5話 空戦
いま逃げてもすぐに追いつかれるッス。
一戦、交えるしかないッスね。
「ジュマ」
「ジュマ!」
空間倉庫からスピール、ハローを取り出し、私がいる屋上から下の窓に向かって構えたッス。
ハローは見た目ハンドガンなんッスが、引き金を引き金を引くだけで魔法が使えるッス。
──それに。
ダン、ダン。
ダン。
「きゃああー!」
「うわっ!」
散射にしておくことで魔法を散弾にして撃てるんで、窓から飛び出してきても当たるッス。
魔法なのに火薬の銃声をさせて混乱を狙った仕様にしてたッスが、こうなると意味ないッスね。
「桜ちゃん! 真咲!」
「ガッデム!」
「このヤロー!」
私はそれを
「!!」
「キャッ!」
しれっと発動する、無音の閃光魔法。
上を向いてるとこへなんで、効果てきめんッスね。
動きが止まっているこの隙に──。
スパパパパパパ。
おっと。
さきほど、お二人が撃ったもんが上から降ってきたッス。
白い光をした魔法の矢。
屋上に当たって、六発全部弾けたッスが、これは追尾機能があるみたいッスね。
まあ、撃ったのはクロスボウの形をしているッスが、
「く……」
「チクショウ」
意外と回復が早いッスね。
しかも目を閉じて青い半透明のサングラスみたいなのが展開したッス。
どうやらこれは魔力でできたカメラ。
そんで、同じ手は通じないと、そういうわけッスね。
「おら!」
「くらえ!」
一斉射撃を避けるべく、私は横へ跳んで、屋上から飛び降りたッス。
このままだと落っこちるわけッスが、大丈夫ッスよ。
「
「了解です」
元気で誠実な声とともに私の金髪ツインテが光沢のある水色ツインテに変わり、
ツインテは
羽彩はこのとおり、飛行能力。
そんですかさず──。
ダン、ダン、ダン。
「シット……」
目立つギタリストさんに向けて三発、散射。
途中、翼がギタリストさんを包むようにして、防御したッスが、被弾したところから小さな金色の炎があがっているッス。
「こ、このー!」
家出さんが応射してきたんで、私はさらに上昇して回避。
さっき私が跳んで避けた魔法の矢たちも戻ってきたッスね。
一メートルくらいの軌跡を残しながら飛んでるのはきれいッスが、当たれば大ダメージ。
それにその矢はその魔力が尽きるまで追尾を続けるっぽいんで、逃げながら撃ち落さないといけないッス。
私はハローを散射から連射に切り替え、引き金を引いたッス。
パラララララララ……。
軽機関銃のような銃声をさせながら、規模の小さい金聖魔法を連続発動。
牽制で家出さんに撃ってから、ここを離脱するように飛びつつ回避行動と迎撃ッス。
右へ──。
左へ──。
上へ──。
下へ──。
前へ──。
後ろへ──。
回転!
ひねり──。
パラララララララララララララ……。
パン! パン! パン! パン! パン! パン!
はたから見たらサーカスじゃないッスかね。
ぐるんぐるん飛びまわって、次々と金色の火を咲かせていってるわけッスから。
とはいえこれは見せ物じゃないし、正直きついッス。
飛んでいても、いわゆるGは羽彩の能力で抑えられているんでいいッスが、飛来物に向かって連射しながらッスからね。
肉体も精神もフル稼働。
フレアでもデコイでも、代わりに受け止めるものがほしいッス。
「待て、このヤロー!」
離れていってるんで、家出さん、追ってきたッスね。
防御したとはいえギタリストさんは被弾してるんで、追ってくるにしても、回復に時間がかかるッス。
「お返しだ!」
お、体育さんが撃ちながら飛んできたッス。
散射の金聖魔法を放ったッスが、実際に被弾したのは七発中三発だったッスからね。
リーダーさんに回復してもらって復帰てわけッスか。
しかも性格が現れているみたいな真っ直ぐな矢。
そんで──。
ブオオ─────────────────!
と、槍を射出したかのような、強烈な一撃を放ったのはリーダーさん。
「……」
地上から怒りの形相で私を見てるッスね。
その足元には気を失って横になっているお嬢様。
察するに、翼のほとんどが金聖魔法の炎で焼失したんッスね。
リーダーさんは友達がやられて怒り心頭ってわけッス。
「俺だってやれるぜ」
ギタリストさん、飛ぶのはやめて、屋上で撃つことにしたみたいッス。
あらためて追尾の矢を放ってきたッスよ。
だったら──。
「了解です彩」
最大加速で一気に家出さんの背後に回り、左腕を首に巻くようにしてギュッと拘束。
「う……、離せ……」
どうッスか。
家出さんに当たるッスよ。
「うっ」
「ちぃ」
引き金から指を離し、展開中の矢はキャンセルされて消えたッス。
いいッスね。
そこで私はハローを持った右手を突き出し、体育さんに向けて引き金を引いたッス。
「う、うわっ!」
こちらも翼がガードしたッスね。
被弾部分が火花みたいに金の炎を散らしているッス。
でも、抵抗できるわけじゃないし、このまま一方的に撃って翼魔さんを焼き払うこともできるッスが、いまはあえてやらないッス。
戦闘力を削いだところで──。
「羽彩、
「了解です」
「了解っす」
「ジュマ!」
私は空間倉庫から、さっきとは色違いのリップスティックみたいな魔法具を出したッス。
そして……。
ブシュウ─────────────────。
グレーの煙が噴出し、こちらからもあちらからも視界を遮るッス。
「ごほ、ごほ……」
あくまで身を隠すためのものなんで無害ッスが、使用者以外の人間は少々せき込むことになるッス。
そうやって姿が見えなくなっているうちに、私は家出さんの拘束を解いて、移動。
本来は三分くらい煙を出せるッスが、今回は十秒に設定しているで、 すうっと消えて元どおりになったッス。
「く……、あのヤロー、どこへいった……」
「あ、あそこだ!」
被弾して、なんとか飛んでる体育さん。
その視線の先、百メートルくらいのところに、私の姿をしたものがあるッス。
そんで。
「消えた……」
キラ、とか聞こえてきそうなかんじで光になると、それは消えたッス。
この空間から脱出したように見えるッスね。
あれは羽彩と、分身である八彩。
そんで、本体たる私は地上にある生垣のそばにいるッス。
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