🚱11 声

 人のざわざわする気配で目が覚める。


 大理石のような天井が見える。ここどこ?


 身動ぎすると、水音がして、パーカーの裾が浮いた状態で手に触れるのが感じられる。

 浅い、寝湯のような水溜まり温水プールに寝ているようだ。


 慌てて上半身を起こす。


「あ、良かった。すぐに気がついたのね」


 すぐ傍に、美土里が座り込んでいた。


「ちょっとここはどこなの? アンタ達は何なのよ?」


 愛唯あおいの誰かに噛みつく声もする。


 美土里みどり愛唯あおいはいたけど、愛夏音あかねはいなかった。


 三人とも濡れ鼠で、女性の彫像が建っている人工的な泉っぽい囲いの中に座っていた。

 お湯とも言えなくもないぬるい水で、気温も低くないからいいけれど、このままだと風邪を引きそう。


 この泉のある場所は、一応六方を壁に囲まれた室内で、少し高く台の上にあるみたい? 美土里達が座ってる方から階段状に低くなって広がり、室内の床に繋がっている。


 ただ、周りの、泉より低くなった石張りの床にたくさんの人がいるけど、何言ってるのか、さっぱり解らない。英語やドイツ語でもなければ、フランス語や中国語でもなさそうだった。


 ただ、みな一様にダボダボの服を来て、赤い髪や黄色い髪、茶色い髪もあるけど、青や緑もあるのが奇妙で、西洋人っぽい顔立ちの外人が何人も集まって、美土里や愛唯あおいを見て興奮している。


 あ、いや、興奮って、いやらしい意味じゃなくて、嬉しそう? 歓喜の声って感じ。


 SFファンタジー映画にありがちな、勇者喚び出し成功‼って感じだけど、まさかそのまま?


 惜しむらくは、言葉が通じないことかな。


 ──知りたい?


 へ? なに?


 ──アイツらが何言ってるか、知りたい?


 うん。


 ──いいよ、聴かせてあげる。あの二人も?


 うん。そうだね。二人もきっと何言ってるか解らないだろうから、知りたいだろう。


 て、私は、誰と喋ってるんだろう? 耳の傍で小さい声。美土里達には聴こえてないみたいだ。



「おお、お若い御遣い様じゃ。暫くは恵みを受けられるぞ」


 急に日本語に聞こえてびっくり。誰だか知らないし、理屈は解らないけど、翻訳ソフトを頭に入れてくれたみたいな感じなのかしら?


 美土里達も急に理解できて驚いてるみたい。


 オジサンオネーサンの集団から、一際目立つ衣装の男性が前に進んだ。


御遣みつかい様、ようこそお越しくださいました。我らはあなた方を歓迎いたしますぞ」



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