第45話 親方に挨拶

「ちょっと待ってくれ!せめて親方の確認をしたい!」

 親方の目ってどうなんだ?

 治療したけど本当に治ったのか確認しとかねえとな。


「あんちゃんが治したんだってな。今親方の所に向かうのはやめた方が良いと思うぞ。」


「おっちゃん何でだよ!」


「親方の本気の仕事、それを見ちまった顧客に囲まれちまって近づけねえぞ。」

「それがどうした!俺は行く!」


 俺はおっちゃんの制止を振り切り親方の工房へ向かった。


 そしてわかった。

 親方の工房の周囲に凄まじい人だかりを見たからだ。

 そしてひたすら鉄を打つ音がする。

 そして音なんだが、明らかに今までと違う音がしている。

 何て表現したらいいのかわらないが、確かに違う。


 親方は特別な注文以外は鉄を打って武器を作る。

 鉄と言っても色々あるから、ひっくるめて鉄と言っているが、品質のいい鉄と粗悪なのは雲泥の差がある。だが親方の手にかかればどんな粗悪な素材でも一級品が出来上がる。

 だがそれはあくまで言われた仕事をしているだけ。


 俺が親方から貰った武器には親方を感じる。

 親方が持てる全てをつぎ込んでくれたのがよくわかる。


「ほれ見ろ。悪い事は言わねえ。親方にはダンジョンの後でもいいだろう。」


 おっちゃんがそんな事を言うが、それでは駄目だ。

 そう思った俺の気持ちが通じたのか、親方の作業が終わった。

 すると暫くして一人の人間が何かを大事に抱えて離れていくのが見えた。


 この隙に俺は親方の所へ突撃をした。


「親方!目はちゃんと見えてますか!」

 親方は俺に気が付いたようだ。

 こっちに向かってくる。

「おうケネト、ばっちりだ!それよりお前ダンジョンに行くんだろう?」


「ええ、そうなんです。本当に目はちゃんと?」


「お前もしつこいな。かつてないほど見えるぞ。困るぐらいだがな、うはははは!」


 そんな楽しそうな親方を俺は今まで見た事がなかったので、なるほど本当らしいと安心した。

「それはよかった。ダンジョンから戻ったらもう一度見ます。」

「ああ、そうしてくれ。それとここでは言えねえが、俺の気持ちはヘンリク殿に託したが受け取ったか?」


「勿論です!」

「お前があれ以上のを打てるまではあれを使え。それとダンジョンから戻ってきたら、お前には俺謹製の【槌】と【鉄砧】を用意してやる。それとな、俺の手順は一通り見せたはずだ。後はお前の気持ち次第だ。気持ち次第で渡したようなのが打てるようになるはずだ。さあ行け。」


 親方は工房の奥に引っ込んでしまった。

 俺は親方の背中を見送ったが、今まであんな生き生きとした親方の背中は見た事がない。



 そして俺はダンジョンに向かった。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・

 ダンジョンってどこにあるんだっけ?

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