Pants Vanish! 世迷い学園裁判~世界から消えたパンツ事件~

めぐすり@『ひきブイ』12/15発売

第1話 プロローグ~純粋で愚かな願い~

 私立ローゼンクロイツ学園。

 バカげた名前だが歴史はあり、卒業生には熱狂的な支援者もいる。

 その熱狂的な支持者の卒業生に買収されたからこんな名前だ。買収した卒業生は外国とは縁もゆかりもない日本人女性。同人業界の薄い本で財を成したとか。

 当時理事会は抵抗したが金の力には敵わなかった。少なからぬ受験者を減らしたが、男女共に制服が可愛らしく一新され、濃い生徒が集まるようになった。もちろん周囲の高校からは避けられている。

 旧名は世迷学園。自然豊かな広い敷地と文化財指定の校舎。交通の便の良さから隠れた人気を誇るその学園には寺子屋時代から続く秘密がある。

 

 世迷い様。

 

 土着信仰の流れをくむその神様は昔から寺子屋のそばに祠があり、学園となった今もオカルト好きの若者の信仰により生き永らえていた。

 曰く『どうでもいいことで人生に絶望したら世迷い様に行け。きっと願いを叶えてくれる。恋愛とか受験とか真剣な願いはするなよ。ガチで祟られる』

 まことしやかに生徒の間で受け継がれるローゼンクロイツの裏校訓である。


「――願いは本当にそれでいいのね」


「……男に二言はない」


「無様ね。他の選択肢もあったでしょうに」


「ないな。好きな人の笑顔を曇らせることになっても、俺にはこの道しか選べなかった」


「まあ私としては面白ければいいわ。この世迷い様を楽しませない。赤座新九郎」


 今日もまた一人、世迷い様と契約を交わした。


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