近しい人
私には幼馴染みがいる。
少女マンガでよくある「実はお互い好きだと思ってた」なんて事はないし、「思春期でギクシャクして仲が拗れた」みたいな展開もなければ、「親同士が実は友達同士で仲がいい」と言うこともない。
会えば普通に話すし、たまに勉強を教えてもらったりするから、お互いに仲はいいのだろうくらいには思っている。
なんだろう?
友達以上家族未満みたいな感じに近いかもしれない。
私達が恋人になる事は多分ない。
ありえないとすら、思っていた。
「ねえ、キスしよ?」
この言葉を言われるまで。
この言葉を言われたのは期末テストのために勉強を教えてもらいに行ったときだった。
机の上に勉強道具を広げてはいるが、二人とも勉強する気がおきないでダラダラとしていて、退屈な時間を過ごしていた時にあいつは先生が生徒に「これ、配っといて」と言うような軽い感じで言ったのだ。
その言葉を聞いて、勿論、私は顔をしかめて言ってやったよ。
「やだ」って。
だけど、そう簡単に諦める奴じゃなかった。
「何で?俺とキスするのいや?」
ずいっと顔を私に近づけながら聞いてきたのだ。
当たり前だ。
自分の身内とキスできる奴はいないだろう?
それと一緒だ。
そう言いたかったが我慢して
「嫌なものは嫌」
そう返した。
ますます、首を傾げ始めるあいつに、私達の関係をどう思っているのか聞きたいと心底、思った記憶がある。
結局、聞く事はなかったけど。
首を傾げながら質問ばかりしてくるあいつ。
「ねえ、何で嫌なの? あ、もしかしてファーストキスだから?」
「違うけど」
「じゃあ、俺が嫌いなのか?」
「……嫌いなら話しかけないからね」
いちいち答えてやった私は偉いと思う。
「じゃあ、なんで?」
質問の受け答えを続けるうちに少しずつ不満そうな雰囲気になっていったあいつに私は受け入れない答えを言った。
きっと、今、聞かれても同じ答えだと思う。
「私達は好きも嫌いも関係ないと思うんだけど。だって家族みたいに思っている人にそんな思い抱きたくないからね」
あいつはその答えにクスッと微笑みこう答えた。
「君らしくていいけど、俺らは赤の他人でしょ?だから好きも嫌いも考えちゃうんだよ」
当たり前の反論をされて、黙りこんでしまった私の唇に触れるだけのキスをして
「だーいすき」
そう言ったあいつにため息を吐いた私はおかしいのだろうか。
ふわっとした短編 音琴 鈴鳴 @10Ritnek0
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ふわっとした短編の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます