提案
「あのさ、葵。もし葵が良かったら、俺と一緒にバイトしないか?」
俺は、少し考えてから提案した。
「え、バイトって、コンビニの?」
目を赤くした葵が顔を上げた。
「あぁ。18歳ならバイト出来るからさ。時給もいい方だと思う。そりゃ、体を売るよりは安くなってしまうかもしれないけど、こんな事ずっと続けるのは絶対にダメだと思う。お母さんやおばあちゃんの為にも、葵自身のためにも。」
「でも…。」
「今日はたまたま俺が通りかかったから事無きを得たけど、こんな事を続けていたらこれからもっと危ない目に合う事だって考えられるだろ?それでもし葵になにかあったら本末転倒だよ。お母さんやおばあちゃんも悲しむし、俺だって…俺だってすげぇ悲しいよ。」
俺は、葵を一生懸命説得した。
もう葵に体を売るような事、絶対にさせたくない。
絶対に。
「…サク、何でそこまでしてくれるの?」
「葵の力になりたい。それに、放っておく事なんて出来ないよ。」
「サク、終電を逃して駅で蹲っていた僕に声を掛けてくれた時も、同じように言ってくれたよね。」
「あー、そう言えばそうだったかも。」
ポリポリと後頭部をかく俺に、葵が今日初めてクスリと笑った。
「コンビニのバイト、してみようと思う。」
「本当か!?」
「うん。サクの言う通り、こんな事ずっと続けていたらお母さんやおばあちゃんが悲しむもんね。僕、ずっと視野が狭くなっていたんだと思う。ありがとう、気付かせてくれて。」
葵の言葉にまた溢れそうになる涙をグッと堪えた。
マジ涙腺崩壊してんじゃん。
俺、こんなに涙脆かったっけ。
「よかった!あ、一応面接とかあるからさ、店長には明日俺から話をしておくから、日時とかはまた調整させてくれ。」
「うん、ありがとう。」
そう言うと、俺達は、お互い顔を見合わせた。
「俺達、2人とも目真っ赤だな。」
「本当だね。」
そう言って、お互いに笑った。
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