第24話 少女の恋……式守有希の場合⑥

 しかし、私の淡い希望はいとも簡単に打ち砕かれてしまう。


 例の二組が、全くもって見つからなかった。


 知り合いや友達、その子達と親しい人物に話を聞いても手掛かりはなし。


 正直、焦っていた。


 なぜなら、もうほとんどの時間が残されていなかったから。


 あと一時間もすれば、生徒会企画が始まってしまう。


 メイクや着替えにも時間が掛かるだろうし、捜索に使える時間は多く見積もっても残り20分くらいだろう。


 い、急がないと……と焦る程、頭に靄が掛かり、自分が今何をすべきなのかが分からなくなっていく。


 もう、しらみつぶしに全ての教室を探し回るしかないのだろうか。


 いや、それでは時間がいくらあっても足りない。


 どう考えても、私一人だけでは実現不可能な作戦だった。


 でも、もはやそれ以外にできる事は無くて……一体、どうしたら……


 不安や不甲斐なさが、全身に重くのしかかってくる。


 こういう時に、素直に人を頼れることができたらどれだけ楽なのだろうか。


 でも、私にはそれができなかった。


 自分でやると言った以上、自分で何とかしないと。


 そんなプライドが、今もなお心にしがみついていた。


 あぁ、私って本当に成長しな……




「どうしたんですか?」




 そんな時だった。


 誰かが、ポンっと私の肩を叩いた。


 竹刀を振って潰れたであろう豆がごつごつとした、自黒の大きな手。


 振り返らなくても、分かった。


 


「七月君……」




 泣きそうになっている私を見て、七月君はギョッとしていた。


 しかし、すぐにその表情を改め、真剣な顔つきでこちらを見つめてくる。


 きっと、彼に事情を説明すれば、助けてもらえるのだろう。


 でも、だめだ。


 いつまでたっても彼に頼りっぱなしでは……




「会長」




 七月君が、諭すように言う。


 それは、いつかに聞いたことがある言葉だった。




「一人で抱え込まないでください」




 その言葉に、私の心は絆される。


 何があったのかも、何をしてほしいのかも説明せずに、私は言った。

 

 心から溢れて止まらない本音を、私は言った。




「助けて……」




 すると、七月君は……




「もちろん」




 そう、頷いた。


 何も知らない七月君は、何も聞かずに私を助けると、そう、言ってくれた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る