ただそれだけだったのに。

Side 葵


「こんなの聞いてません…!」


ホテルに着くなり、その男の人は乱暴に僕の服を剥ぎ取り、ベッドに押し倒して、両手両足をベッドに括り付け、身動きを取れなくした。


「お金を多めに払えば、いつもと違う事をしてもいいって言っただろ?」


男は、全裸で身動きの取れない僕の全身を、したり顔で舐め回すように見て言った。


「…痛い事は嫌だって言いました…!」


怖くて声が震えてしまった。


自分の浅はかさを後悔した。



今日、SNSで連絡をくれたのは、1度会った事のある男の人だった。


どこかの会社の偉い人みたいで、前回は、設定した金額よりも多く払ってくれた。


性格は少し強引なところはあったけど、悪い人ではないという印象だった。


今回は、"お金を多めに払うから、いつもと違う事をさせて欲しい"と言われた。


少し考えたけど、"痛くない事なら良い"と返答した。


結局のところ、僕はお金に目が眩んだんだ。


こんな事ずっと続けたくはなかったし、1回の行為で沢山のお金が手に入るなら、それに越したことはなかった。


全てはお母さんとおばあちゃんを助ける為。


ただそれだけだったのに。

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