🚱6 警告



「「え、意味わからんわ」」


 愛唯あおいの「因果応報」という言葉に、川の中で私を支える美土里みどりと、道で愛唯あおいの傍に立っている愛夏音あかねが、意味が解らないとハモらせる。


 因果応報って、過去や前世での行いが、現代のいいことや不幸に報い(果報)、今の行いが、未来にいいことや悪いことになって帰ってくるって事だよね?


「因果応報とか言って、今のは報いとか自業とかじゃなくて、愛唯あおいが突き落としたんやんか」


「それが?」


「それがって⋯⋯」


 愛夏音あかねの指摘に、あたかも自分は間違ってないとばかりに、訊き返す愛唯あおい


 美土里も愛夏音あかねも絶句してしまった。


 愛唯あおいがああ言い切るからには、私は、愛唯あおいに何かしてしまった? ううん、他の人だって服着たままなら危ないのに私なら尚更、死んでしまうかもしれないのに、知ってて川に突き落とされるほどの事をした覚えはない。

 そもそも、今年の梅雨前に学校が再開されてからの知り合いなんだもの。何かあるほどの期間も付き合いはない。


萌々香ももか、心当たり、ないよね?」


 震える身体で、首を縦に振る。


「忘れたとは言わさない! と、言いたいところだけど、本当に覚えてないのね?」


 愛唯あおいが腕組みをして仁王立ちに川縁に立つ。


「⋯⋯アンタは⋯⋯」


 そのまま文句を言い続けるのかと思ったけど、口籠もったのを不思議に思っていると、川の様子がおかしい。


 さっきまで、胸元まで水に沈んで座り込んでいたはず。膝立ちの美土里も似たようなものだった。


 のに、今は、膝まで水から出ている。


 水位が下がってるのだ。


 群生した水草が黒い塊になって浮き出て、魚も素早く下流の方へ泳ぎ去って行く。


 が、ジワジワと、水位が上がり出す。


 これって⋯⋯


「美土里、萌々香ももか! 早く上がって!!」



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