3話 異世界へ来た者たち

俺はごく普通の男子高校生だった。何の才能も何の取り柄もないそんなヤツだったらしい。


俺はそんな俺が大嫌いだったのだろう。だから俺は過去の俺を消した。今も過去の俺自身の事をほとんど思い出せないが、全ての始まりを教えよう。異世界召喚された話の…その始まりだ。


なぜ異世界召喚されたのかそして異世界召喚されて俺がなにを思い、何を望んだのか。


俺は日本の高校に通う地味でおとなしい男子高校生だったらしい。高校二年のある日、俺はいつもどおり図書室に行った。


俺はラノベが大好きだった。だからラノベを読むためだけに図書室に通っていた。それは覚えている。そして図書室に行って俺は本を探していた。そうして知り合いの2人の近くへ行ったとき図書室の床が光ったんだ。


目をあけるとそこはもう異世界だったんだ。城の広場で魔法陣が敷かれていて俺達はそこに立っていた。魔法使いが異世界から勇者の召喚に成功した、と言っていた。


俺はとても驚いた。なぜなら異世界召喚と聞こえたから。


そして大喜びした。喜びつつも自分の姿を確認してみたら、なんとイケメンになっていた。異界を渡った時に力を得て、その時に理想の姿へ変わったのだとか。


そして3人で召喚されたらしいし話を聞くか、と魔法使いから説明を受けた。


俺達は世界を救うために召喚されたと。

そして異世界召喚と来たらやはりチートを授かっていると。そんな俺達が必要だと魔法使いが説明した。


3人は喜びつつも不安を感じた。なぜなら彼らには日本に残した家族がいたからだ。だが異世界召喚の術は準備にも時間がかかるし大変な魔法だからもう一度するには時間がいる。だから、俺達は最低1年は帰れないだろうと。


俺は記憶もないし帰らなくていいやと今でも思ってる。こんだけ思い出せないってことは未練もなにもないんだろう。とりあえずは帰れるらしいと説明をうけ他の2人はやっと納得いったらしい。


そして魔法使いから能力を確認してもらった。

そうして調べて貰うとほんとにクソチートだった。


セイゴはバリア能力。味方を守る能力に秀でていた。ゲームだとタンクってヤツだな。


キヨラは回復能力。ゲームだとヒーラーってやつだな。美少女の回復魔法。悪くはない気分だ。たとえ中身はどうあれ見た目はいい。


俺は最強で無敵な能力を持ってた。どんなのかはまた活躍する時に説明してやらぁ!ともかく俺が主役である事が決まった。


だから俺こそがこの世界の主人公なんだとそう思った。俺達は強そうなそのチート能力に喜び勇んだ。これなら魔物のいる異世界だろうがなんだろうがどうにかなる、と。


王様もそんな俺の能力でか頼もしいと言ってくれた。その力でもってこの世界を救って欲しいとそう頼んできた。


勿論引き受けた。チートを貰って世界救うとか、そんな現実ではありえない胸アツ展開。

やらない理由は俺にはなかった。途中でやめるつもりもなかった。


俺の役割はこの世界を救う為に戦って行けばいいだけ。無敵に最強なチートがついてんだ。なんだってできるさ。敵をバッタバタと薙ぎ倒してなんか色々して、この世界を救えばいいんだろ?楽勝さ!俺ならできる。何だってできるさ。


俺ならを何でも望み通りにできる。そんなスキルを持っていた。俺こそがこの世界の主人公さ。何をしても自由だ。その気になればなんだって出来るさ。


異世界を救う勇者なら女の子にもモテモテだ。

世界を救った勇者なら女の子も望みどおりにできるだろう。


俺はモテる為にも頑張ってやろうと思った。

勇者で異世界召喚ときたらやっぱハーレムだからな。この世界の可愛い女の子を助けまくってやろう。女のコにモテモテになってウハウハして世界救ってハッピーエンドだ。


モテるって言ったら…現在攻略中なのはこの城のメイドだな。俺につけられた3人はなかなかの美女揃いだった。恋愛ありの修行パートだなこれは!


ふははは。楽しいぜ全く!異世界召喚上等だぜ!異世界召喚万歳!


きっとこの先に面白い事や楽しい事がいっぱい待ってると俺は信じて疑わなかった。

俺にならなんだってできると信じて疑わなかった。疑う理由は俺達にはない!


ここにいる俺の存在意義は勇者である事だった。勇者最高じゃないか!!誰だってなれるもんならなりたいだろ!?

力があってみんながやって欲しいって言うんだからやるしかないだろ!


この世界はラノベみたいなもんだ。ゲームみたいな世界なんだ。これは俺が主人公で、面白おかしくこの異世界を冒険する話なんだ。

勇者として求められて過ごした俺はそう悟っていた。


この時の俺は大事ななにかを忘れていた。大事ななにかを失っていた。俺はその事に気づいていなかった。思い出そうともしなかった。

 

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