🚱14 交渉

 ラノベや映画などの物語にありがちな、状況説明を受けるも、納得のいくものではなかった。


 とにかく、魔物や魔獣がやたら増えた事。

 それらを駆逐する専門家は他国には居るが、この国には居ないこと。

 もし、専門家を雇うとなると、年間軍事費と同じくらいかかり、とても賄えないこと。

 自分達でそういった専門家を育てるにも、講師を招き入れる余裕はないとのこと。

 魔物や魔獣の被害が大きく、税収もままならず、他国との貿易をするほどの国力もなく、国土全部が疲弊していること。


 だから?


 そう。だから、他国に助けを求めるだけの先立つものがなく、このままでは国が維持できなくなるほどに困っていて、最後の手段として、女神に祈り、外部からの戦力や助け手を喚び出すことにしたという。


 いや、ありがちではあるけれど、だから何だというのだ。

 普通に暮らしていた女子高生(未成年)を誘拐同然に強制連行しておいて、大人でもどうにもならないものをどうにかしろと?


 漫画や映画で、召喚された主人公が、よく人の善さを発揮して魔物退治したりするけれど、考えてみて?

 全く知らない別の世界の他人のために、命がけの冒険をするメリットないよね?


 愛唯あおいはどう思ったのか、交渉を持ち掛ける。


「あなた達が困ってるのは理解したわ」

「おお⋯⋯‼」

「勘違いしないで。理解しただけ。その助け手とやらになるとは言ってないわ」

「そう仰らず、御遣みつかい様⋯⋯」


 腕組みをして偉そうな愛唯あおいにへこへこゴマをする大人達。滑稽としか言いようがない。


「私達のような子供が命懸けの行動をするメリットは何かしら? まさか、強引に連れ出しておいて、ただ働きさせる気? 私達にも、生活というものがあったのよ? それを勝手に壊しておいて、自分達を助けろとはムシが良すぎやしないかしら?」


「そ、それは勿論、それなりの謝礼とこの国での生活の保障はさせていただきます」


 考えてる事は同じなのに、なんで、愛唯あおいのは偉そうで恩着せがましく感じるのだろう。


 だが、偉そうな愛唯あおいは、衣食住とある程度の便宜は図るという補償内容を取り付けた。


 見習うべきかしら?



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