白い壁

「あれ、まだ起きてたのか?」


シャワーから出ると、葵くんはベッドの上でスマホをいじっていた。


「はい、でももう寝ます。ベッド本当にすいません。」


「あーいいってほんと、気にしないで。スマホ充電する?」


「モバイルバッテリーがあるので、大丈夫です。」


「そっか。」


短い会話が終わり、また静かな時間が流れた。


俺は、ソファに横になると、電気を消した。


「それじゃ、お休み。いい夢を。」


「夢…。サクさんは、夢って見ますか?」


俺が何気なく言った一言に、葵くんは妙な質問をした。


「え、うーん、たまに見るけど。なんで?」


「僕、いつも同じ夢を見るんです。無機質で真っ白な狭い壁に四方を囲まれて、僕はどこにも逃げ出せずそこにいる。そんな夢。」


俺は、なんと言っていいのかわからず言葉を探した。


すると、「あ、ごめんなさい、気にしないでください。お休みなさい。」と言われ、葵くんはそのまま眠りに落ちていったようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る