第14話 難民としての暮らしぶり
俺は今日、この生活からおさらばした。
しかしここの生活が悪かった訳ではない。
俺達は2ヶ月前この地に辿り着いたが、いきなり1000人もの人間をそうそう簡単に寝泊りできるだけの場所を用意するのは不可能だ。
だから俺達難民は各地へ散った。
体力のない連中はなるべくここから近い土地へ。
俺達のような若くて体力があるように見える連中はひたすら移動させられた。
かくいう俺も1ヶ月かけこの地にやってきた。
おおよそ100人ほどの集団だ。
若い男女が多く残った。そうは言ってもこの国に到達できたのは、主に俺達のような若くて健康な連中ばかり。
幼子を抱えて何とか到達できた母親もいたが、たいてい幼子はここに到達できず死んだ。
若くて体力があっても魔物に道中襲われやはり死んだ。
ここに辿り着けたのはある意味運がいい連中だ。
俺は今までそう思っていた。だが本当に運がいいのか?
俺は何とか自活できるだけのスキルと職を手に入れ、今は薬草採取で何とかなりそうだ。
なので手続をし難民キャンプから出た。
しかし何かがおかしい。
話に聞いていた対応と違うのだ。
主に金銭面。
着の身着のままこの地にやってきた俺達は、生活の基盤を固めるまでの間という事で、返済しないといけないが1日当たり5000ゴールドの支援を半年後に返済開始、というありがたい対応の難民支援制度という制度で救済してもらった。
そして色々なサービスが無料で受けられるという。
事実冒険者ギルドで登録、いくつかの講習をただで行ってもらえた。
実際2ヶ月経つが返済は今までしていないし、催促もなかった。
そしてこの地に辿り着いて1ヶ月、屋根のある建物で2食の提供と寝床、更には生活に必要な道具や衣類などを提供してもらい、快適とは言えないが最低限暮らしていけた。
食事も悪くなかった。
流石に昼の食事の提供はなかったが、そこは支援してもらった金で各自が買い、朝と夜は炊き出しで提供してもらえた。
炊き出しは毎日違う人が行ってくれ、そして主に難民の中でも女性がその役割を担ってくれた。
男はそれぞれの伝手がある場合はスキルを活かせる工房に足を運び、また別の人々は冒険者として身を立てていく。
これは女性も同じだが、女性の方はなかなか仕事先が見つからないようだったが、俺もそこまで関われない。
それに一緒に逃げてきたとはいえ、周りは全員今まで口もきいた事のないような連中だ。
そして俺を親切に扱ってくれたおじさんも、途中で見なくなった。別の街に割り振られたのだろう。
「はいどうぞ!しっかり食べてよね!」
朝は女性達が器に雑煮を入れてくれ、硬いパンと一緒に食べる。
「ありがとう。」
「あんた体が小さいんだから、特に食べなさいよね!」
「余計なお世話だ!あんたこそ無駄に乳がでかいじゃないか!」
「無駄に?これは必然よ?でも駄目よ?これはお金を払ってくれたらおさわりしてもいいけれど、どう?」
「・・・・俺は細身のこう、手のひらにすっぽり収まるのがいいんだ。だがあんたのは思いっきりあふれているじゃねえか!」
なんで俺の両手を胸に押し付けるんだ!
「金がたまったら娼館においでよ!すっきりさせてあげるよ?今のはサービスね!」
・・・・結局の所、若い女の働く場所は最終的にそう言う所だった。
目の前の女性もこんな事はしたくないが生きるために身体を売っているらしい。
だがあまり環境は良くないようだ。
ここ最近女の数が減っていく。
聞けば病気で体調を崩す女が多いようだ。
それと見た目のいい女も何人か姿を見かけなくなった。
これも後で聞いたが貴族か金持ちが身請けをしたらしい。
愛人なのか妾か分からないが、今よりはいい生活ができるからか、声をかけられた女は暫く悩んだ後そう言った生活を選ぶようだ。
まあそうやって消えていく女はいい。
しかし病気か。何のために逃げ延びたのだろうな。だが冒険者ギルドで登録し、冒険者として身を立てられなかったのだろうか?
俺は薬草採取をしているが、こんなの女でもできるぞ?だが周囲に薬草採取を行う女性はおろか、他の人を見かける事は稀だ。
聞けば地味なうえに稼ぎが少ないらしいという事になっているようだ。いや、実際それなりに稼ぐ事が出来るぞ。
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