伍話:異端いつき 其の序
ー序ー
「はぁ〜、休まるわぁ。流石に本格的な依頼ははキツイわぁ」
黒皮のソファにぐでっと寄りかかった
【
相変わらず外見からは近寄りがたい雰囲気を醸し出し、内装はやたらとお洒落なこの事務所。
しかし、一点だけこれまでと異なる点がある。
それは……。
「ふふっ、
「……
「ま、みことちゃんがレディーかと問われると、少しキツイものがあるッスけどね」
「イッキュウさん、話に割り込んできた事後悔させたるから、表出な?」
「あはは、そう言われるのも無理ないよ。実際、クインは強気な性格だからね。レディーはもっとおしとやかじゃなきゃ。今のクインはまだ可愛らしい女の子の域は出れないね」
「うぐぅ、
「そこまでは言ってないんだけどなぁ」
そう、事務所内に
一週間前、
僕らも彼の事を認知した為、こうして彼も表向きに事務所に訪れるようになったのだ。
にしても、今日事務所に来て特に驚いたのが
こないだ
確かに僕だって同じ複雑で懐疑的な気持ちもあったが、それまでの一週間仲良くしてきただけあって、特に
しかし……。
「いつき、暇だからジェスチャーゲームしない?」
「いや丁重にお断りしておくよ。やりたいジェスチャーって第三部の潜水艇でのアレだよね」
「流石は
「あはは、俺ああいうの苦手なんだよ。ほら、その……何ていうんだっけ?」
「下々のお遊びッスね」
下ネタをそんなにオブラートに包む人初めて見たな。
おそらく多少世間知らずである
「あー、そういう名前でしたね。そう、俺は下々のお遊びが苦手だからね」
いや、気付けよ。
イッキュウさんに遊ばれてるぞ、
ほら見ろ、クスクス笑ってるぞあの人。
「えぇ……叩く・数字の2・OKサイン・目を凝らすの動作は下々のお遊びなんかじゃないよぉ。神聖で崇高な儀式だよぉ。
あんたも乗るんか、
それに神聖と崇高はほぼ同意だから。
てかそんな聖なる儀式では無いだろ、あれ。
完全におふざけだろ、どう見ても。
と、このようにして、
それも、キャラが崩壊するほどに。
まさかこんなにふわふわした
てか見たくなかった……みたいな事をよくネタとしてやる作品も多いが、僕的には面白いからその点は見れてよかったと思っている。
それにしても一体、一週間で何があったというのだ。
「あ……すみません、三人に御留守番御願いしてもいいですか?」
「あ、はい。分かりました。えっと、ホトさんとイッキュウさんは何か用事でも?」
「えぇ。この子の
そう言ってホトさんは腕に抱きかかえた毛玉のような物体を見せつける。
……この物体、見覚えがある。
そうだ、こいつは……。
「
「失礼しちゃうわね!わたしの名前はなんちゃらじゃなくてズゥラー!!ご存知、愛くるしい小動物の毛玉のような見た目の【怪異】よ!間違えないで頂戴なっ!!」
いや、間違えた訳では無いんだけど。
単純に名前忘れただけだったんだけど。
にしてもこいつ、こんなキャラだったっけ?
「流石は天才的な【怪異】専門の
「それ以上はいかん、アウトラインを超え……もうとっくの昔に超えてるか。それに二度目だったなこのネタ」
「ちょっと
「だから止めとけ、止めとけ。ネタの使いすぎは逆に面白く無くなるからさ」
「
「あ、ホントだ……いや、これは違うから。意図して言ったわけじゃあーー」
「るぅぅぅぅっっっっっっっ!!!」
「煩いわっ!!てか、どうせなら最初からやり直せばいいのに。そこだけじゃあ何なのか分からんだろうが」
僕は
すると、シーン……一瞬にしてすべての音が消え去る。
この感覚がたまらなくて、最近ハマってるんだよね、暇な時にヘッドホン付けるの。
にしても今日の
金曜日に学校で会った時はこれといって変では無かったというのに。
いや、前から少々おかしかったけど。
なんなら僕も言えた立場じゃないんだけど。
ほんと、何があったんだ……。
それにしても、以前
あんなに(主に
「それじゃあ
「だからその
「いっつもホトさんは
「私個人としては、あまり
ちなむと今日、
どうやら体調不良らしく、此処にいないのは相当珍しい事のようだ。
……あの子、年下だよな?
つまり普段から学校行ってないって事になるけど、義務教育はどうなってるんだ?
「ん?ホトちゃん、俺含めて四人の間違いじゃ無いッスか?」
イッキュウさんが指摘をする。
僕も丁度それが気になっていた。
さっきから三人で御留守番とホトさんは言っているが、今此処には四人居る計算となるわけで……。
「何言ってるんですか?イッ君は私の付き添いをするんですよ?」
「まさかの強制!!え?何でスか?わざわざ俺、行く必要無いッスよね?」
「行く必要ありますよ。だって私、道分かんないですし」
「は?何フザけた事吐かしてんスか?ホトちゃん、かれこれ二年程度を俺らとこの市で生活してるじゃないッスか。まして【
「と言われても困るんですよねぇ。だって普通じゃないですから。私が極度の方向音痴だってイッ君も知ってますよね?」
「えぇ、知ってますとも、誰よりも。でも、流石にこの程度は……」
「もしかして私の事舐めてます?残念ながら私、イッ君の思うこの程度でも迷う自信ありますよ!」
「なんでドヤ顔なんスか。そこ、誇るとこじゃないッスよ」
「道に迷って隣の市内を彷徨いているところを警察に保護され、イッ君が迎えに来る……そんなビジョンが既に私の中で構築されてますが?」
「もう迷う前提なんスね……分かったッスよ、えぇ、分かりましたとも。付行てきゃいいんでしょう、付いて行きゃあ。てことでみことちゃん、はるま君、いつき……区別したいけどパッと思いつかないんで呼び捨てにするッスねーー三人仲良く御留守番を頼むッス!!」
そう言い残してイッキュウさんは勢い良く事務所を飛び出して行った。
「じゃあ、宜しくお願いしますね」
「あぁ、わたしの麗しきまんまるふわふわボディ……愛おしいわ、世界一……」
イッキュウさんを追いかけるようにしてホトさんと……やたらと
そっか……ホトさんだけは比較的まともだと思ってたけど、どうやらそれは気のせいだったようだ。
そうしていよいよ三人だけとなった事務所は静まり返る……事は無かった。
「面白いね、彼ら。やっぱり傍観は楽しいな。ただ俺だけ呼び捨てなのがちょっと癪ではあるけどね」
「ほんと好きだよねぇ、傍観するの。あ、そうだ。ねぇ
「突然だね、ほんとに。う〜ん……方法としてはまず新の意味の平和を実現させる事かな。今の現状じゃあ地域格差が大きすぎて、世界全体にジョ○ョを知らしめるのは難しいからね。その為にはなるべく争いの無い世界を作らなきゃいけないけど、それは不可能に近い行為だね。唯一の可能性とすれば、共通の敵が現れる事ぐらいだろうね。そうすれば、一致団結して挑むだろうから、少しは平和な世界が築けるかもしれないね。ただ、内部での争いが起こる事もあるだろうから、必ずしも確証がある訳じゃあ無いんだけどもーー」
「いつき、そんなに広い話はしてないから。範囲が大き過ぎて、私追いつけて無いから……ってどうしたの、はるま?そんなに顔、暗くして」
「……悪い」
「え?」
「気持ち悪いんだよ、このフインキがぁ!!」
「
「細かい事なんてどうでもいいだろ!あと、僕はそんなマウント取るようなキャラじゃない!!それに格言好きでは断じて無い!!」
「否定するのは国語苦手扱いされたとこでしょ。格言好きはそのとおりじゃんか。で
「二人の態度だよ、
「ふはは!そっか、そっか。そういえば話してなかったね、
「ふふ、じゃあさ、折角だし聞かせてあげようよ、
「あぁ、そうしよ、そうしよ」
「聞かせるって何を?」
「この一週間で起きた一連の出来事について、さ」
正直に言ってめためた気になる。
この二人の仲が深まったという七日間、用事があるとかで僕に学校の調査を任せていたが、それは関係があるのだろうか。
「じゃ、早速始めてくね!語り部は私、
こうして尊命を主軸とした一つの物語(を語る会)が幕を開けた。
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