第81話 ついでに被害者の会も結成

 翌朝、全員がアーニーの自宅に集まっていた。


 アーニーを中心に、扇状に並んでいる。


「みんな。集まってくれて感謝する。これからGvG用チーム【アンサインド】を結成する」


 アーニーが宣言した。


「新しく今日から参加するメンバーもいる。自己紹介と職を名乗ってもらおう。まずは俺からだ。ついで右から順に名乗っていってくれ」


 アーニーは一歩前にでる。


「俺はアーニー。【アサルトパイオニア】という戦争職だ。建築特化のレンジャーみたいなもんか。特殊な古代語魔法と精霊魔法を使うことができる」


「ウリカ。【マナヒーラー】です。MP支援と回復支援を行います」


「ポーラ。【ウィザード】だよ。攻撃魔法が得意だね♪」


「エルゼです。【バード】で、呪曲を中心とする支援を行います」


「ジャンヌです! 【パラディン】ですよ。みんなを守るね!」


「イリーネ! 冒険者の職は【ファイター】。タフさが自慢だよ!」


「ロジーネです。冒険者の職は【パペット・オペレーター】ですね。鋼線を使った中距離攻撃や、罠を得意とします。敵を縛ったり操ったりもできます」


「俺はニック。【グラディエイター】だな。タイマン特化のアタッカーだ」


「私はパイロン。【ドラゴンファイター】。跳躍を得意とする特殊アタッカーです」


「ラルフだ。【テラーナイト】。集団用対人スキルを多く持っている」


「カミシロです。おっちゃんと呼んでください。【アークビショップ】やってます。回復のはお任せを!」


「テテです。【シノビ】です。偵察、暗殺等の隠密活動を得意とします」


「ロミーだよ! 私はみんなにくっついて、支援するからよろしくね!」


「コンラート。【アーチャー】だ。長距離狙撃が得意だ」


「私はユキナっていうハイオーガ。【ファイター】だ。接近戦でがんばるぜ!」


「レクテナです。昨日この町にやってきました。【付与術士】です。支援魔法が中心となります」


 挨拶が終わったことを確認すると、アーニーは皆に告げる。


「力を合わせてがんばろう。俺の守護遊霊は人使いが荒いが勘弁してくれ。皆の特性にあった役割を今から一人ずつ説明していく」

「パーティ組んで集団行動とかはあんまりない?」

「あまりないかもしれない。ありがたいことに、皆戦略にあった職業だ」

「願ったり叶ったり、だ。どうもパーティ組むことは苦手でね」


 コンラートが言った。


「正々堂々とかけ離れた戦いになる。そこはすまないと思う。単独行動は危険が増すからな」

「それこそ願ったり叶ったりだ」

「同じく」


 コンラートとテテが同意する。


「共通認識は先に話そう。敵は精鋭冒険者C級、B級を中心とする精鋭冒険者。しかも【城塞戦】というルールを利用して俺たちを抹殺しようとしてきている」

「抹殺ですか?」

「こちらの【城塞】を占拠し、復活ポイントを抑え虐殺、陵辱、完全制圧を狙ってくるはずだ。男はロスト、女は嬲りものってところか。200人の精鋭がいるんだ。やりたいほうだいだ」

「本当に最低な奴らですね」


 エルゼが怒りを隠さない。


「ルール上は可能なんだ。守護遊霊がいう【仕様】だな。しかも【城塞戦】で死んだ【選手】プレイヤー、つまり冒険者はデスペナも苦痛も五分の一。気軽に死ねる」

「ルール上であればなんでも許される、と」

「そう。だから、手痛いしっぺ返しを受けてもらう」


 アーニーがにやりと笑った。


「ルールを自分たちだけが理解していると思い込み、精鋭の数に任せて暴れる連中に一泡吹かす、これが狙いだ」

「いいね!」


 イリーネが意気込んだ。


「初手は制圧狙いでくるだろうと予測。そこは普通に【城塞戦】をしてやろう。皆思う存分暴れてもらう」

「楽しみだ!」

「こちらの狙いを気付かれては困るからな。そこからが本番だ」

「というと?」

「それ以降は、今から一人一人で説明する戦略で、暴れてもらう」


 アーニーは確認するように考え込み、話を再開する。


「ウリカ、エルゼ、そして中心人物はおっちゃん。三人から話していこう。他の人間はその間、適当にくつろいでくれ」

「へ? 私?」


 カミシロが目をぱちくりさせた。


「そうとも。今回の戦略の核となる」

「私たち支援職が? 支援の方法ではなく?」


 ウリカにはぴんとこないようだ。戦争や対人戦の花形はアタッカーである。


「攻撃の要だ」


 アーニーは不敵に笑う。ろくでもない攻撃だということを三人は察した。


「わかりました。話を聞かせてもらいましょう」


 アーニーが三人を引き連れて自室に消えた。


「あー。とんでもない戦いになりそう」


 ジャンヌが言う。


「想像つかない戦いになるよね。私たちの亜人解放戦争もそうだったよ!」

「今回のほうがぶっとんでそうですね」


 ドワーフ姉妹もアーニーの戦略を楽しみにしていた。


「先生。お久しぶりです」


 ポーラがレクテナに声をかける。


「やっぱりポーション屋のポーラさんですよね。こんなところで再会とは」


 見覚えのある生徒に目を細めるレクテナ。今は教師ではなく、一冒険者だ。

 普段の威厳は潜めている。


「あはは。アーニーは迷宮ひきこもり時代の幼なじみなんです。あいつが急に失踪しやがって。探しにここまで。せっかく再開できたら、あんな可愛い美少女と同棲ですよ?」

「――あの子、本当に変わってないのね。ウリカちゃんは私もびっくり。悔しいけど可愛いですね」

「そうですよ。そういう意味でここは居心地がいいですよ。アーニーに置いていかれた女性の、いわばアーニー被害者の会ですから」

「ッ!」


 レクテナが息を飲んだ。周囲はにやにやしている。


「いえてるね! ついでにアーニー被害者の会も結成だね!」

「そうですね!」

「私の席は空いているかしら?」

「もちろんですよ!」

「私も入っていいですか?」


 ジャンヌも片手を挙げて参加を要求する。残された男性陣は団結した女性の恐ろしさを感じながら片隅で震えている。


 まったく関係ないところで、大変な盛り上がりを見せていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る