第15話 炊き出しに現れる冒険者

 この地に落ち着き3週間ほど経って、俺が採取師のレベルが6だっけか7だったかになった頃、炊き出しに普段見かけない身なりのいい若い女が現れるようになった。

 正確には何処かの冒険者だな。

 そして同時に男の冒険者も炊き出しに参加するようになった。


 まあ朝限定だが。このまま炊き出しが終わればダンジョンにでも行くのだろうか?


「おいっすケネト、また採取に出かけんのか?」


「あ、おはよう。あんた何だっけ、ああそうだヘンリクだ。今日も薬草採取さ。」


 目の前の野郎はヘンリクと言って、超絶イケメンなのだが、何故か俺にはフレンドリーだ。

 女にモテるのだろうが、何故か俺に話しかけてくる。

 周囲の女がなあ・・・・そう、視線が痛いのだが、なんでだ?まさか俺の尻が狙いか?

「今何か恐ろしい事を考えただろう?一応言っておくが俺は女が好きな健全な男だ。男の尻なんぞ興味はねえぞ。」


「朝からナニを言っているんだ。こっちこそ男の尻なんぞお断りだ。」


 安心した。こうしてフレンドリーに接し、安心した所で掘られてもたまらんからな。


「そうか。おれは昨日からここで炊き出しを命令された。まあ依頼を仕損じたペナルティなんだがな。」


「依頼を失敗すると炊き出しなのか?この国は。」

「いや、色々あるが奉仕作業やら清掃作業やら。まあ今回のはましだな。1週間だけだ。ああ、それとこいつ不愛想だが俺の妹。同じパーティで活動している。どうだ、いい女だろう?」


 妹をいい女って・・・・確かに見た目は完ぺきだ。


「あ、初めまして。俺ケネトって言います。」


 俺見た目のいい女を見ると緊張するんだよな。

 え?じゃあ平凡なのなら緊張しない?いやごめんなさい、親しい間柄の女性以外は駄目です。



「我が名はヒルデガルド・ヴァルもごごごご「ああそうだった俺は20だ。こいつはもうすぐ19歳だ。」兄者酷い、口をふさがなくてもいいではないか!」

「いいか俺達は一介の冒険者だ。」


「分かった兄者。おい、そこのケネトとやら、我が名はヒルデガルドだ。」


「はあ、ヒルデガルドさんですね。短い間ですがよろしくお願いします。」


 俺はこの目の前の小柄な女性をじっと見た。

 ヘンリクとは兄妹の関係らしいが、こんな整った顔と、こう言っては何だが俺は細身の体の女が好みだ。

 胸もあまり自己主張しすぎなのは目のやり場に困るし、何せ目の前の女は足が細い!そして有り得ないほど腰が上にあるしくびれが凄い!

 同じ人間か?

 ドストライクだが顔が整いすぎてある意味近づきがたい。

 高嶺の花だな、こういう女は。遠くから見ているのでいいんだ。


 それにもうすぐ19歳という事は年上だ。

 愛でるにはいいが、真剣なお付き合いは無理だな。


 注:ケネトの住んでいた国は年下の女性しか結婚を受け付けていません。

 なのでケネトも自然と女性の認識をそうしてしまっています。


「何を言っている。貴様とは長い付き合いになるはずだ。我が名を終生心に刻んでおくがいい。」


 何言っているのか分からん。


「ほらほらしっかり食え。」


 何だこの2人は。対照的な兄妹だな。

 だが2人供美男美女。

 格差を感じるな。


 結局この2人は数日間炊き出しをしていたようだが、気が付けば2人の姿は炊き出しで見かけなくなった。

 だが、後に一緒に活動する事になろうとは、この時は夢にも思っていなかった。



 ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●



 俺は38歳。

 そう、目の前のこの女は20年前に知り合った、かつての仲間だ。

 何でこいつは見た目が変わらないんだ?はやりエルフなのか?俺はおっさんなのだがこいつは若いままだ。

 年上なのが悔やまれる。


「どうしたケネト。」


「ああ、ヒルデとの出会いを思い出していただけだ。」

「出会い?何だったか忘れた。それよりこの剣何とかしろ。というか我の分も寄こせ。」


「あんた剣まともに扱えないじゃないか!」


「そうかもしれぬ。さあ兄者の所へ行くぞ!」

 俺は襟首をつかまれたまま城まで引きずられていった。正確には襟首ではなく首に巻いていた装飾品だ。

 最初は襟首をつかんだが、引っ張りにくいと気がついたのだろう。そしてちょうどいいと俺の・・・・首輪じゃねえからな!


 で、ちょうどいいのかもしれないが首が締まるんだよ!だがお構いなしだな。

 しかし何でこんな細身なのにこんなに力があるんだ?

 こいつは苦手だ。だがスタイルはいい。そして時々ヌケている。


 引きずられた事があればわかると思うが、ちょうど俺の顔はこいつの尻の下に来るんだ。

 その角度ではそんな短いスカートでは丸見えなのだよ。禁断の三角形が。ほう、今日は白か。


 だがおかしい。丸見えなのに、絶対気がついているはずなのに。そうこいつ実はワザとなんじゃないか?

 俺はそんな勘違いをしていたが、ある意味勘違いじゃなかった。

 こいつはそう言った事に無頓着。見た目を気にしないある意味残念な女なのだ。こんな整った顔とスタイルなのに。


「いい加減に気づけ!」

「なんか言ったか?」


「・・・・何でもない。」

 一体何に気付けばいいのか?分からん。


 そして俺は20年前にこいつと出会ったと思ったんだが、次に会ったのいつだっけな・・・・数ヶ月後だっけか?と思い出そうとしていたが思い出せない。まあいいか。


《国が滅び難民に》

 の章 終わり

 次回より新たな章の開始

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