木の村

松明が道を挟みながら立ち並ぶ道の先から、人々で賑わう音が聞こえてくる。

木でできた門をくぐれば、その村の雰囲気が体を包み込む。

村の中心で燃える大きな火が、村を照らしているおかげか心も温まる気がする。


「この村に来るのは初めてかい?」


 燃える火に見とれていると、村人の男から突然声をかけられる。


「ええ、森から森へ転々としているものですから、、、」

「そうかい、この村はみんな良い奴ばっかりだから、もし困ったことがあれば遠慮なく聞いてくれよ!」


そう言って男は、私の肩を叩く。

男は、その荒い態度に合う髭と、ゴツゴツとした手をしている。


「ありがとうございます。では、この村で一泊できる場所を教えていただけますか?」


 そう尋ねると、男は満面の笑みを浮かべる。


「そういうことだったら俺の家へ来いよ!今日はちょうど山菜や魚がいつもより多く獲れたんだ。ごちそうするぜ。」


 親指を立て男が首でついて来いという。男に続き、大きく燃える火の横を通り過ぎる。

その時、火の周りで踊ったり談笑したりする村人たちが、笑顔をこちらに向ける。

男の言っていた通り、この村の人々はみんな親切なのだろうなと想像できる。

 

男に続いて歩いていくうちに、大きな火の光も弱まり、賑やかな声も遠ざかる。


「ここが俺の家だ。」


そう言った男の前には、木で造られた家が建っていた。


「立派とはとても言えないが、村の奴らと協力して建てた自慢の家だ。綺麗にはしているから、安心していいぜ。」


男が扉を開け中へ入るのに続く。

壁には蝋燭が、暖かい光を放ちながら立っている。

部屋は手前に一部屋あり、奥に一部屋あるようだ。


「ここに来るまでで疲れただろう。そこの椅子に座って休んでくれ。」


私は礼を言い、部屋の中心に置かれた机と一緒置かれてた2脚のうち、手前に座る。


「水を用意するからちょっと待っててくれよ。」


男はそう言って奥の部屋へ入っていく。

改めて部屋を見回し、部屋に満ちている楽しさと暖かさを感じる。


「君たちは、こうした家の空気を吸えて、とても幸せだね。私も今日はこの村に来れてとてもいい気持ちだ。」


そうやって木の感情と対話しているうちに、男が器に入った水を私の前へ置く。


「あんまり美味くはないかもしれねえが、喉は潤せる。すまねえな。」


「お気になさらず。ちょうど喉が渇いていたので、水を飲めるだけでありがたいです。」


私はゆっくりと器を持ち上げて、口へと水を運ぶ。

男の言った通り、そこまで美味しいわけではないが、水の感情はとても気持ちが良く聞こえた。


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