添い寝

俺は、忘れないように葵と連絡先を交換した。


それぞれシャワーを浴び、お互いを待っている間、俺は缶ビールを1本飲み、葵はぼーっとテレビを見ていた。


なんか改めて思うと、この状況、なかなか不思議だよな。


つい数日前までコンビニの店員と客だったのに。


「葵、明日学校?」


「うん。制服取りに家に戻らないといけないから、明日早めに起きて行くね。サクは寝てていいから。」


葵の制服姿を俺は想像した。


見てみたいな…なんて思考が走り、慌ててかぶりを振った。


「んじゃ、明日も早いし、そろそろ寝よっか。」


「…あのさ、サク。」


葵が何やらモジモジしながら言った。


「ん?なに?」


「…もし、嫌じゃなかったら、一緒に寝てもいい?」


「ゴフッッ」


飲みかけのビールをちょっと吹いた。


「あ、まってごめん。一緒に寝るって変な意味じゃなくて、その…あんな事があったからちょっと一人で寝るの怖くて…」


俺のでかい服を着た葵が長すぎる裾をキュッと握って、

顔を真っ赤にして言った。


その姿が殺人的に可愛くて、俺は言葉を失った。


「あ…ごめんね。嫌だよね。僕、ゲイだし…。」


沈黙を別の意味に捉えたらしい葵の言葉を、俺は慌てて否定した。


「いやいや、そうじゃないよ。そんな事、俺気にしてないから。葵がゲイだろうが別に何にも思わないよ。さっき初めてそう聞いた時も何にも思わなかった。だって、葵は葵だろ?」


「サク…ありがとう。」


「全然。てか、お礼言うとこじゃないよ。むしろ、さっき俺が言葉を失ってたのは、その…葵があまりに可愛かったからさ…。」


「え、か、可愛くなんてないよ…。」


なんか、変な沈黙が流れてしまった。


「ベッド狭いけど、いいか?」


「…いいの?」


「いいよ。一緒に寝ようぜ。俺もソファよりベッドで寝たいしさ。」


そう言うと、葵は嬉しそうな顔をした。


やっぱり、葵は笑顔が似合う。


俺達はひとつのベッドで寄り添って寝た。


葵は疲れていたようで、ベッドに入るとすぐに可愛らしい寝息を立てていた。


俺はと言うと、緊張してなかなか寝られなかった。


なんでこんなに鼓動が早いんだ。動悸がやべーんだけど。


葵と出会ってから、俺は何かおかしい。


怒ったり泣いたり、心が忙しい。


なんだよ、まるで恋してるみたいじゃん。


ふと、隣で眠る葵の寝顔をそっと見る。普通に天使だった。


そんなこんなで、結局俺は朝方くらいにようやく眠りについた。


起きた時には、もう葵はいなくて、貸していた服が綺麗に畳まれていた。


「葵って、絶対A型だよな。」


なんて独り言を言って、俺も昼からのバイトの準備をした。

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