第10話 魔宮

「洞窟って初めて来たけどこんなにジメジメしてたんだなぁ…」


俺は調査対象の洞窟を見つけ、そこにもう2時間こもっていた。そろそろ『記憶のかけら』が光ってもいいような気がするのだが…


「これ、もしかして壊れているのかな?」


《賢者の知識:魔力反応はあるので壊れてはいないかと思われます》


マジかよ…壊れてないってことはもっと奥まで進まないといけないじゃん…げんなりしながら俺は奥深くまで行くのであった。



「ああーもう無理。精神的にこの洞窟はきついわ…」


3時間以上が経過し、さすがに体力的にもきつくなっていた。進めばどんどん魔物が出てくるので、そいつらを倒してまた進む。そんなことを繰り返しているとあることに気づく。奥に行けば行くほど魔物の数が増えているのだ。


「なぁ先生。これっておかしくないか?」


《賢者の知識:何がおかしいのですか?》


「だってここは洞窟なんだよ?外より魔物が多いことなんてありえる?」


《賢者の知識:…なるほど。冒険者ギルドの調査対象が分かりました。おそらくこの洞窟内に魔宮があると推測します》


「魔宮?」


《賢者の知識:はい。おそらくは高濃度の魔力に当てられてできた突発型魔宮かと》


「そうか…ていうか突発型魔宮って何?」


《賢者の知識:まずは魔宮の話からしましょうか…魔宮とはある場所が一定の魔力で満ちた時に発生する一種の遺跡のことです。その中にはとても強い、通称『ネームドモンスター』と呼ばれるレベルの魔物が最後に待ち構えています。基本的に魔宮は長い時間、あたりの魔力を吸い込んだ土地がなるものなのですが…稀に少しの間でより濃い魔力に当てられるとできる場合があります。これを突発型魔宮というのです》


「なるほどね…急に現れたから突発型魔宮と言いたいわけね…」


《賢者の知識:そういうことです》


しかし、一体こんなところで何があったんだろうか?先生によれば魔宮は普通は長い時間かかってできるものだと言っていた。突発型魔宮でさえも短時間とはいえ高濃度の魔力に当てられないとできないのに…


「…でも『探知』には魔力反応は見られなかったよね?」


《賢者の知識:はい。ということはその魔宮に魔力隠蔽機能が働いている可能性があります。そうなるとマスター1人の力では100%勝てないでしょう。ここは早く帰ってギルドに報告するのが得策かと》


「でも『記憶のかけら』は光っていないし…」


《賢者の知識:…ちょっとルール違反ですがそれを地面に置いてみてください》


「はぁ?」


そう疑いつつもとりあえず置いてみる。すると、


「え…?光り始めた!」


《賢者の知識:その魔道具はおそらく魔力に反応して調査対象地域に行ったことが分かるのだと思いました。そしてこのあたりは突発性魔宮のせいで魔力濃度が濃くなっている。そう判斷したので地面に置いてもらいました》


「なるほど…でも魔力は『探知』できなかったはずじゃ…?」


《賢者の知識:『探知』はできなくても魔力は地面に染み込んでいます。なのであえて地面に置くように言いました》


なるほどね…ようするに魔力自体は探知できないけどその残り香というか残滓というか…は地面に染み込んでいる、ってことね…ゲームの裏設定でそんなことあったなぁ…


「よし、とりあえずここを脱出しよう」


そう決めて俺は来た道を戻るのだった。


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