第46話 ダンジョンへ
「遅すぎますわ!」
いきなり怒られた。というか誰?
「紹介しよう。今回ダンジョンに潜る最後の一人、ヴィオラ・ピーア・ノシュテット。俺の嫁ぐぼべらげ!」
ヘンリクが俺に説明しようとしてくれたが、ヘンリクの顔に見事な拳が。腰の入ったいい拳だ。
「ちょっとそこ、勝手に嫁にしないで下さらないかしら?ごめんなさいね。ええと貴方がケネトね?私ヴィオラ・ピーア・ノシュテットという名前なんだけど、長いわよね。だからヴィオラって呼んでよね!」
・・・・この女性はヘンリクの嫁なのか?そして実に腰の入ったいい拳だった。拳闘士か?だが衣装を見るとそんな風には見えねえが。
「こちらこそよろしく!!そうなのか!ヘンリクにはこんな素敵な嫁さんがいたんだな!羨ましいぜ!」
「ちょっとケネト!私を勝手に嫁にしないで下さらないかしらって言ったわよね?ヘンリクの嫁じゃないから!」
「ヘンリクは嫁って言いかけてたぞ?」
「違うから!親同士で決めた事だから!ただの婚約よ?分かったわね。」
俺はさっぱり理解できなかった。何で反対してるんだ?
「ヴィオラ、待たせてすまないね。ケネトがどうしても師匠の所に行きたかったから時間がかかってしまったんだ。」
「師匠ってあのエイセル親方ね?目が殆ど見えなくなっていたのが昨日突然治ったって街中大騒ぎよ?何せレベル13の鍛冶師ですもの。この国でレベル13の鍛冶師は彼だけですものね。分かりました。では早速向かいましょう。」
いやいやそれはおかしい。このヴィオラって人、色々大丈夫なのか?
「念の為に言っておきますが、ヘンリク様より私の方がレベルは上ですからね。」
「そうなのか、ならいい。」
やはりこのヴィオラって女はおかしい。
俺の心を読めるようだ。気を付けよう。それに人の女に手を出すほど俺は器用じゃないからな。
そしてヘンリクと呼び捨てにしたり、様付けしたりしているが何でだ?
さていざダンジョンに入ろうとしがが、ダンジョンってどうなってるんだ?
俺さっぱり知らねえんだよな。
みんながサクッと入っていく中、俺は取り残された。
「ケネト様どうしましたか?」
・・・・人の前ではギルドの受付の時の癖なのか、セシーリアちゃんは何故かケネト様と様付けしてくる。
「なあ、ケネトでいいぞ。」
「そ、それは、つまり私もいよいよケネト様の伴侶いたたたた、ちょっとヒルデ何をするのよ!」
「抜け駆けは駄目。」
何でここにヒルデがいるんだ?あいつヘンリクの後にダンジョンに入ったはずなんだが。
「そうね。失礼したわ。あ、それと・・・・本当にケネトと呼び捨てでいいの?」
「ああ、流石にギルドではセシーリアちゃんも立場があるから様付けでもいいけどさ、ギルド以外なら呼び捨てでいいんじゃねえの?」
俺は特に深く考えずにそう言ったのだが、何故かセシーリアちゃんが目に涙を浮かべ、泣き出した。いやいや何で泣くの?
「う、嬉しい・・・・私幸せになります。」
うん?ちょっと待て今変な事を言ったんじゃねえか?何で今ので幸せになりますなんだ?
「おいなんかおかしいぞ!俺は単に呼び捨てでいいと言っただけだ!それ以外に意味はねえ!」
「まあケネトったら照れちゃって。そんなケネトも素敵よ?」
・・・・セシーリアちゃんが壊れた。いや最初から壊れてたのか?相変わらずよくわからん。
「あ、ケネト、私が案内するわ。はぐれるといけないから手を握っててね?」
俺はお子様か?
「あ、ああわかった・・・・」
何度も言うがケネトは年上は交際する女性として見ていない。
因みにケネトにとってセシーリアは姉ポジション。
だがセシーリアは既にケネトを伴侶とすべく動き出している。
そんなケネトにセシーリアの想いは通じるのか?
それにもう一人、ヒルデガルトと言う強力なライバルの存在。
頑張れセシーリアちゃん。前途は多難だが。
・・・・
・・・
・・
・
俺はダンジョンというのを勘違いしていたようだ。
俺は洞窟のような中に入るのかと思っていた。
暗くてじめじめして狭くてかび臭くて・・・・
明かりがなければ一寸先にも進めないような。
だがダンジョンの中はきれいで、快適で、広かった。
何で?
「何だケネト、ダンジョンを知らないのか?」
ヘンリクがそんな事を言うが、俺はダンジョンに行った事がないんだよ!
そんな俺の事を知ってか知らずか、ヘンリクは説明を続ける。
「いいかケネト、ダンジョンってのはな、魔素が濃い場所に出現するんだ。そしてその魔素は地下深くにある。そしてだ、強い魔物は魔素の濃い場所を好む。というより魔物は全てそうだ。だが真に強い魔物は魔素を独占したい。当然弱い魔物も濃い魔素の所で活動したい。そこで起こる事と言えば縄張り問題だ。より強い個体は魔素の濃い場所に住み着く。そしてその魔物に敗れた他の魔物はそれでも何とか濃い魔素の場所を縄張りにしようとする。そうなると残った中から強い奴が魔素の濃い場所に居残れる。そうして弱い魔物はどんどん上に向かう訳だ。そうなると魔物ってのはギリギリ残れる場所を何とか縄張りにするんだな。だからダンジョンの低層は弱い魔物しかいねえ。そして下に潜れば潜るほど強い魔物が現れるって寸法だ。」
・・・・説明が長い!俺眠くなったぞ?と言うかいかん涎が・・・・それに何でこんな説明をするんだ?
「だがな、例外がある。魔物の暴走、つまりスタンピードだ。これは何らかの原因で周囲の魔素が暴走し、それを起因としてダンジョンの魔物がどんどん地上に向かうという異常事態が発生する。ぶっちゃけ強い魔物は濃い魔素が必須だから、地上に出ても長い事活動できないんだ・・・・っておいケネト聞いてるか?」
俺はセシーリアちゃんに抱きしめられたまま寝落ちしていたようだ。
そしてヒルダが俺の涎を拭いてくれていた・・・・よな?
何故か余計にべたべたになった気がするが気のせいだよな?
まあいい。
俺達は順調に進んでいった。
最初の10層は魔物が弱かった。
このダンジョンは10層ごとにボスがいるらしいが、このメンバーではボスと言えども瞬殺。
なあ、なんで俺に指名依頼があったんだ?俺必要なくね?
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