3話 退避
まずいッス。
ここで集まってこられると私は圧倒的に不利になるッス。
私は読書さんから離れ、口を塞いでいた左手を後頭部に向けて突き出す。
「ジュマ」
同時にジュマが空間倉庫から単発式で専門化したスピールを出し、引き金を引いたッス。
スピールは魔法を撃つ銃の総称ッスからね。
イスにもたれる読書さんはそれを受けて
これは
つまり、この空間から脱出させたわけ。
そしたら今度は私がこの場から逃げるッスよ。
「ジュマ」
持ってる物をジュマが空間倉庫へ入れ、私は手すりに向かって跳んで、それをキック。
三階の手すりを両手でつかみながら、反動と
そろえた両足を四階の手すりに引っ掛けるようにして、再び反動と気で飛んで、天井と柱の
そこには当然、足場はないんで、魔力で壁にくっついているッスが、微弱なんで大丈夫だと思うッス。
さすがに気でくっつくのはきついッスからね。
そんで、私の思考が働いていたから長く感じるッスが、実際は、一、二秒。
場合によってはこれでも遅いんでしょうが、聞こえてくる羽音は読書さんがいた場所に集中しているみたいなんで、セーフってことッスね。
「
私のなかで
さっき華彩が髪の毛を一本、壁の上に放って設置してきたッスからね。
それがカメラの役割を放たしているッス。
このまま視聴してみるッスよ。
「
「どういうことですの。
「確かに……」
「どうしたんだ?」
「なんとも嫌な波長を感じたぜ」
「ああ、
「この楽園から消えたってことね」
「翔子」
「翔子さん」
「……」
「翔子ん」
「翔チー」
「文恵ちゃんが自分から楽園を出ていくとは考えられない。状況から考えて、何者かがここに侵入した可能性がある」
「ええ!」
「……!」
「マジかよ」
「まあ、翼から信号みたいなのがあったから、それは考えられるけど、だとしてどうやってここへ来たんだ。翼が無ければ入れないはずだろう?」
「どんなにいい音色を奏でたって、翼の代わりにはならねーぜ」
「そう。だけど、実際に侵入者は何らかの方法でここへ入り、文恵ちゃんは消された。最悪の場合、死んでるかも」
「ひい!」
「……!」
「マジか」
「何か目的があるにしろ、その人が友好的なら話し合いから始まるはず。それがないってことは、わたしたちを仕留めるつもりなのかもしれない」
「仕留めるって、俺たちを倒していったい何の意味があるんだ?」
「分からない。とにかく、用心して。はっきりしていない以上、予想される事態に対して対策を取ることにしましょう。伊織。ギターを弾くならみんなといる時にね」
「オッケーだぜ」
「もしかすると、まだ中に潜んでいるかもしれない。三人一組になって調べてみましょう」
「これは?」
「クロスボウですわね」
「です……」
「この競技はやったことがないけど」
「クール」
「翼が武器を用意してくれたわね。使い方は、分かるでしょ」
「おお」
「翼が教えてくださいましたわ」
「……」
「なるほど」
「イージーだぜ」
「まずはこの階から。わたしと真咲、伊織は右回りに。
「分かった」
「おう」
「分かりましたわ」
「はい……」
「行きましょう」
──ふむ。
どうやら、翔子っていう子がリーダーみたいッスね。
黒髪で肩にかかるくらいのセミロングに、ブレザーの制服を着た美少女ッス。
そんで、夕夏っていう子がさっきまで一階でお休みになっていた私服の家出風少女。
桜と春美って子は最初に見かけた二人ッスね。
ブレザーの制服ではあるんッスが、どちらもお嬢様校の物らしくデザインが洗練されていて、長い髪と上品な雰囲気からもそれが感じられるッス。
真咲って子は黒髪のショートカットで陸上選手が着るような青のウエア姿。
日に焼けた肌が健康的で身体を動かすのが大好きみたいッス。
伊織って子は、ビジュアル系ギタリストってかんじ。
ボブカットの髪型なんッスが、右半分がピンクで左半分がオレンジになっていて、黒革ワンピースの右肩から真っ赤なギターがかけられてあるッス。
で、全員、利き手にクロスボウがあるんッスが、青くて鈍い光を出している様子から、魔力でそう形づくったものッスね。
たぶん彼女たちに合わせて、
いまは二手に分かれて侵入者がいないか、調べに行ってるみたいッスが、廊下は漢字の、回、みたいなもんで、それぞれ右回り左周りで半周を担当して、異常がなければ別の階へ移動するんじゃないッスかね。
吹き抜けで反対側の壁に見える構造ッスから、対角の位置にあればお互いに確認することもできるッス。
私が隠れるところがほとんどないッスが、やりようはあるッス。
仕掛けるッスよ。
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