星占い

Side 葵


『本日の牡羊座の恋愛の運勢。

パートナーがいない人には、新しい素敵な出会いが訪れる予感です。

積極的に行動しましょう。どんな状況であっても運気が後押ししてくれるはずです。』


とある朝。


僕は、カフェラテを飲みながら、テレビの星占いをじーっと見ていた。


「葵、学校間に合うの?」


お母さんに声をかけられ、ハッとする。


「う、うん。大丈夫!」


「そう?じゃあ、お母さんはお仕事行ってくるわね。」


「うん、気を付けてね。」


出かけるお母さんを見送り、急いで身支度をした。


星占いなんて見たこと無かったのに。


僕、どうしちゃったんだろう。


サクに好きって言われたあの日から、心に羽根が生えたようにフワフワしている。


好きって言われることは今までもあったけど、何も思わなかった。というより、好きってどういう感情なのかわからなかった。


でも、サクに好きって言われて、不思議なくらい嬉しくて、家でも学校でもフワフワしている自分がまるで自分じゃないみたい。


今日何してるのかな。


次、会えるのはいつなのかな。


次会ったら何を話そうかな。


あ、この間、僕のこと置いて先に帰った事、問い詰めちゃおうかな。


っていうか、こんなに浮かれちゃってるけど、僕、告白されたんだから返事しないといけないよね…。


そもそも僕って、サクの事、好きなの?


好きだからこんなにフワフワしてるの?


でも、好きって何?って聞かれたらよく分からない。


付き合うって何したらいいのかもわからない。


そんな事をグルグル考えて、またフワフワして。


今度はおばあちゃんに「葵、学校間に合うの?」って言われた。


僕は、「はーい!」と返事をして出かけた。


すっかり舞い上がっていたこの日の僕は、あんな事が起こるなんて思いもしなかった。

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