葵のおばあちゃん②
3人で色々な話をし、沢山料理を食べた。
葵がトイレに行っている時に、おばあちゃんが「朔也さん、いつも葵の事、ありがとうございます。」と言った。
「そんな…!僕は何もしていませんよ。」
俺は、慌ててそう言った。
「いえいえ、朔也さんのお陰だと今日確信しましたよ。コンビニのアルバイトを始めてからは、なんだか毎日楽しそうなんですよ、あの子。前のアルバイトをしている時は何だかすごく辛そうで、何の仕事をしているのかと聞くとCDショップだって言うのだけど、本当かしらって思っていたのよ。」
おばあちゃん、薄々勘づいていたんだ…。
おばあちゃんは、それについては深堀りすることなく、話を続けた。
「離婚する前、あの子の両親は言い争いが耐えなくて、葵もきっと辛い思いをしていましたよ。それまでは明るい子だったのに、めっきり笑う事が減ってしまって。離婚してからは益々そう。可哀想に。おばあちゃんがもっと早くに気付いてあげられればねぇ…。」
後半は、葵に話しかけるような口調だった。
葵の事を想うと、俺も目頭が熱くなり、言葉が出なかった。
「でもね、最近は、少しずつ笑顔が増えてね。朔也さんのお話をよくするから、一度会ってみたいと思っていたの。一目見てすぐにわかりましたよ。朔也さん、本当に貴方のお陰ですよ。葵のこと、これからもよろしくお願いしますね。」
「僕の方こそ、葵と出逢えて良かったですよ。僕なんて何の取り柄もない、頼りない男ですけど、葵の事は任せてください!」
「あら、何の取り柄もないだなんて、ご謙遜なさらないで。何か目指しているものや目標があって悩んでいる事があるのなら、言葉にすると良いですよ。言霊を信じてみてくださいな。」
謙遜のつもりはなかったけど、おばあちゃんの言葉に俺は心が打たれっぱなしだった。
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