距離感

サクさんの家は賃貸マンションの2階にあるワンルームだった。


「ごめん、散らかってるけど。」


サクさんが言った。


大丈夫ですよ、と言いたいところだったけど本当に散らかっていた。


綺麗好きな僕としては、今すぐにでも掃除機をかけたい感じ。


「服は、俺のやつ貸してあげるから。シャワーも使って。あと、ベッドも使ってくれていいよ。俺はソファで寝るから。」


「そんな、悪いです。僕がソファで寝ますよ。」


「いや、遠慮しなくていいから。俺はどこでも寝られるし、葵くん、なんだか疲れた顔してるからちゃんと寝た方がいいと思う。」


僕、クマでも出来てるのかな。


確かに遅くまで勉強していて、睡眠時間は少ないけど。


「葵くんは、高校生くらい?」


ぼーっと考え事をしていると、サクさんが僕の顔を覗き込むようにして聞いてきた。


その時にちゃんと間近で顔を見た。


かっこいい顔…って少し思った。


「はい、高3です。18歳です。」


「高3なんだ!高1くらいだと思ったよ。」


「よく下に見られます。童顔だし背も低いので…。」


「こうやって並ぶと、10センチ以上差があるもんな。まぁでも成長期だし、これから伸びるだろうね。」


サクさんは、僕に近付くと、隣にたって背比べをするような仕草で言った。


急に距離が近くなり、肩が触れて、なんだか緊張してしまって、僕は少し慌てた。


「…っ、サクさんは何歳ですか?」


誤魔化すように質問をしつつ、ほんの少し距離を離した。


「俺は、24だよ。いい歳してフリーター。笑っちゃうよな。明日は土曜日だから、学校は休み?」


「はい、明日はお休みです。」


「よかった、それならそんなに早起きしなくても平気そうだな。俺は、明日は夕方までなら空いてるから、ゆっくりしていいよ。ちょっとトイレ行ってくる。」


そう言うと、サクさんはトイレに行った。


なんか、普通にいい人だった。


変に警戒していた自分が恥ずかしくなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る