面接②

「じゃあ、早速始めるか。っていうか君、見た事あると思ったら、よくうちにカフェラテと肉まん買いに来てくれる子だな!」


あちゃーと俺は思った。


案の定、葵は顔を真っ赤にして「は、はい…」と応えると、俯いてしまった。


「シメサク、お前知り合いだったんだな。」


「あ、えーと。最近知り合って仲良くなったんです。」


詳しい話は割愛した。


「なるほど。葵くん、シメサクから話は聞いているよ。真面目で気遣いができて優しくてしっかりしていて頭が良くて料理が上手と。」


葵は、顔をさらに真っ赤にして、俺に小声で「ハードルあげないでよ…」と小さく言った。


俺は、「わり」と小さく返した。


まぁ、ハードル上げたつもりはなかったんだけど。


だって、全部本当のことだし。


「葵くん、履歴書持ってきたかな?」


「あ、はい…!」


葵は、たどたどしく履歴書を鞄から取り出し、店長に手渡した。


チラッと見えたけど、字、綺麗だな。


てか、葵の苗字、"向日"って言うのか。


「向日(むかい) 葵くん。18歳だね。」


「はい。」


てか、向日葵って…


「"ひまわり"じゃん!」


「え?」


葵は、意味がわからなかったようで聞き返した。


「日向葵って漢字で書くと、"ひまわり"って読むじゃん。」


「あ、本当だ。気付かなかった。」


葵は、納得した様に答えた。


「マジか。今まで気付かなかったのか?」


「うん。両親が離婚して苗字が変わったから、"向日"歴短くて。"むかい あおい"って韻踏んでるのが嫌だなぁって思っていた程度だった…。」


店長は、俺達のやりとりを面白そうに聞いてから、言った。


「シメサク、良くその難しい漢字読めたな。流石、教員目指してるだけあるな。」


「いや、文系ですし、漢字はそこそこ得意だっただけっす。」


教員目指してるとか、恥ずかしいから改めて言わないでくれ。


「じゃあ、ここでのあだ名は"ひまわり君"で決定だな!」


「え、それって合格って事ですか!?」


驚いて、葵より先に俺が聞き返した。


「うん、合格。」


「いや速くないっすか!5Gですか!」


「お前、さっきからうるせーよ。」


確かに、俺うるさいかも。


「あの…いいんですか?」


葵が店長におそるおそる聞いた。


「あぁ。君なら問題ないと思った。長年面接をしていると、目付きと振る舞いを見れば、自ずと人柄がわかるものだからな。ひまわり君、宜しく頼むよ。」


店長は、葵の方を向いて言った。


「はい!宜しくお願いします!」


葵は、元気良くそう答えた。


嬉しそうな顔をした葵を見て、俺も嬉しくなった。

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