いつも心の中に君がいる。
ライブが終わり、葵の所に急いだ。
途中、お客さんから「良かったですよ!」とか「頑張れよ!」とか声をかけられ恥ずかしかった。
葵と店長は会場の外にいた。
俺が駆け寄ると、「お疲れ。」と店長が俺の肩を叩いた。
「じゃあ、俺はそろそろ店戻るから、2人ともまたバイトでな。」
「はい。」
俺も葵は同時に言った。
店長は去り際、「シメサク、ひまわり君の手を離すなよ。」と俺に耳打ちした。
俺は「うっす」と小さく応えた。
そして、葵に向き直った。
「ライブかっこよかったよ。」
葵が言った。
「お、おう。ありがとう。」
俺は、少し照れながら応えた。
静かな沈黙が流れる。
急いで走ってきたものの、何から話せばいいか分からず「えーっと」なんて言っていると、葵がぽつりと言った。
「染みる。」
「え?」
俺が聞き返すと、葵は小さな手を自分の胸に当てて言った。
「サクと一緒にいると、心の傷口に優しさが染みる。染みるけど痛くない。むしろ、心地良さとか安らぎとか、そういうのが混じりあう感じ。なんていうのかな…。あ、そうだ。冬の日のカフェラテみたい。とても暖かくて、優しくて、もっと欲しくなるし、もっと僕の心を満たして欲しいって思う。」
葵は、俺を見た。
「やっと気付いたんだ。僕の心の中には、いつもサクがいるって。サクの心の中にも僕の居場所があったらいいなって思う。そう思うと、今度は心が急に苦しくなったり切なくなったりするんだ。」
葵は、少し顔を赤らめながら、続けた。
「僕、今まで、好きってよくわからなかった。でも今はわかるよ。大好きなディズニー映画のキャラクターのセリフにね、"愛っていうのは自分よりも誰かを大切に思うことだよ"っていうのがあるんだ。
それの意味が今凄くよくわかる。サクが教えてくれたんだよ。」
そして、笑顔を作って言った。
「好きって言ってくれてありがとう。僕もサクの事が好き。」
「葵、いいのか?こんな俺なんかで…。」
「"俺なんか"なんて言わないで。僕はサクがいいんだから。」
俺の人生の中でこんなに嬉しい瞬間があるなんて思ってもみなかった。
葵の事を大切にしたい。
葵に笑顔でいて欲しい。
これからもずっと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます