帰宅

Side 葵


サクが僕の最寄りの駅まで送ってくれて、そこでバイバイした。


なんだか、一日があっという間だった。


「ただいま。」


「葵、びしょ濡れじゃないの。早くお風呂入りなさい。」


家に帰ると、おばあちゃんが心配そうに飛び出して来てくれた。


「うん。おばあちゃん、ごめんね。外泊した上に帰るの遅くなっちゃって。」


「大丈夫よ。ちゃんと連絡くれたものね。お友達と遊んでいたの?」


「うん。今日ね、初めてロックバンドのライブに行ったんだよ。音が凄くてビックリしちゃったけど、凄く楽しかったんだ。」


まだ興奮が冷めないのか、僕は自分で驚くほど饒舌だった。


「凄く楽しかったの、顔を見ればわかるわよ。」


「え、顔に出てる?」


「そりゃあもう、とってもウキウキした表情よ。」


僕そんな顔してる?


恥ずかしかったけど、おばあちゃんが嬉しそうな顔をしてくれたから、僕も笑った。


楽しかったなぁ。


辛い事を忘れられるくらい、本当に楽しかった。

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