お風呂あがりの葵

Side 朔也


葵くんがお風呂に入っている間に少しでも部屋を綺麗にしようと片付けをしていた。


親御さんには、友達の家に泊まると連絡してあるらしい。


なんか、成り行きで泊める事になったけど、よく考えたら、6歳も離れている上に、話したことの無い大人から「泊まる?」なんて言われたら警戒するよな、普通。


でも、いつも気がかりだったんだ。


コンビニで見かける彼はいつもどこか影があって、伏し目がちで、虚ろで、どこか寂しそうだった。


だから、つい目で追ってしまう。


今日だって、あんな顔して駅前でうずくまっていて、考えるより先に話しかけてしまっていた。


助けを求めているような、そんな感じがしたし、助けてあげたいと思ったから。


そんな考え事をしていると、浴室のドアが開いた。


「あの、貸してもらった服、大きすぎて着れなくて…。」


「あ、マジか。ごめん。もう少し小さい服があったと思…ッ!?」


俺は振り返って葵くんの姿を見た瞬間、俺は思わず声を詰まらせた。


葵くんは、バスタオルを腰に巻いた状態で気まずそうにしていた。


水も滴る美少年とはまさにこの事だった。


濡れた髪の毛に、少し紅潮した小さな顔。


目を見張るほど細い首筋。


女の子のように華奢な肩。


さらにその下に目を向けると…


透き通るような白い肌にピンク色の小さな突起が2つ。


なだらかなお腹。


中心にある形の良い縦長のおへそ。


折れてしまいそうな細い腰。


バスタオルから覗くスラッとした綺麗な足。


まだ子供らしさを残した未成熟な身体。


俺は思わず見入ってしまった。


「あの…サクさん…?」


「え、あっ!ごめん!服だよな服!服服服服ッ!あ、これ、さっきのやつよりサイズ小さいからこれ着て!」


俺は慌てに慌てて服を手渡した。


そんな俺の動揺に気付かないのか、葵くんは服を普通に受け取りながら「ありがとうございます。」と俺の目を見て言った。


間近に見る葵くんの顔があまりにも可愛くて、おかしな気分になってしまいそうだった。


目があって、しばし沈黙が流れた。


「葵くんって、肌白くて綺麗だよな。」


沈黙に耐えきれず俺が放ったマジで余計な一言。


「え…っ、や、そんなこと…!服、着てきます…!」


案の定、葵くんは自分の格好が急に恥ずかしくなった様で、顔を赤らめながら、慌てて浴室に戻ってドアを閉めてしまった。


あー何言ってんだ俺!!


俺はドサッとソファにダイブして心の中で声をあげた。


ドアの向こう側からはドライヤーの音が聞こえた。

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