第9話 我が愚妹の記録 中編
妹は母子共に無事出産できた様だ。妹は生まれた赤ん坊、甥に護助と名付けた。
この甥、部下の報告によれば生まれた翌日には立てたらしい。「馬鹿な」と思ったが霊力を扱えたなら例え虚弱体質の人間でも健康な人間と同じくらいの事ができるようになる。
それなら赤ん坊が霊力を扱えば立つこともできるだろう。だがそれは霊力が扱えたならの話。赤ん坊の頃から霊力を扱えるなんてありえない。
その報告を受けてから月門家では二つの意見で分かれた。「月門護助は赤ん坊時から霊力を扱えれる天才児」と「人間の姿の化け物」だ。
後半の意見は「化け物染みた実力の人間」と言う意味ではなく、そのままの意味の「人間の姿をした化け物」だ。
護助の正体を探る為にも監視を更に強化させた。どうやら年齢を重ねる毎に護助の身体能力が上がっていき、二歳の時には護助の身体能力は、二十代の平均能力の二倍にまで上昇していた。
霊力の感知に長けた部下によると護助は霊力を使わず素でその身体能力らしい。
その報告で月門家は護助が「人間の姿をした化け物」と判断した。半妖にしろ憑依にしろ、変化にしろ、普通の人間ではない。
護助が三歳になり、身体能力も二十代平均の三倍になり、年齢に釣られて身体能力が上がると我々月門家が理解した年。
妹が第二子を出産した。
そして蛇口は、またも出産には立ち合わず、他の女と逢引きしていた。貴様が妹達に手をあげているのは知っているからな?
蛇口を「殺してやろうか?」と考えたがそれ以上に心を乱された事が起きた。
妹が出産したその第二子が出産直後死んだのだ。この報告を受けた時「死んだ!?」と思わず声が出てしまったが、すぐに息を吹き返したと聞いて安心した。
妹が第二子を出産して二年。第二子の長女、美玲は順調に育ち第一子の長男護助とは違って至って普通の人間らしい。ただし赤ん坊にして既に霊力を扱えるらしくこちらは本物の天才児だった。
蛇口がとうとうやりやがった。
所属していた暴力団の組長を指して暴力団の金を持ち逃げしたのだ。
暴力団の男達が妹の住むアパートにやってきて妹達を襲おうとしたところを護助が助けた。
護助は妹と美玲を連れて監視につけて来た部下達に接触。そして月門家に連れて行く様頼んだ。
部下から護助がこちらへ連れて来ても良いかの許可を求められたので許可を出して、我が月門家に連れてくる様にした。
妹がここに到着すると深夜になる。家族は眠らせ俺一人で出迎える事にした。
「大きい……」
少し大人っぽくなった妹の側にいた五歳ほどの少年、護助が妹達の中で最初に言葉を発した。
あれが護助か。写真や映像で見ていたから顔と名前は知っていた。しかし、ふむ。俺のガキの頃にいているな。
それよりも、久しぶりの美湖だ!なんて言葉をかけようか?
「どの面下げて戻ってきた、馬鹿妹よ」
馬鹿!馬鹿は俺の方でしょ!違うだろ!久しぶりに会った妹にそれは無いだろ!
「我が行いによる不祥事。申し訳なく思っております。また、この度こちらの都合により大変心苦しいのですが、この家に戻る事をどうかお許し願います」
ああ……!美湖、俺に頭を下げなくても良いから!別にあの件については“俺は”全く気にして無いからな!全部蛇口が悪い!だから頭あげて?
やばいどうしよう。俺の最初の一言であの件についてメッチャ気にしてるみたいじゃないか!?
確かに親父やお袋、親戚なんかもまだ許してないところはあるだろうけど!
あぁぁぁぁ!俺は一体なんて言えばいいんだ!?
「クチュンッ」
気まずい雰囲気に何を喋ろうか悩んでいると妹が手を繋ぐ二歳程の女の子がくしゃみをした。あの娘の名前は美玲ちゃんだな。妹が小さくなったみたいな可愛い女の子だ。天使かな?
「とりあえず、家の中に入れ。こんな寒い夜だと子供が風邪をひく」
美玲ちゃんのおかげで言葉を出す事ができた。今は冬の深夜だ。当然寒いので妹達を家の中に入れる。
「護助、君だったかな?君はあっち」
廊下を歩いて分かれ道に着いたところで俺は護助を妹達から切り離した。
ーーーーー
昨日は更新が出来ずすみません!リアルが忙しくて!
今日はあと一個更新しようと思います!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます