・
・・・
・・
・
男の湯なんてどうでもいいだろ?だからと言って女性陣のはノータッチだ。
というか遅すぎる。
俺達男どもはさっさと温泉を出たんだが、待てど暮らせど女どもは来ない。
すっかり待ちくたびれて先に寝る事になったんだが・・・・
「ケネト様、もうお休みになられたのですか?」
「ケネトのくせに先に寝るとは・・・・隣で寝よう。」
「あ!ずるいですわ!」
「セシーリアはそっちで寝ればいい。私はこっちで。」
「まあ流石はヒルデ様!ではよい夢を・・・・」
・・・・
・・・
・・
・
俺はうなされていた。
何だか胸が苦しくなった気がしたのだが、全く身動きができないこの状況。
金縛りか?
妙にいい匂いが俺の五感を刺激し、そして俺を苦しめている圧迫感は何だか触り心地がいい。
何ぞこれ?
俺は意を決し、両手を強引に動かす。
「あん♡」
「いやん♡」
・・・・何だ今のは?
俺は自由になった両手で目の前の追いかぶさっている何かをはがしていく。
ヒルデとセシーリアちゃんだった。
2人はすやすやと寝ている。
そして俺は妙な匂いで頭がクラクラになっており、どうやら2人を抱きしめて二度寝をしてしまったらしい。
【うれしい・・・・】
【しあわせ・・・・】
・・・・
・・・
・・
・
まったくもって疲れがとれていない気がするのは何でだ?
そして何だか全身が汗だくなんだが。
そして・・・・あれ?汗臭くないぞ?
というかなんで俺の身体はいい匂いがしているんだ?
「おはよう御座いますケネト様。」
「寝坊助ケネト。食事の用意ができているぞ。」
セシーリアちゃんとヒルデに起こされた。俺はずいぶん遅くまで寝ていたらしい。
だがそんなに寝ていたのなら何でこんなに疲れが?
【気にしたら負けですよ。】
相変わらず俺は負けるのか?既に気にしているんだが。そして何に負けるんだ?
俺達は遅めの食事をとり、出発する事に。だがここで再び?ヴィオラさんが激おこぷんぷんだった。生理か?
「そこ!今よからぬ事を考えていただろう?」
仰る通りで。
「め、滅相もございませ・・・ってなんでみんな俺の周囲から離れるんだ?」
どうやら今回のダンジョンアタックで皆学習したようだ。
【触らぬヴィオラに祟りなし】
だが俺がターゲットではどうしようもないだろう?
この後1週間かけ70層をクリアした。
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