第30話 カメガエル(続き)
さて。
再び話は横道に逸れるのだが、二つ前の章で「覚えていられたらだが」としていたカメガエルのオス選びについて、その続きを書いておきたいと思う (忘れそうだからね)。
確か、前々章で私は、次のような疑問を提起して終わっていたのではなかっただろうか?それはつまり、
『彼女たちはどのようにして【体重約70%のオス】を見極めているのか?』
と云う疑問である。
実は、この答えは非常に簡単で、
『彼女たちは、オスの鳴き声の高さ低さを聞き分けて、その大きさを見極めている』
のである。
繁殖期になるとカエルは鳴く。鳴くのは全てオスでありメスは鳴かない、と云うか鳴けない。
声の低いオスは体が大きく体重も重いが、声の高いオスは体が小さく体重も軽い。
そこで彼女たちは、黙ってオスの鳴き声を聞きながら、その鳴き声の高さ低さからそれぞれのオスの体重を推定、自分に見合ったオスを選ぶのである。
驚くのは、そのオスの鳴き声の高低から【(自身の)体重約70%のオス】を見極められるその能力の正確さだが、まあこれも、『自身の生き死に』と『自身の遺伝子を残せるかどうか』の両方が懸かった一生に一度の場面であることを想うと、彼女たちとっては当然の、驚くに値しない事柄なのかも知れない。
と云うことで。
以上が、生物の不思議について考えさせてくれる『カメガエルのオス選び』と云うお話だったのだが、実は、この『音の高低』をコミュニケーションの基盤に置くことの方が生物の普通であり、『言葉』というものを発明した我々人類の方こそが異端である――と考え方もあったりなかったりする。
と云うのも、宇宙全体で見た場合、『言葉』に頼らず、この『音の高低を聞き分ける能力』の方を特段に進化・発展させた種族・文明と云うのが結構な割合で存在……と、こんな話をしているうちに今度は石神井公園の方で何か動きがあったようだ。
なので、この続きはまた後ほどにさせて頂こうと思う。もちろん、これも覚えていられたらの話なのだが。
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