第48話 色々おかしいんだが
「ほう、変わった付与だな。」
おっちゃんが俺のこの戻って来た剣を見てそう呟くんだが、これは俺が打ったんじゃねえぞ?
「エイセル親方の打った剣だったな。しかしなんだ、投げても念じれば戻ってくるって・・・・他には何か付与されてねえのか?」
おっちゃんが怖い。
「何も聞いてねえ。なあヘンリク、親方この剣の事なんか言ってなかったか?」
ヘンリクは首を傾げ、
「単にケネトに渡してくれって。忙しいからと剣を俺に託すや否や、奥に戻って剣を打ってたぞ。それにだ、すげえ人だかりだったからな。流石は国宝級の鍛冶師だ。」
じゃあ剣の性能は親方に聞かねえとわからないって事か?
いやあの親方の事だ。敢えて何も言わなかったんだろうな。
つまり俺が親方以上の鍛冶師を目指すなら、この剣ぐらい使いこなせって事か?
まあ今はいい。
それよりだ、俺がみじめに地面にはいつくばっていたら、何故かヒルデが覆いかぶさってきやがった。
俺は起きたいんだ。
「け、怪我はないか?」
「今あんたに意識を刈られかけてるんだが。」
俺はヒルデが覆いかぶさってきた事で息が苦しくなって・・・・
気が付けばまたもやセシーリアちゃんが俺に抱き着いていやがる。
当然ながらおっちゃんはあきれ顔。
「いい加減過保護はやめてやれ。」
「そうは言いますけれど、万が一大怪我をしていたらどうするつもりですか?」
「ちょっと待て。ここはダンジョンだ。そしてこいつは自爆したんだ。もう少し・・・・いやいい。」
おっちゃん待ってくれ!
この後セシーリアちゃんが満足するまで俺は抱かれ続けていた。
「ケネト成分を補充しました!」
なんだそのケネト成分って。
俺はすっかり元気になったので、またダンジョン内を歩いていく。
今度は魔物が現れたらこけないぞ!
で、目の前に強そうな魔物がいたので今度はちゃんと剣を投げてみた。
さっきのようなすっぽ抜けではない剣の投擲。
すると剣は目の前の魔物をあっさり貫通し・・・・
奥に消えていった。
おい!いくらなんでもあんなに遠くに飛ばすような勢いじゃないはず。どうなってるんだ?
「流石ですねえ。勿論剣がですよ?」
・・・・ヘンリクの嫁は毒舌なのか?
あんたらはレベル300越えなんだろ?
俺は2桁なんだ。
まだまだ剣に対しては不相応な実力ってのは分かっているんだ。
だからこそ、こうしてレベルを上げようとだな・・・・
「ケ、ケネト、剣を探しに行かないか?敢えて手元に戻そうと考えず確認しに行こうではないか。」
どうやら先ほどヘンリクにこってり絞られたようで、まともなヒルデだ。
俺はそう言われ、剣の向かった方に進んでいく。
勿論ドロップアイテムは回収していくのは忘れないが。
そして道中結構なドロップアイテムが落ちていたのに驚いた。
最初は直線で飛んでいったはず。
だが目の前には広範囲にドロップアイテムが落ちている。
これはつまり剣が直線ではなく回転して魔物を仕留めたのか?それともわざわざ魔物に向かって飛んでいったのか?
わからん。
そんな事を思いながら進んでいると、誰かがこちらに歩いてくる気がした。
しかも俺の剣を持って。
だがそう見えたのは一瞬で、またもや剣は俺の方に飛んでくる。
おかしい!今俺は剣を戻したいと念じていなかったはず!
だがこうして俺は剣を再び手にしている。
【そのうち見えるようになりますよ。】
そうなのか?・・・・ってあれ?今誰か何か言ったか?
【では次は剣に魔力を込めて振ってみて下さい。】
魔力を込めるってどうすんだ?ってあれ?今誰か何か言ったか?
「ケネト様どうしましたか?」
セシーリアちゃんがまた様付けで呼んでくる。
「なあ、何でいまだに様付けなんだ?」
「なんとなく?」
「それより今さっき何か助言してくれた?」
「え?どうしましたか?もしかして私が恋しくなりましたか?いつでもいいですよ?」
「なあ、セシーリアちゃんを仮に恋しくなったとしてだ、何がいつでもいいんだ?」
「わ!それを女性に聞いちゃいますか?」
「聞いちゃいけなかったのか?」
「だって・・・・恥ずかしい・・・・」
「なあセシーリアちゃん、ここはダンジョンだ。あんた頭の中お花畑なのか?」
「ひ、ひどい・・・・いくらなんでも・・・・うわーん・・・・」
セシーリアちゃんは走ってどっかに行っちまった。
「おい待てあぶねえぞ!」
俺はこんな事で万が一があると困るので追いかけた。
だが結局なんてことはなく、手を差し伸べたら素直に握り返してきたので、仕方がないから手を繋いでみんなの所に戻った。
おっちゃんはにやけているし、ヘンリクもだな。
若干ヒルデがご機嫌斜めだが気にしないでおこう。
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