第5話 我が猛獣よ、鎮まれ! 中編
ーバシャンっ!
「うわっぷっ!?ん……ここは。俺は一体?」
水をぶっかけられ俺は意識を覚醒させた。
どうやら座らされているらしい。
ん!?腕が動かない?足も?足の方は見えなかったが腕は見えた。金属の輪っかが椅子の腕を置くところに固定していたのだ。
その上、腕に点滴のような物が隣に置かれており、それに繋がった管が針で俺の腕に繋がっていた。
「な、なんだよコレ!?」
「起きたようだな」
「っ!?」
声をかけて来たのは叔父さんだった!?
「お、叔父さん!何コレ!?」
「貴様らを拘束する為の椅子だ」
貴様らって、まさか……!。
「まさか、母さん達に何かしようなんて思ってねぇだろうな!?母さん達に手を出したらぶっ飛ばすグハッ!」
「喚くな」
叔父さんはその手に持つ刀の鞘の方で俺を頬を叩いた。
「奴らには何もしておらん。奴らは人間だからな」
「俺にこんなことして、一体何が目的だ!?」
「貴様ら化け物の正体を暴くだけだ」
そういうと叔父さんは点滴の袋に注射器で何かを注入した。手慣れてる?
「そ、それは?」
「毒だ」
「毒ぅ!?」
毒!?何考えてんの!?なんで?なんで!?
「これは特殊な毒で、量に関係せず体内に入ると五分であの世行きだ」
何してくれちゃってんの!?アホなの?バカなの?死ぬの!?
死んじまうよ俺!?
「何してんだよ!?やめろ!これを外せー!」
流石に命の危険を感じたので抵抗した。始めに叫んで叔父さんを止めるよう説得、あと部屋の外にいる誰かに聞こえるように。
だが、
「叫んでも無駄だ。外に音が漏れない遮音壁を部屋は囲まれている。それに結界も張ってある」
結界ってやっぱり異世界か!なんて冗談は後にしてならば!
「ふっぬぬぬ!ふごおおおおお!」
今更だが、俺は転生特典なのか身体能力が二十代男性の平均の五倍あるのだ。握力ならチンパンジーに少し劣るくらい。
腕を固定する輪っかは厚さは1センチも無い。5ミリくらいかそれ以下だ。こんな薄い輪っかなら俺の身体能力でも壊せるぜ?
「あれ?ぬぬぬぬぬっ!ほわぁ?なんで」
だが一向に壊れない。それどころか音すら出てない気がする。何故に?
「その椅子はただの拘束椅子ではない。我ら退魔師が貴様ら化け物の為に施した対魔の術が施された拘束椅子だ」
てことは俺は人間じゃなくて化け物ってことなのか!?っ!きゅ、急に身体の中が熱く、い、痛い!?
「どうやら効いてきたようだな。この毒は一分すると身体の奥が熱くなり、その熱は痛みへと変わっていく」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!?なんだなんだ!?急にーが!そ、それに熱で熱った身体から出た汗が多いせいかだんだんと寒くなってきたぞ!?
更に痛みが増してきた!?
「ーーーーっ!?」
「二分経てば全身が冷えだし、痛みは更に増して行く。そして此処まで来ると貴様ら化け物が正体を現す頃だろう」
はあ!?正体を現す?無理です!そもそも正体は人間だから化け物になったりとか悪魔の形相になったりとかしません。てか、余計な力が出せません!
「人間の姿をしている化け物は三種類いる。半妖、憑依、変化。半妖は化け物と人間のハーフ。憑依は只人に取り憑いた化け物。変化は化け物が人間に化けたもの」
「ぐぐぐ……!」
今そんな解説どうでも良いから!この拘束解きやがれ!
「貴様に流れたその毒は最終的に五分後には全身ドロドロに溶かされて死ぬ。だが五分経たずに死んでいなければ、解毒剤でその毒自身が宿主の身体修復し、ボロボロなる前身体より更に良くしてくれる。つまり超人にしてくれる」
何!?つまりそれこの苦しみから解放されるって事なのか!?
「物欲しそうな顔をしているがまだ解毒剤を渡すわけには行かんよ。貴様が正体を現すまではな」
だから俺は人間だって!
「貴様ら化け物は貴様ら自身もしくは宿主が命の危険に遭うと半妖なら生存本能で化け物の方が強く現れるようになる。憑依なら宿主から逃げる為か宿主を生かす為に表に出てくる。変化なら変化どころじゃなくなるか俺から無理矢理解毒剤を奪う為に変化を解く」
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