🚱10 消滅

 水で出来た球体の檻に閉じ込められている異常事態も恐ろしいけれど、このまま、出られないのに縮んでいくと、水に溺れてしまう!


 気持ちは恐怖と焦りで大混乱だけど、水に囲まれているという状態に、卒倒しないだけマシなくらい体調が優れない。


「ねぇ!? 美土里みどり萌々香ももか! 愛唯あおいぃ、そこから出れないの?」

「出られないわよ!! 何なの、これ」


 愛夏音あかねの悲鳴に、愛唯あおいわめき返す。


 水の檻はどんどん小さくなり、私達に水が触れるほどになる。


 ──あ、ダメだ、これ


 意識が遠のいていく。

 最後に見たのは、水越しの大泣きしている愛夏音あかねと泣きながら私を覗き込む美土里、青ざめて水の壁を叩く半狂乱の愛唯あおい


 この後意識が戻ったときにみんなが無事だったとして、いったい何が起こったのか誰に訊かれても答えられない状況に、私達には、どうにかする知識も技術も行動力も、体力も判断力も精神力もなかった。



 ✽✽✽✽✽✽✽



 三人を飲み込み圧しつぶさんとばかりに縮んでいく水の球体を見ながら、泣いて友の名を呼ぶしか出来ない愛夏音あかね


「嘘でしょぉ。こんなの、ハリウッドのSF映画みたいな事、現実にある訳ないやん。ねぇ? 美土里ぃ、さっきから、ひいてる手に力がないよ? 萌々香ももかぁ、やっぱり中で気を失ってるの? さっきから動かないよね? 愛唯あおい。アンタ、こうなるって知ってたの? 何がしたかったの?

 ねぇ、冗談だよね? 何かのドッキリだよね? もういいから、誰か、助けてよぉ」


 泣きじゃくりながら、濡れて滑り離れそうになる美土里の手を握り直し、地に座り込んで引く手に力をこめる。


 が、びくともせず、水球はどんどん小さくなり、姿は中に見えているのに、物理的に三人の娘が入っていると思えない大きさにまで縮むと、無情にもパチンと弾けて、何もなくなった。


 水球が弾ける衝撃に目を閉じた一瞬で、その瞬間まで確かに手に握られていた美土里の手は消え、三人が落ちた場所には、細波さざなみひとつない、凪いだいつもの水濠が静かに流れているだけだった。



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