4話 静殺
いま六人は二階を調べているッスが、次は三階に来ると思うッス。
何でかって、その方が効率的にいいから。
吹き抜けで中を見下ろせるんで、上に行くほど楽な姿勢で見渡せる範囲が広がるッスからね。
異常が見つけやすくなるってわけッス。
それにお互いの姿が見えれば安全を確認することもできるッス。
最初からしなかったのは、侵入者がまだ近くにいる可能性を考えてのことだと思うッス。
「あの子の情報どおりなら、あれで全員だわ」
「そうだといいッスけど」
それによれば、楽園みたいな空間にいるのは翼魔憑きさんの六人だけみたいッス。
であれば私は、その六人を相手に、六体の翼魔さんを倒して、彼女たちを現実世界へ帰してあげればいいわけッス。
読書さんが知らない情報があるかもしれないッスが、とりあえずそれを指針に行動していくッス。
というわけで、まずは移動。
壁からスーッと魔力で滑るようにして窓にくると、いったん外へ。
そこから外壁を同じくス―ッと滑って、三階のへりまできてストップ。
私が身を隠していると、華彩がツインテを伸ばして中を確認したッス。
「大丈夫。まだ来てないわ」
「了解ッス。ジュマ」
「ジュマ!」
気合いの入った声で答えるジュマ。
華彩もッスけど、みんな私のなかだけの声なんで、どんなに大声をだしても聞かれることはないんで安心ッス。
そんで、ジュマが空間倉庫から出したのが透明なフィルムに呪文を書いたような巻物。
縦が三十センチで、横が一メートルになるものを巻いたものなんッスが、これは設置型の魔法具ッス。
それを廊下の床へ転がすイメージで投げ入れて広げ、仕掛けたッス。
とりあえず二個、直列に配置。
廊下の幅が三メートルくらいで、巻物は間隔があるッスが、人が通ればどれかは反応するッス。
敷かれているのは紅い絨毯なんッスが、黒文字の細かい呪文が目立たなくなっているんで、いいッスね。
ここを翼魔憑きさんの方が通過すれば
金色の炎が翼魔さんの一切を焼き払うッス。
その後に、今度は
「
「分かったッス」
監視カメラになる髪の毛を仕掛けた華彩。
それを受けて私はその場から離れるために、
垂直の壁に居続けるのはきついッスからね。
楽な姿勢になりながら、頭の中に展開される映像と音声で様子をみるッス。
「足音、来たわね」
「このアングルだと、どっちのグループが分かんないッスね」
「ジュマ」
まあ、全員が対象なんで、仕掛けにかかってくれれば誰でもいいんッスが、できればリーダーを倒して統率を乱せれば一番ッス。
それと、足音ってことは歩いているんッスよね。
翼魔さんの力で、浮いているんだろうと思ってたッス。
と、話し声。
集中するッス。
「いったいどのような方が侵入したんでしょう。まさか、魔物とかでしょうか」
「怖い……」
「魔物だったら、食うとかのイメージがあるけど、血の跡はなかったしな」
「やはり、人間なんでしょうか」
「……」
「たぶんな。まあ、親とかは絶対に違うと思うけど」
「そうですわね。それができれば、とっくにやっていたで──」
「桜さん!!」
「え?」
ゴオオオ─────────────────。
「……!」
「は、春美さん……、春美さ──ん!」
「よせ、巻き込まれる!」
「いやあ──、春美さ──ん!」
「やばいって!」
キ────────────ン、パン!
「春美さん! ああ……」
「どうしたの!」
「あ、翔子。罠だ。廊下に何か仕掛けがあったみてえだ」
「!」
「あの炎はそれか」
「桜が先頭をいってたけど、春美が気づいてかばったんだ。そしたら春美が……」
「デム!」
「は! そこにも何かある! 離れて!」
シュン、シュン、シュン。
ボワ……。
「もう一個あったのかよ」
「うう……、春美……、さん……」
ピク。
ピク、ピク、ピク、ピク。
「こうなったら仕方がないわ。みんな、痛いけど全力で犯人を捜しましょう」
「ああ」
「そうだな」
「やるっきゃねー」
「はい、春美さんの
──残りの巻物は気づかれたッスね。
それはいいんッスが、問題はピクピクって身体が反応してたこと。
翼魔さんからの誘導を受けたみたいッスが……、みなさん、手をつないで輪になったッス。
「はあああああ────!」
声を合わせ、一人一人が魔力を中心に送って
ぎゅうっと凝縮されてサッカーボールぐらいの大きさになったそれを、今度は一気に解放したッス。
シュパー~ー~ー~ー~ー~ー~ー~ー~ー~ー~ー~ー~ー~ン!
うっ。
パー~ー~ー~ン!
天井をすり抜けた魔力の波が屋上にいる私の身体にぶつかって、跳ね返っていったッス。
ダメージになっていないし、さっきのセリフから考えて、攻撃を目的にしたものではなく、索敵を目的としたものだと思うッスが、それで思いつくのはアクティブソナー。
潜水艦なんかにあるような、音波を飛ばして相手の位置を特定するやつッス。
勢いから考えて、この空間のほぼ全域をカバーする勢い。
となれば当然──。
「いた! 屋上!」
てなるわけッスね。
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