第49話 あれから数日掛けて50層到達

 20層を超えてからは、1日5層ぐらいのペースで進んでいった気がする。

 何せ俺は周囲に守られ、何の気まぐれか時々安全が約束されている時だけ戦闘に参加している気がする。

 そう、俺はまともに前衛で戦っていないんだ。

 確かに剣を持って戦っている。

 だがそれも・・・・

【今です!】


 ハッ!


 心に謎の声が届いた瞬間、俺はつい剣を投擲・・・・つまり剣を魔物に向かって投げてしまうんだ。

 恐ろしや心の声!だがその声に従がえば間違いがないのが凄い所だ。

「きゃあケネトさまあ!流石ですわあ!」


 とか言いながらセシーリアちゃんは常に俺にべったり。

「何が流石なんだよ!」

 俺はセシーリアちゃんが何に流石と言っているのか理解できないので聞いてみた。

「だってケネト様はあ、その気難しい剣を使いこなしていますもの。」

 単に投げているだけだぞ。そして気が付けば手に戻るという謎仕様だしな。

「ケネト、ほらドロップアイテム。」

 そう言って俺にヒルデがドロップアイテムを持ってくる。

「おお!ヒルデの癖に気が利くじゃねえか!」

 俺はそう言って思わず手ごとアイテムを受け取ってしまった。

「それは私の手なんだが。だがけ、ケネトがそう思うなら私の全てを差し出そう。受け取れ。」

 いやなんかおかしい。

「受け取れってどうやって受け取ればいいんだよ!」

「仕方ない。で我慢するとしよう。」

 ヒルデはまたもや訳の分からん事を言って俺に抱き着いてくる。

「あ!ずるいです!私も!!」


 何故にセシーリアちゃんまで?


 俺は剣が手元に戻るまで2人にサンドされていた。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


「なあヒルデ、俺は言ったよな?」

「セシーリア、ここはダンジョンだ。そしてケネトにダンジョンの何たるかを覚えてもらう・・・・言いたい事は分かるだろうな?」

 ヘンリクとおっちゃんがそれぞれヒルデとセシーリアちゃんに説教をしていた。

 無論ダンジョンの固い地面に正座で、だ。

 あれ足が痛くなるぞ?


「兄者すまない。何故かケネトを見ると感情が抑えられないんだ。」

「ロセアン様、私は真剣なんです!見逃して下さい!!」

 ヒルデとセシーリアちゃんが土下座で訳の分からん事を訴えている。


 そして俺同様クールなお姉さん、誰だっけ?

「あのなケネト、もうそれなりに一緒にダンジョンでパーティ組んでいるんだ。パーティメンバーの名前ぐらい覚えておくんだな。ヴィオラ・ピーア・ノシュテット。念押しするがヴィオラと呼んでくれと以前も言ったはずだ。念押しするがヘンリクの嫁ではない!単なる親同士で勝手に決めた婚約者だ。そして・・・・お前たち青春だねえ!若・・・・見た目が若いっていいじゃないか!」


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・



 時々脱線するが俺はこのメンツで一番レベルが低い。というかレベル差がありすぎる。


 ここ数日で感じた事は、どうやら今回のこのダンジョン探索、単に俺にダンジョンを攻略させたかっただけのようだ。

 元々このメンツ、俺以外はそれなりに下まで潜った事があるらしい。

 そして俺はと言えば、ヘンリク達の意図に沿うのか分からんが、ひたすら剣を投げて魔物を仕留めている。


 時々おっちゃんのため息が聞こえるが、それは俺の戦闘スタイルのせいなのか、常に俺の横に張り付いている2人の美女(残念なのは2人が年上という事だ!)に対してなのか。


 そして気が付けば50層のボスを仕留めたらしい。


 なんか先のボス部屋、ボスの数が多かった気がしてたんだよな!そして・・・・残念ながらこのメンツではボスが強かったかどうかわからん。

 そして親方から貰ったこの剣の威力がありすぎて、ぶっちゃけ俺の実力で魔物を、そしてボスを仕留めているのかもわからん。


 これは俺の為になっているのか?

【問題いありませんわ。】


 俺の心は問題ないらしい。

 え?違うって?


 そして50層のボス部屋を攻略し、先に進むと、そう、ボス部屋を攻略後に必ず建造物があるんだ。

 上層では比較的冒険者が多いからあまり利用しなかったが、50層ともなれば殆ど冒険者を見かけない。

 今も俺達以外にはいない。


 で・・・・この建造物には風呂がある。

 それも温泉だ!


 俺はヘンリクとおっちゃんを伴い風呂へ。

 何故か男女別であるんだよな。


 で、俺は気持ちよく過ごしているとどうやらヘンリクとおっちゃんは長湯が苦手なようで、

「ケネト、先に上がっとくぜ!」

「長湯しすぎてのぼせるんじゃないぞ!」

 と言いつつさっさと出て行った。


 気持ちいいのに残念な2人だ。


 そして俺はこの風呂場の奥に、どうやら露天風呂らしいのががあるのに気が付いた。

 湯気で見えにくいが何か入り口があるな。

 何か書いてあるんだが湯気のせいで読めん。

 まあいい。俺はその入り口を開けると、奥に進む。


 おお!やっぱり露天じゃないか!


 ダンジョンで露天とはいかに!と思わないでもないが、何故か星空が見える。

 今は夜なのか?


 まあ誰もいないのを確認し、俺は露天で半ば寝るようにゆっくり温泉を満喫する。


 だが俺は寝ていたのか?

 何だか女の声がする気がした。


 そして両隣りに違和感が。


「・・・・なあ、何でヒルデとセシーリアちゃんがここに居るんだよ。」

「ケネトこそ。」

「これは嬉しい誤算。」

 2人はダンジョンでいつもしているように俺に密着・・・・って2人とも裸じゃないか!


 色々見てはいけない何かを見た気がした俺は・・・・


「きゃあケネト!しっかり!」


「駄目よヒルデさん。完全にのぼせちゃってますわ!」

どどどどうすれば!」

「と、取り敢えず脱衣所へ連れていきましょう。」


「わ、わかった・・・・こ、これが男の人の・・・・」

「・・・・私こう見えてエルフですのでそれなりに長生きを・・・・でも、男の人の見るの初めてなんです・・・・」


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 俺は気が付けば知らない場所に寝かされていた。


 そしておっちゃんがため息と共に、

「なあケネト、俺は言ったよな?」

「・・・・俺は天国にいたのか?何だか裸の女に色々と・・・・」

「きゃあケネト!私は何も!」

「そ、そうよんだから!」


 俺の身に何があったんだ?

 それにってどういう事だ?




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