うだる様な暑い夏の日。

それからと言うもの、俺は輪をかけたようにこじらせていった。


寝ても醒めても、バイトしていても、教職授業のレポートをしていても、歌詞を考えていても、とにかく何をしていても葵の事を考えてしまう。


流石にもう認めざるを得ないところまできていた。


これは、好きって事だ。


俺は、自問自答を繰り返した。


葵はまだ高校生なのに、凄くしっかりしている。


気遣いも出来て、料理も上手で、勉強も出来る。


ふと、"好きって憧れに近い。"とクジが言っていたのを思い出した。


俺に無いものを沢山持ってる。


だから眩しい。


眩しくて、羨ましくて、でもどこか危なっかしくて、放っておけなくて、気付けばいつも心の中に葵がいる。


ふと見せる仕草が可愛いくて。


っていうか、笑った時の顔とかもう最強に可愛いくて。


照れ屋で、すぐ顔を赤くするところも、


困った時に窺うようにちらっと俺の方を見るところも、


制服の葵も、私服の葵も、少し大きめの俺の服を着ている葵も、どんな葵も愛おしくて仕方ない。


たまにLINEの通知が鳴ると、秒でスマホを見る。


で、たいてい葵じゃなくてガッカリする。


次にシフトが重なる日までの日数を指折り数えたり、


葵の真似をしてカフェラテを飲んでみたり、


やばい。もう俺、相当重症だわ。


今日は、梅雨が明けて初めての猛暑日らしい。


ジリジリと熱い太陽が、まるで心まで焦がす様だった。


そんなうだるような暑い日。


俺は自分の恋心を自覚した。

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