第23話 セシーリア嬢とデート?

 俺は何故かセシーリアという受付の女と2人っきりだ。

 そして更に何故何故なのだが、セシーリア嬢は俺の腕に自らの腕を絡めて平原を歩いている。


 やはり俺にはモテ期が来ていたんだ!

 これは絶対俺に気がある!そうじゃなければこんな超絶美女、しかも胸は控えめだがすらっとした、あり得ないほど腰高の同じ人類とは到底思えない(彼女はエルフの血が入っているので同じ人類ではない)。

 そして一方の俺だが、実際魅力の数値は絶望的に低いし、顔の造りは平凡そのものだぞ、多分。

 背も低い。

 しかも目の前の超絶美女は・・・・俺より背が高い。

 しかしそんな事はどうでもいいのだ!

 相手がそれでいいと思っているんだ!そうであれば身長が低い事は決して欠点にはならない!

 ただ男のプライドが変に邪魔をしなければ、だ。

 しかし絶望的な事実がある・・・・相手は年上だ。

 


 そして気が付けば周囲には何もない場所にやってきた。正確には低木がちらちらと生えているのだが、それだけだ。


「ではケネト様、今から魔法の実技の講義をいたしますわ。」


 俺のモテ期は勘違いだった。

 否、最初から存在していなかった。

 こんな超絶美女が俺を好きになる?

 夢は夢だった・・・・

 それにあれだ、相手は年上だ。


「もしもしー?」


 は!いかん!ここは集中しないと!


「ええと今からどうするんだ?」


「ふふっ♪で・え・と♪と言いたい所だけれど、貴方火魔法を取得したでしょう?10万ゴールドって高いわよね?どうしてかわかるかしら?」


「い、いや分からん。」


 その、顔が近い!それ絶対勘違いするぞ!


「今すぐ魔法は使えるでしょうが、正確な魔力の制御をしないと暴発しますからね。その辺りの講習代も含めているのよ?」


 いかん、そんなに近いとあんたの香りで頭がくらくらしてしまう!

 駄目だこの女!

 魔性の女だ!危険な香りが・・・・

「聞いていますか?」


「あんたの香りにやられて聞いていない!」



「え?か、香り?私って臭うかしら?毎日念入りに清めて気を付けているのだけれど。」


「いやそこは安心していい。雄を誘うメスの匂いだ。それも極上の。」


「ケネト様もそのつもりで私の事を考えていたのかしら?」


 何か知らんが急に空気が冷えた。ぅ!対応を間違えたか?

 だがまだ挽回できるはずだ!

「何を言っているか知らんが、俺は女が苦手だ!だからあんたみたいな女が俺に近づいてきたら、俺はどうしたらいいか分からんし、頭が混乱する。俺も男だ、あんたの事を性的に見ていないか?と言われて見ていないとは言えねえ。実際あんたは俺から見て理想的な女だし魅力の塊だ!だが俺は今あんたから魔法を学ぶためにこうしている!もし俺の態度が気に入らねえならそう言ってくれ!」

 言ってやった!言い切ったぞ!


「え?そ、そう?そうなの?私は理想?きゃ、キャアア!!!!」

 暫し暴走中

  ・

  ・

  ・

  ・


「は!ごめんなさいね!普段私に近づく男は下心だけだから、ケネト様のような真摯な人はいないのよ?」


 俺別に真摯じゃないぞ?無論紳士でもない。だが目の前の女は俺を紳士と思ったようだ。まあもしかしたらワンちゃんあるかもだ、そのままそう思わせておこう。


 で、その後何とか落ち着いたセシーリアちゃん。そう、目の前の女は俺より年上だが、こうしてみると何だかかわいく見えてくるから不思議だ。

「落ち着けセシーリアちゃん。いいか、あんたは俺に火魔法の何たるかを教える。そして俺は学ぶ。オーケー?」


「落ち着け私。目の前に集中よ!ふーふー・・・・どうしてこうなっちゃったんだろう?こんな事はここ数年一度もなかったのに!は!駄目!集中集中!」


 ようやく落ち着きを取り戻したセシーリアちゃんに俺は魔法を教えてもらった。

 最初は煙しか出なかったが、そのうち指先に小さな炎が出現した。

 そして言われるまま魔力を指先に集中したら集中しすぎて、あり得ないほどでかい火の玉を作り上げ、近くの低木に放ったら、地面に大きなクレーターが出来て思いっきり怒られた。

 どうやら魔力の制御を間違ったようで、俺は魔力が一気に消費された状態になり、その場に倒れた。

 魔力の枯渇だ。


 そして気が付けば再びセシーリアちゃんの太腿が。


「ごめんなさい。まさか2度も気絶させてしまうなんて。」


 俺はまだ起き上がれない。

 身体に力が入らないからだ。眼もあけられない。


「このままではなんですし、今はポーションも持っていない。そして相手は男、私は女。ではどうすれば?流石に性行為は駄目だけど、キスなら・・・・できるかしら上手く。ケネト様、ごめんなさいね、私みたいのにキスされたってわかれば後で怒るかもだけど、ポーションがないので魔力を分け与えるのはこうして口か性器で接触する必要があるの。」


 気が付けば柔らかい感触を唇に感じ、徐々に体に力が戻ってくるのを感じた。


「う・・・・うう・・・・」

 やっと少し動けそうになった。

 そうしたら残念だが柔らかな感触は無くなった。


「き、気が付いた?」

「あ、ああ?俺は気を失っていたのか?」


「ごめんなさいね。私の指導が至らなかったために、ケネト様の魔力が暴走、ケネト様は魔力枯渇の状態になってしまったの。」


 俺は暫く休んで、何とか力が戻ったので、再び教えてもらった。

 その後もやけに俺との距離が近かったセシーリアちゃんだが、夕暮れ前には何とか魔法の制御ができるようになった。


 火魔法、便利だな。

 そして気が付いた。いつの間にか俺の扱いがあんたからケネト様に格上げされている事に。

 そして帰りは何故かセシーリアちゃんと手を繋いでいる。

「か、勘違いしないでよね!また倒れたら厄介だからこうして手を繋いでいるのよ!」


 彼女の言い分を信じるなら、こうして手を繋いでいるだけで魔力を俺に流し込めるらしい。

 ただその量は微々たるものなので、気休めなんだとか。


「じゃあ次は1週間後に来なさい。それまでには魔素があんたの身体に馴染むし、新たな魔法を教えてあげるわよ!」

 どうやらツンデレになると俺の扱いはあんたになるらしい。

 女って難しいな。

 明らかに年上のはずなんだけど、どう接してもその精神は俺より年下だぞ?

 冒険者ギルドでの受付の態度からは想像もできんが。

 うーん、これがギャップ萌えというやつか。

 そして今後俺がダンジョンに入るまでの僅かな期間だが、セシーリア嬢による毎週の魔法講座が始まったのだった。


 俺は知らなかったが、彼女は元S級冒険者。当時最強の魔術師だったらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る