第10話 オリハルコン

「早速レベル10とは素晴らしいぞ!」


 おっちゃんが喜んでくれた。


「なあ、あんたってビリエル・ロセアンって言うのか?」


 あ、おっちゃんの動きが止まった。


「あ?ケネト、その名前を何処で聞いた?俺はてめえに名乗った覚えはねえぞ?」


 なんだ?おっちゃんの雰囲気が変わったぞ?こんなおっちゃん初めて見た。


「商人ギルドで・・・・何だっけな、ベルント・ハーンって人だ。その人にセカンドジョブの提案を誰が?と聞いてきたから冒険者ギルドで眼鏡かけたおじさんだと答えたんだよ。そうしたらおっちゃんの名前を言っていたぞ?」


「おうそうか、すまなかったな。そうかあんちゃんの担当はベルントか、そうかベルントか。それなら安心だな。」


 よくわからんが元に戻った。


「じゃあ早速セカンドジョブを変更するか?」


「変更ったって、何にしたらいいんだ?戦闘系か?」


「馬鹿言え、あんちゃんお前にはまだ早い。かといって鍛冶師はまだ駄目だ。あれは最後だ。」


「何で最後なんだよ!俺は鍛冶師目指してんだぞ!」

「普通の剣を打つ分なら今すぐでもいいかもしれんがな、あんちゃんはもっと上を目指してんだろ?」

「そりゃそうだ。目指すはミスリル、そしていずれはオリハルコンだ。」

「ミスリルとオリハルコンだ?じゃあますます最後だな。」


「だから何でだよ!」

「ミスリルはまだ流通しているから金さえあれば手に入るだろう。だがオリハルコンはそうはいかねえ。あれはダンジョンの90層以降に潜らねえと採掘できん。しかも採掘レベルが10では無理だ。最低でも12だ。いいか、12だ。しかし12までレベルをあげるとなるとな、恐ろしいほどの金がかかるんだ。覚えとけ!」

「なあ、因みにいくらだ?」


「知ってどうする?絶望するぞ?今のあんちゃんの金では無理だ。」


「だからいくらだっつってんだよ!」

「まず11だが、1千万ゴールドかかる。」

「1千万だ?」

「ああそうだ。そして12だと1億ゴールドかかる。」

「は?1億だ?そんな金どうやって稼げばいいんだ?」

「そしてな、できれば13まで上げておきたいが、わかるだろ?10億かかる。」

「何でそんなに金かかるんだよ!10億?一生かかっても稼ぐの無理だろ?」

「そうでもない。ソロならレベル600ぐらいまで上がっていれば何とかなるはずだ。もし6人パーティなら、そうだな総合レベルが600あればなんとかなるだろう。できればあんちゃんは200は欲しいがな。」


 レベル600とか無理ゲーだろう。


「それに、魔法を覚えねえとな。どうせミスリル・オリハルコンだ。魔剣を打ちたいのだろう?」

「鍛冶師を目指すなら魔剣だろう!」

「それとオリハルコンな。普通の冒険者では採掘しても持ち帰るのは不可能に近い。」

「何でだよ?」


 なんかおっちゃん探してるぞ?

 あ、テーブルになんか置いたけど何だこれ?小指の先ほどのかけらぐらいの大きさだぞ。

「オリハルコンだ。持ってみろ。」


「え?え?この小さいのがオリハルコン?爪ほどの大きさもねえじゃねえか?」

「そんなのはどうでもいい。持ってみろ。」


 俺はこのオリハルコンの破片を持ち上げようとしたが・・・・え?持ち上がらん!何だこれ重い!

 何とか両手で持ち上げたが、小指の先っぽほどの大きさの小さい破片を持ち上げられないとか何もん?


「これは俺が昔ダンジョンで拾った破片だ。ダンジョンの90層以降ではな、こんな破片ぐらいは普通に落ちてたりするが、誰も持ち帰れねえ。重すぎるんだよ。」


 この大きさの金を触った、いや持った事はあるが、せいぜい鉄の3倍ぐらいの重さだったぞ。だがこれは何だ?

「これ明らかに重すぎるじゃねえか。いったいどんな重さなんだよ!」


「それだけで50キロはある。」


「は?そんなの剣に無理じゃねえか!もしかして金箔みてえに薄く引き伸ばして、ミスリルに張り付けるのか?」

「オリハルコンにそのような加工は不可能だ。できるかもしれねえが少なくともこの国にできる奴ははいないな。少なくとも俺は知らん。鍛冶師のレベルを15ぐらいまで上げればもしかして?だが、さっきの金額聞いただろ?レベル14で100億、15だと千億かかる。そもそもそんなアイテムが出回る事は・・・・ない。だからな、精霊に頼むんだ。」

 精霊に頼むって、何を頼むんだ?

「じゃあ次は精霊使いか?」

「いや、あんちゃんには錬金術師を考えている。そしてその次は道具制作だな。」


 因みに俺は知らなかったが、このおっちゃん、引退した冒険者。

 しかも最終ランクはS級だったそうだ。個人もパーティも。

 だけどなあ、そんな風には見えんのよ、眼鏡のおっちゃんだよ。

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